外装リフォームの教科書 Vol.12-2
屋根材の商品情報とトレンド
屋根は過酷な自然環境や災害から家を守る役目があるため、様々な観点から適材を選ぶことが大切だ。例えば塩害などの地域の特性、自然災害に対する安全性など、美観やメンテナンス性以外にも重視される要素が多い。そのため同じ屋根材でも改良品が次々商品化され、以前に比べると商品の数は大分多くなっている。製品の特徴を掴んで適材適所の選択を。
【粘土瓦】
粘土瓦のシェアは減少傾向が続いているが、耐用年数の長さと塗装不要のメンテナンス性の高さが、近年のメンテナンスフリー志向の中で見直されつつある。瓦は軽量化が進むと同時に風災被害にも強い屋根への取り組みが進められていて、新築住宅で義務化された「ガイドライン工法」が今後既築住宅の葺き替え需要につながるかどうか注目される。
伝統を守りつつ、大きく一歩踏み出す
屋根材で近年大きく変化しているのは粘土瓦だ。阪神淡路大震災以降、重い屋根は地震に弱いとされて粘土瓦の需要は大きく落ち込んだ。しかしこれが新しい瓦への出発点になったといえよう。粘土瓦は軽量化が進み、同時に工法についても改善された。更に、屋根材同士緊結して下地に固定する「防災瓦」が開発されるなど、地震にも風災にも強い屋根への取り組みが、新たな瓦の商品化につながっている。
中空構造の瓦
陶器瓦の素材、耐久性、美観はそのままに、中を空洞にすることで化粧サイディング材とほぼ同じくらいの重さまで軽量化された商品。空気の層ができることで断熱効果が高くなることも大きなメリットだ。
▲鶴弥「スーパートライ美軽」
【人造スレート材】
人造スレート材は軽量でイニシャルコストが低く、かつては新築住宅の主流だった。リーマンショック後に縮小傾向に転じて今は金属屋根にトップシェアを奪われた形だ。既存住宅の屋根材では一般的に使用されている屋根材。屋根リフォームに於いて需要が最も多いのは人造スレートの塗装工事だ。
30年色あせしない商品も
人造スレートは錆びないため、沿岸地域でも安心な屋根材だ。しかし凍害には弱いため、地域によっては使用できないので注意したい。また30年経過後もほとんど色あせしない高耐久のものもあり、塗装メンテナンスを大幅に削減することができる。また遮熱仕様として、赤外線を反射する特殊な顔料を表面コートに配合している商品もある。
【シングル材】
アメリカやカナダでは80%の普及率でメジャーな屋根材だ。日本の戸建て住宅では6~7%のシェアで推移している。エンドユーザーの認知度はまだまだ低いが、分譲住宅での需要は安定しており、シェアは増加傾向にある。今後スレート屋根へのカバー工事で採用が多くなっていけば、シェアの拡大も期待できる。
防火・準防火地域での施工も可能
2007年に改正された建築基準法改正により、条件を満たしていれば防火・準防火地域でのシングル材の使用が可能になっている。またアメリカやカナダの雪が多い地域でも使用されている屋根材だが、メーカーにより、多雪地域での使用ができない商品もあるので注意したい。
【金属屋根材】
戦後にトタン(亜鉛めっき鋼板)が豪雪地域を中心に普及したものの、シェアは瓦や人造スレートに遠く及ばなかった。しかしガルバリウム鋼板の登場で耐候性やデザイン性が高まり、人造スレートの重ね葺き材として普及。新築住宅でも軽量屋根材の需要との相乗効果でシェアを伸ばし、金属屋根はここ数年で一気にトップに踊り出た。
SGLの登場で海岸地域からの需要も拡大
2016年に「次世代ガルバリウム鋼板(SGL)」が登場したことにより、耐食性(錆びにくさ)が従来のガルバリウムに比べて3倍以上に高くなっている。SGLは従来のガルバリウム鋼板にマグネシウムを添加したもので、これにより沿岸地域での補償範囲が、海岸線より5km以遠から500m以遠に拡大された商品もある。
【石粒付金属屋根材】
石粒付屋根材は塗り替えの必要が無い事などから賃貸住宅市場でも安定的な需要がある屋根材だ。またガルバリウム鋼板が基材となっている商品は取り扱い事業者が増加している。メンテナンスフリー建材の需要が高まる中で、今後のシェアの伸びに注目したい。
耐用年数が長く、塗装が基本的に不要
石粒付金属屋根材はガルバリウム鋼板(又はジンカリウム鋼板)に細かい石粒をコーティングしたもの。「ジンカリウム」「自然石付鋼板」「ストーンチップ鋼板」などと名称がいくつもあり、混乱しやすい(ページ下の用語解説で紹介)。基本的には塗装メンテナンスの必要がなく、メーカー保証は長い。例を挙げると極端な色あせや極端な石粒落ち、また錆による雨漏れに対して30年保証がつくというもの。耐用年数は30~50年と、粘土瓦に次ぐ長さだ。石粒が雨を受けるため、雨音を小さくする効果もある。
雪を屋根全面で支える
大雪が降ると、屋根に積もった雪が隣家に落ちるなどの心配がつきものだ。しかし石粒付なら「点」の集合体である「面」で雪を支える、つまり屋根全面が雪止めの役目を果たすというメリットがある。
▲福泉工業 「FSストーン」積雪試験 ( 北海道科学大学構内実験施設)
リフォマガ2021年8月号掲載
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