工事標準化でミス・トラブル防止し粗利36%以上を堅固

成功事例に学ぶ 粗利率改善ノウハウ

せっかく獲得した案件も、工事ミスや商品トラブルが相次いで、フタを開けたら、低い粗利率に愕然としたり、徒労感を覚えたりする事はないだろうか?ミスや失敗を防ぐ仕組みづくりを今すぐ行い、大切な粗利を確保しよう!



【成功事例 1】

マエダハウジング(広島県広島市)

工事標準化でミス・トラブル防止し粗利36%以上を堅固
〝36 %以下だと損した気分になります〞

「5年位前までは粗利を落しまくっていました」と話すのは、年間約30億円を売上げる広島県の有力リフォーム店・マエダハウジングの松本和之リノベーション部門課長だ。現在は工事標準化と厳重な見積りチェック体制を敷いた事により、松本さんの粗利率平均は36〜38%。「36%以下だと、今では〝損した〞〝下手こいた〞気分になります」という。

これまでは、案件を担当する営業マンに、積算や見積りづくりが委ねられていた。個人にかかる負担が大きく、そのために抜けやミス、発注ミス、工事の手直しが多発していた。そこで同社が約3年前から取り組んできたのが、社内における工事標準化だ。工事毎に標準の仕様書をつくり、施工の基準も定めた。またこれまで工程づくりもケースバイケースだったが、適正な日数を算出し基準を設けた。

また500万円以上の工事は、積算スタッフが規定の工事概要書や図面・現場写真を元に見積書を作成。さらに構造変更や耐震工事等が絡む1000万円以上の工事は、住宅事業部の部長も確認を行うダブルチェック体制にする事で、着工後の不備やミスが激減した。

▲工事概要書を作り、積算スタッフと共有

まずは形式が定められている見積り依頼書と工事概要書を営業マンが作成し、工事の内容を共有。これを元に、積算スタッフが見積書を作成。見積もりを依頼すると、即日~3日以内で仕上げてくれる。仕組み化と営業マンの負担を減らす事で工事の抜けやミスが激減した。



スピードよりもいかに利益を残せるか

松本さんの以前の粗利率は30%前後を推移する事が多く、スムーズに終わった現場では、予備原価を戻して34〜36%で着地する事もあったが、それも珍しかった。クレームやトラブルが発生して、最後に粗利を落とす事が日常だったという。「他のプランナーや上司に相談する事なく案件を進め、500〜600万円の大赤字を出してしまった事もあります。忘れられません。」

現在は見積り依頼書と工事概要書を元に、積算のスタッフが見積書をゼロベースで作ってくれる。見積りを作る段階で積算スタッフから指摘を受ける事もあり、これにより工事内容や見積りの精度がどんどんとアップする。

「耐震補強の箇所や数に認識違いが発覚する事も。床や天井の張替えは、部屋全体を行うのか、部分的に行うのか、部分的なら範囲を確定するなど、細かい納め方を想定した上で、精度の高い見積書が作られていきます。見積りは、人に頼むより自分で計算した方が早い事は確かですが、スピードよりも精度を重視するようになりました。」

営業マンとしては、顧客には出来るだけ金額を押さえて見積書を提出したいところ。その上で積算スタッフと見積書の出し方や見せ方、伝え方の工夫を協議する事もあるという。また調査スタッフも配置した。構造に関わるような大型工事の場合は、金物の取り付けが十分に行われているか、養生がしっかりとされているか等を社内基準に則って工事途中に抜き打ちで検査を行う。これは20年以上の営業経験があるベテランスタッフが務めている。

またこれまで、一気通貫で工事管理していたものを大型案件においては工務・プランナー・営業と分業化した事も粗利率上昇に貢献している。一気通貫では、工事の精度に統一感をもたせる事に限界があった。



〝皆のお客さん、皆の利益〞

商品の発注ミスも、粗利率を逼迫する大きな要因の1つ。松本さんが実践しているのは、案件に関わるプランナーや積算スタッフに、発注内容に間違いがないかの確認を依頼すること。確認後は、検印をしてもらい、ミスを防いでいる。

「1つチェック体制を挟む事で、ミスは防げるものです。上司が部下に検印をお願いしています(笑)。焦って発注するから、見落としが発生してしまいます。」

発注ミスの一例としては、フローリングの枚数など。足りていなかったり、逆に多すぎたりする事も。足りていなければ、職人の手が止まり工期遅延に繋がる。他にも窓枠の色が違うなど、1つ1つのミスは些細な事でも、塵が積もれば山となるで最終的な粗利率が大幅に低下してしまう。

「自分が前線に出ているため、案件の売上や粗利率は自分だけの成果だと錯覚してしまいがちです。そのため営業マンは自分で仕事や責任をしょいこみがちです。そして、負担がどんどん大きくなっていて、結局失敗してしまいます。〝皆のお客さん、皆の利益〞という風に考え方を変えて、人に頼る事にしています。自分では頼みづらいと思っていても、言ってくれればやるのにというスタッフさんも意外と多いですよ。」

▲松本さんと積算スタッフたちが、案件について協議する様子



お話をうかがったのは…

▲マエダハウジング(広島県広島市) 松本 和之課長

新卒でマエダハウジングに入社し、リフォーム営業歴14年。リフォーム営業8名が在籍する、リノベーション部門の課長を務める。広島で生まれ育った生粋の広島人。



リフォマガ2021年2月号掲載



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