顧客満足度を高め、リピートにつなげるために重要となってくるのが「施工品質」だ。
「どのような頻度で現場に顔を出すのか」「現場に行った際に気を付けるべき点」
「職人たちとのコミュニケーション術」「よくある落とし穴の回避法」等々。
現場管理の達人を取材し、すぐに取り入れられるようなテクニックを大小含めて20個紹介する。
事例の共有で効率的に品質向上
総合的に家の情報を得て提案の幅を広げる
大型案件については、大元の営業が設定した仕様が適切かを、経験豊富な人材が集まるメンテナンス部がジャッジする。そこで例えば、塗装不可の材料に塗装する仕様になっているのを、発見することもある。
「私などは、現地で知らない材料があったら、メンテナンス部にテレビ電話をして、その場で見てもらってしまいます」と野中営業統括部長。部署を越えて知識のある人に気軽に相談できる、風通しの良い社内環境づくりも目指したいという。
トラブル情報の共有で知識の底上げを実現
施工前のダブルチェックと並行して、メンテナンス部が行った、具体的なトラブル対応の情報共有もはじめた。
顧客情報、発生源の担当者、メンテナンス部への依頼内容、対応内容のほか、当初の契約年月日と詳細な契約内容を1枚のフォーマット「メンテナンス依頼票」でまとめる。別紙で、写真入りの詳細な「対応内容報告書」も付ける。
これを屋根、壁、ベランダの部位に分け、クラウド上で全社員に共有する。このデータが2年前から蓄積されていき、今では200件にもなった。「新人の営業担当があらかじめ目を通せば、200件分の経験をしたのと同等になるのです」(野中営業統括部長)。こうして、人員の入れ替わりでクオリティが下がることを防げるわけだ。
エース・リフォームのトラブル処理フォーマット
【メンテナンス依頼票】時系列と案件情報をA4一枚にまとめる
メンテナンス部に施主から不具合の問い合わせが来ると、発生日に顧客情報や契約内容など基本データを入れた依頼票を作成。その後、時系列に沿って対応内容を記入。こうして誰でもわかるように情報管理する。
【対応内容報告書】対応内容を写真入りで詳細に報告
依頼票とともに、不具合の原因・補修内容・改善案を記入した、写真入りの詳細な報告書も作成。事例は天窓からの雨漏り例で、「耐用年数の過ぎた天窓は板金加工等の補修だと直らないことがほとんどです」と注意喚起している。
携わる全員にメリットがあるグループLINE
現場管理では、案件ごとに携わる職人、営業で必ずグループLINEをつくる。着工前には、元からある傷や、使用する塗料缶の写真などをアップ。都度、工程の写真も撮って情報共有する。写真は全てアルバムで管理し、後でさかのぼって確認ができるようにしている。
「職人さんもメリットがわかると、きちんとLINEで情報共有してくれるようになります」(野中営業統括部長)。例えば営業に質問があったら、グループLINE上で写真を添付して聞けば、営業が現場まで確認に来るのを待たずに作業を進められる。
希望があればグループLINEに施主にも入ってもらう。日々の工事内容がわかり、いざとなればメッセージで質問できるので、言えずに溜め込んでしまうということが起きにくい。
《テク3》トラブル処理の情報をデータ化し全社で共有。
エース・リフォームでは、契約内容・トラブル内容・対応内容を同じフォーマットで管理し、クラウドで全社員に共有している。新人の営業担当が200件のデータにあらかじめ目を通せば、200件分の経験をしたのと同等になり、クオリティ維持につながる。
《テク4》難しい案件の対応策をあらかじめ提示。
例えば、耐用年数を過ぎた天窓を替えず、屋根材のみをリフォームすると雨漏りを引き起こしやすい。そのため多少金額は高くてもサッシ屋、専門メーカーに頼むことをデフォルトにする。多額の手直し費用発生を防止するため、その費用は出すと決めておくほうが安心なのだ。
▲難付着サイディングの基材に普通のシーラーを選択し、基材と塗装が密着しなかった事例を報告。難付着かどうかを確認するチャートを載せ、お勧めのシーラーを挙げている。
(テク3&テク4に関連)
《テク5》資格取得に力を入れる。
2級建築施工管理技士や雨漏り診断士など、資格を持っているとベースの知識が違う。エース・リフォームでは、営業もメンテナンス部も必須で雨漏り診断士の資格を取っている。
《テク6》案件ごとに職人・営業でグループLINEをつくる。
専用ツールがなくても、案件ごとにグループLINEをつくり、都度、工程の写真を取って情報共有したり、疑問点などを相談し合うようにすれば、工程ややり取りが記録に残ってさかのぼって確認ができる。言った・言わない、やった・やっていないの論争も避けられる。
《テク7》希望を聞いて、施主にもグループLINEに入ってもらう。
案件の職人・営業のグループLINEに施主にも入ってもらうと、日々の工事内容がつぶさにわかってもらえる。施主は、何か気になることがあったら気軽に書き込むこともできるので、言えずに溜め込んで手遅れになったり、トラブルになることも避けることができる。
お話をうかがったのは…
エース・リフォーム(本社●長野県高森町)
長野で6拠点、岐阜、山梨、東京で各1拠点を展開。オリジナル塗料を使用する、外装リフォームをメインで取り扱う。近年、トラブルを未然に防ぐ新たな施策を次々に取り入れ、体制づくりを強化している。
営業統括部長 野中優さん
ホテルのコックとして10年間働き、拘束時間の長さから転職を考える。営業職に向いているという妻の意見もありエース・リフォームに入社。すぐに頭角を現し、営業→支店長→営業部長となった。「頑張った分だけ、業績にも評価にもつながるのがリフォーム業界だと思います」。
松本支店 メンテナンス部課長 宮尾光博さん
工場勤務と内装業のダブルワークを経て、約8年前にエース・リフォームに入社、メンテナンス部に配属される。「怒りたくて怒っている施主はいない。ただ困っているのだ」と気づき、そのニーズを見極めて改善することに重きを置く。2級建築施工管理技士、雨漏り診断士。
リフォマガ2023年5月号掲載
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