外装リフォームの教科書 Vol.8
屋根工事の種類
住む人にとって屋根は「見えないところで何が起こっているかわからない」と不安になりがちな部位です。屋根工事にはいくつもの方法がありますが、提案の際は調査の結果をもとに、何故この方法を勧めるのかをわかりやすく説明することが大切です。
屋根全体をきれいにする工事は主に3つ
屋根工事には、部分的にメンテナンスをする工事と、屋根全体をきれいにする工事がある。既存の屋根材の種類や耐用年数、下地の傷み具合などを把握して適切な方法を提案しよう。屋根全体をきれいにする工事は大きく分けると、屋根材の保護と美観を兼ねた「塗り替え」、既存の屋根材の上にもう1枚屋根材を葺く「重ね葺き」、屋根材を下地ごと新しくできる「葺き替え」の3つの方法がある。
【塗り替え工事】
既存の屋根材の劣化が少なく、屋根下地がしっかりしていれば、塗り替えが最も費用や工期がかからず、廃材も出ない。
●施工できない屋根●
・粘土瓦(和瓦・洋瓦)
・屋根材の劣化が進んでいる
・劣化で下地からの工事が必要な場合
【重ね葺き工事(カバー工法)】
既存の屋根材の寿命が近づき劣化が進んでいても、下地材がしっかりしていれば施工できる。材料費はかかるが処分費は少ない。軽量の屋根材を用いる。
●施工できない屋根●
・粘土瓦やセメント瓦のように凹凸がある屋根材
・劣化で下地からの工事が必要な場合
【葺き替え工事】
下地材が劣化している場合にお勧めの工事。屋根を軽量化する目的で行われることも多い。一方、下地材を新しくした後に既存の屋根材を再利用する場合は「葺きなおし」という。
●施工できない屋根●
・全ての屋根で施工可能だが、新規屋根材が既存屋根材より重くなる場合はNG
塗り替え工事
工期が短く、費用も抑えられる
塗り替え工事は、屋根全体をきれいにする3つの方法の中で最も工期が短く、しかも費用を抑えられる工事だ。廃材は塗料の缶くらいと少ない。音が出ないのも大きなメリットだ。
デメリットは、施工できる基準が他の方法に比べて厳しいことだ。下地材・屋根材の劣化が進んでいる場合や、何度も塗り重ねている屋根には施工が難しい。また塗料のグレードにもよるが、塗装後数年で色あせが気になることもある。
▲屋根材と下地の劣化が少ない屋根に
重ね葺き工事(カバー工法)
既存屋根材の撤去処分費が不要
既存の屋根材はそのまま残し、新しい屋根材をその上から重ねて葺く方法。葺き替えに比べて工期が短く、古い屋根材の撤去処分費用を省くことができる。更に屋根材が2重になることで断熱性や遮音性が向上する。
デメリットは屋根の重さが増すため軽量の屋根材(一般的に金属製)に限られること、下地の劣化が進んでいる場合は勧められないことが挙げられる。また既存の屋根材と新規の屋根材の間に隙間を作って通気を行う工法は「重ね葺き通気工法」という。
▲金属屋根重ね葺きの例
葺き替え工事
下地ごと新しくできる
既存の屋根材を撤去して新しい屋根材を葺く工事で、既存の屋根材を選ばず施工できる。下地材ごと新しくできるため、屋根に不安がある場合は葺き替えがお勧めだ。また耐震性を向上させる目的で、重量がある屋根材から軽量の瓦に葺きなおす例が多い。デメリットは、施工期間が長く、費用もかかること。工事の音が大きく、埃が多い、廃材が多いことなどが挙げられる。特にアスベストを含む屋根材では、アスベストの飛散対策や廃棄に手間と費用がかかる。
▲下地から新しくして家を守る
リフォマガ2021年4月号掲載
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