外壁材の商品情報とトレンド

外装リフォームの教科書 Vol.12-1

外壁材の商品情報とトレンド

外壁材は次々と新商品が開発されていて、以前の製品と比べると、耐久性、防汚性といった外装材に求められる技術が飛躍的に改良され、デザイン性も高くなっている。特筆すべきは、どの外壁材もデメリットとされる点を克服してきていることだ。最新の商品情報を知ることで、「これなら使えそうだ」ということになれば、提案の引き出しも増えていくことだろう。


【モルタル】

モルタルが流行したのは1970~1980年代。この頃のモルタルは現場でセメントと砂と水で調合する「砂モルタル」だった。後に軽量の骨材を使用して工場生産される「軽量セメント」が使用されるように。モルタルはサイディングの普及で需要縮小したものの、意匠性の高さや曲面・R窓にも使いやすいことなどから根強い人気がある。


クラックが発生しにくい外壁へ

「モルタルはクラックが入りやすい」という先入観を持つ顧客が多い。確かにクラック補修で、みみず腫れのように補修跡がある家を見るとそう思うだろう。以前のように現場で調合する砂モルタルは、職人の知識と経験に頼る面があり、また防火仕様でありながらその役割も果たせないくらいに薄塗りに仕上げられることもあった。

しかし工場生産品である軽量モルタルの普及や、直張り工法から通気工法に施工方法が改良されたこと等でモルタル壁は進化している。更に、ネットを伏せこんでクラックを防ぐというノンクラック技術が進み、今後の需要回復に期待がかかる。


サイディングを弾性下地モルタルでカバー

古くなったサイディングの上に弾性下地モルタルを塗ってカバーする、つまりサイディング壁をモルタル壁にリニューアルするという工法がある。引っ張り強度の強い短繊維と超弾性樹脂の相乗効果により、サイディングのジョイント部分などで起こる瞬時の動きにも追従。クラックや剥離を防止する。また耐アルカリ性ガラス繊維ネットをモルタルの表層に伏せこむことで、大壁施工が可能となるというもの。適応下地は窯業系サイディング板・ケイ酸カルシウム板・コンクリート・モルタルなど幅広い。



【窯業サイディング】

窯業サイディングボードは水分を吸い込みやすいというデメリットがあるが、各メーカーではそれを克服するべく、独自の商品開発を進めている。特に紫外線などから塗膜を守る技術が飛躍的に伸び、30年補償付きも出ている。一方で住宅の外観デザインの流行をけん引していることもあって、デザインニーズの多様性に応えられる商品開発にも注目したい。


「いかにメンテナンスコストを抑えるか」で技術躍進

窯業サイディングは色柄も豊富な上に施工性も良く、耐震性や耐火性に優れていることから圧倒的なシェアを誇る外壁材だ。しかしボード自体に防水性がなく、定期的な塗装やシーリング打ち替えをしないと雨水がしみ込んでしまう。そのためメンテナンスコストがかかるという弱点がある。だがそれを克服するため、耐候性と防汚機能を併せ持つ商品が次々に開発されている。「セルフクリーニング機能」と呼ばれるものは、手を加えずに自然に汚れが落ちるという機能で、①汚れを水分子膜に付着させて雨で洗い流す方法と、②光触媒の力で汚れを分解し、雨で洗い流すという方法があり、メーカーにより違いがある。また塗膜に長期補償が付けられるようになり、30年変色退色保証付きの商品も出ている。

リフォームで注意したいのは、光触媒、無機コーティング、フッ素コーティングが施されているサイディングは「難付着サイディング」と呼ばれていて、塗料が付着しにくいこと。対応できる下塗り塗料もあるが、塗装は避けるようにしたい。


シーリングレス工法が新築住宅で普及

サイディングのボード間に打つシーリングが殆ど無い「シーリングレス工法」が新築住宅で人気だ。シーリングの切れで雨水が侵入したり、汚れが目立ったりと、窯業サイディングにつきものだったストレスが少なくなる。すっきりとしたデザインも大きなメリットだ。シーリングレス工法が更に進化したものに、出隅用のサイディング材を使う必要が無いというものもある。2面のボードを出隅できれいに張り分けることができるため、よりデザインの幅が広がりそうだ。


モルタル外壁の耐震工事を兼ねた外壁改修

モルタル外壁から窯業サイディングにリフォームする際に、既存の外壁を耐震性の高い耐力面材にしてしまうという工法がある。この工法は「新SAT工法」※1といい、既存のモルタルは軒天部分と土台部分以外は残して下地にする。柱の脚部や頭部の仕口、筋交いに構造用合板を張って接合部を補強。さらに縦胴縁で押さえつけることによって強度を高め、耐震性のある壁に生まれ変わらせるというもの。外側からの工事のため、住みながら耐震工事を行うことができる。取り付けた胴縁に窯業サイディングを張るためデザインも一新。一石二鳥の工法だ。

▲「新SAT工法」資料住宅外装テクニカルセンター


【金属サイディング】

金属サイディングは、凍害に非常に強いため、北海道や東北といった寒冷地での需要が特に高い。また高性能の断熱材と一体になっているため、夏は涼しく冬は暖かい。20年塗り替えが不要の製品や、塩害の心配がある海岸地域の中で海岸線から500m以遠であれば使用できる製品も登場している。


重ね張り需要が多い

金属サイディングの大きな特徴は、重量が非常に軽いこと。製品により違いがあるが、窯業サイディングのおよそ4分の1程度の重さだ。その上施工性にも優れているため、リフォームでは古くなったモルタル外壁への重ね張りでも多く使用されている。重ね張りで断熱性がさらに高くなるのも大きなメリットだ。金属は熱くなりやすいというイメージがあるが、高性能の断熱材一体型のため、断熱性能は他の外壁材に勝るとも劣らない。また金属サイディング一体型の断熱材は防音性にも非常に優れているため、一般地域に於いても人気が上昇している。さらにメンテナンス性が高い建材でもあり、フッ素塗料を焼き付け塗装しているため、色あせしにくいというメリットもある。


塗装技術の躍進でよりリアルなデザインに

性能が評価されて需要が伸びているものの、これまでデザイン性の点では他の外壁材に後れをとってきた金属サイディング。「デザインが単調」、「味気ない柄」といったイメージを払拭するため、よりリアルなデザインの開発が進められている。例えばベースの鋼板に微細なインクの玉を吹き付けることで、複雑なデザインもリアルに表現できるようになるなど、塗装技術が飛躍的に進んでいる。金属サイディングのデザイン性が高くなることでますます需要の拡大が期待される。

▲旭トステム外装ID塗装(上段は従来品)



【樹脂サイディング】

日本ではまだ知名度が低いものの、アメリカやカナダではポピュラーな外壁材だ。塩化ビニール樹脂でできた樹脂サイディングは塩害や凍害に強い上、耐久性が非常に高く、メンテナンスフリーに近いなど、メリットが多い。しかし日本では施工できる技術者が少ないことや、扱う業者が限られること、高額になりがちなことなどから国内シェアは1%程度と少ない。


認知度を高めることが課題

カナダ、アメリカで50%以上のシェアを誇る樹脂サイディングは、凍害や塩害に強く、日本のどの地域でも対応できる外壁材だ。しかし国内ではまだまだ認知度が低く、1%ほどのシェアで推移しているのが現状。耐候性や耐衝撃性にも優れる上メンテナンスの手間がかからないなどメリットが多いのだが、施工できる業者が非常に少ないこともあって、採用したくても諦めてしまうケースもあるようだ。しかし数年前に大手住宅建材メーカーが市場に参入したこともあり、今後は国内にも徐々に浸透していくものと期待される。


1mmの薄さでも頑丈、カバー工法にも

薄くて軽量、しかも耐衝撃性に優れるため、カバー工法にも適している。シンプルなデザインは、板の重なりを再現した横目形状で、コーキングや役物が不要。そのためすっきりと仕上がる。

▲アメリカンスタイルを彷彿させるデザイン旭トステム外装「WALL-J」



リフォマガ2021年8月号掲載



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