屋根工事のチェックポイント

外装リフォームの教科書 Vol.11

屋根工事のチェックポイント

屋根は建物を守る傘の役目があります。今や国を挙げて長期優良住宅を目指す時代となりましたが、傘となるべき屋根に不具合があれば、どんなに強固に造られた建物でも寿命を縮める結果となってしまいます。屋根工事は建物を守るための工事といっても過言ではないでしょう。天候の急変や真夏の熱さといった過酷な状況での工事になることもありますが、チェックポイントを押さえ、安全かつ的確に工事を進めることが大切です。



《品質面からチェック》

屋根の大敵といえば雨漏れが真っ先に挙げられるが、野地板にスライスした杉板(バラ板)を使用していた頃の住宅にくらべると、雨漏れのリスクははるかに低くなっている。野地板の性能が良くなったこと、防水シートが雨水の侵入を防ぐことなどがその理由といえる。しかしその一方で塗装を必要とする屋根材が増えたことから、塗装後の処理が不十分だったことで起こる雨漏れが問題視されている。屋根リフォームでの施工不良によってかえって不具合が生じることの無いよう、ポイントを押さえてチェックしよう。


■塗装の縁切り

屋根塗装のクレームで多いのが、工事をしてから雨漏れするようになったというものだ。考えられるのは、スレート屋根を塗装した際に屋根材同士の隙間が塗料で埋まってしまうことによって生じる不具合だ。毛細管現象で水が吸い込まれてしまうと雨漏れにつながる。そこで塗装後は塞がれた膜を切る「縁切り」を確実に施工する必要がある。スペーサーを差し込みながら塗装していく方法もある。


■撤去後の穴埋め

屋根の塗装工事の際に、不要になったアナログアンテナを撤去することが多いが、注意したいのは撤去した後の穴埋めだ。撤去する職人は、塗装工が塞ぐと思っていたが、塗装工の方ではシーリング業者が穴埋めをすると思っていると、結局は穴があいたままで雨漏れを起こした…ということになりかねない。工事管理者は、誰が穴埋めまでするのかまで工程表に記入して、施工漏れが無いようにしたい。


■金属屋根は打つ釘に注意

金属の屋根材は釘選びを間違えると錆びて穴があく…これは「異種金属接触腐食」といって、種類が違う金属を接触させると、一方の金属が錆びるという現象だ。例えば銅屋根には銅釘が打たれているように、同じ金属の釘なら問題ない。しかし金属屋根の主流であるガルバリウムには同種の釘がない。そこで異種の金属同士が触れないように、ステンレス釘に絶縁加工を施すなどした専用の釘を使用する必要がある。


■シーリングの打ち忘れ

屋根の各所に使われている板金は、雨漏れを防ぐために重要な役目を持っている。傷んだ板金を交換する工事では、必要な箇所のシーリング処理が行われているかチェックが必要だ。特に雨漏れリスクが高いのは、寄棟の大棟と下り棟のY字の接合部分、屋根と屋根の谷の部分、下屋根と2階外壁の取り合い部分などだ。また屋根に天窓がある場合は、周囲のシーリングの打ち替えも必要だ。



《環境面からチェック》

廃材処理やアスベスト対策に対するルールは改正があるたびに厳しくなっている。最新の情報をチェックし、ルールに沿って工事を進めることを心がけなければならない。産業廃棄物に関しては不法投棄を無くすため、「廃棄物処理法」で罰則をもってルールの徹底が図られている。元請業者は廃材の最終処分の確認まで責任をもって行う義務があり、他者に処理を委託する際はマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付して廃材の行方をチェックする必要がある。


産業廃棄物についての問題

イラストのA~Dさんの考えはそれぞれ○か×か


問題の答え




《原価面からチェック》

屋根工事で特に注意が必要なのは天気の急変だ。屋根材を解体している最中に大雨となり、雨漏れを起こして室内に被害が及ぶということもある。予期せぬ費用が発生しないよう、早目早目の対応を心がけたい。また屋根工事では大きな資材を上げ下げするため、植木を折ってしまったり、屋根の付属物を傷つけてしまう危険がある。工事管理者は職人が工事に集中できるように、危ないと思う箇所は養生をするなど事前に対応して物損を回避するようにしたい。


■「足場がないとわからない」なら素早く対応

イラストのように足場がないと調査が困難な場合がある。近年は屋根カメラやドローンを使うことでそうしたケースが少なくなったが、中には雨漏れや下地確認のように、屋根上で確認作業をしないと判断できないこともある。このような場合は足場がかかったらすぐに調査をして、必要に応じて追加契約を交わし、工事をスタートさせよう。不具合を解決しないうちに屋根工事を進めると思わぬ失敗をするので注意したい。


■「二度手間」を無くす

事前の調査を入念にすることは二度手間を回避することにつながる。例えば屋根塗装を終えたあとに棟の不具合が発覚し、棟木と棟板金を交換することになったという例を挙げると、最後に再び塗装工を呼んで足跡などの補修が必要となり、その分の人工手間が発生することが考えられる。


■屋根まわりの器具に注意

屋根まわりには照明器具の他、最近は防犯カメラなどが取り付けられる家も多くなった。資材の搬入搬出や雨樋の交換などで屋根まわりの器具を傷つけた場合は代替品を購入して交換することになり、費用が発生するので注意したい。図面に注意する箇所を記入しておくと職人も作業しやすいだろう。



リフォマガ2021年7月号掲載

 

 

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