クレーム対策のオキテ~身近な人にたくさん事例を聞けば経験不足が補え、予測が立つように

起こさない!怒らせない!クレーム対策のオキテ

リフォームの営業担当が避けて通れないのがクレームの問題。いかにクレームを予防し、発生してしまったらどれだけ迅速に解決するか。この2つが肝だが、個別性が高くなかなかマニュアル化しづらいのが実情だ。それでも独自の対策を編み出し、クレームの抑え込みに成功している4社に話を聞いた。後半では、編集部で集めたリフォームトラブル事例についての分析も掲載している。



身近な人にたくさん事例を聞けば
経験不足が補え、予測が立つように

エース・リフォーム(本社 長野県下伊那郡高森町)営業部長 野中優さん

エース・リフォームの野中優営業部長は、施主も現場も千差万別なので、クレーム対応はマニュアル化できないと話す。それでも共通のポイントを見つけ出し、対応を強化して確実にクレームを減らすことに成功しているのが同社だ。会社としての取り組みとともに、経験不足を補うために新人営業ができることも教えてもらった。



営業部長に就任しクレームを半減させる

長野県内の5店舗のほか、岐阜、山梨、東京で8店舗を展開するエース・リフォーム(長野県下伊那郡高森町)。同社は外壁のみで年1600件、その他の工事を含むと計2000件を受注し、年商20億円をあげる。そのうち8割が新規顧客の案件なため、トラブルの芽を見逃さずに摘むことは重要課題となる。

1つのクレームによるダメージは大きい。担当者と上司の2名、あるいは職人を含む3名で現場に行く必要が生じると、他の現場は当然ストップする。突発的な対応を行うことで、かなりの時間と労力が奪われるのだ。

クレーム対応の最後の砦となる野中営業部長は、営業部長に就任した際に、クレーム対応を徹底的に見直した。以前と比べてクレームは半減したという。

「今では営業担当が上司に報告し、さらに上の支店長判断まででほぼクリアになります。どうしても収拾がつかないと連絡があるのは、月に1件あるかどうかになりました」。



スピード感のある初期対応の徹底が大切

野中さんは①施工管理の徹底、②初期対応の徹底でクレームの撲滅を図った。

①では、良質な施工管理のために、要所で営業担当が現場のチェックを行うほか、営業担当、協力会社、施主の3者によるコミュニケーションも密に取る。例えば、顔合わせには職人を必ず呼び、施主の要望を3者で共有。これで行き違い、思い違いをかなり減らせる。

②では担当者レベルで判断せずに、とにかく報告を早くするようにした。上司が状況を把握し、人命にかかわる緊急性があるかを判断。同時に上司から施主に必ず一報を入れ、担当者に言えないことを吐き出してもらい、不安・不満も解消させる。

「緊急性というのは人それぞれ。施主の不安が理解できておらず後回しにし、こじれるケースは多い。即座に上司が連絡するだけで、大抵のことは収まるのです」。スピード感のある連絡は誰でもできるので、新人営業も抑えておきたい点だという。



《クレーム事例1》
営業担当が勝手に大丈夫と判断。
不信感を持った施主から次々とダメ出しされるハメに。

【経緯】

外装工事の際に養生をしていないところがあり、「雨が降りそうだから心配だ」と施主に言われた営業担当。今雨は降っていないし、天気予報も晴れなのでまだ大丈夫だと判断。養生を数日後に行うように手配した。2日ほど経って、「ずっと気になっていて思い切って言ったのに、すぐに対応してくれなかった。そういえばあれも、これもダメだったのでは」と、施主から次々にダメ出しが。関係がこじれ収拾がつかなくなってしまった。


【野中さんコメント】
自己判断すると大きな不信感を生みかねない。施主がなぜ言っているか想像することが大切。

結果論だが、「心配ですよね、今のうちから養生しておきましょう」と対応すべきだった。そうすれば他の不備も穏便に済ませられたはず。

話が大きくなって私に来た時に、施主に問いかけてなんでこじれたのかをさかのぼっていったら、この出来事に行き当たった。施主も人間。いらだって様々なことをぶつけてくるが、絶対に許せないことをあぶりだすと根本原因がわかり、対応策も導き出せることが多い。



《クレーム事例2》
1時間前に電話確認もした新規の協力会社が現場に未着。
遅れて到着も工事をさせてもらえず。

【経緯】

新規の協力会社が現場に入る初日、1時間前に担当営業から協力会社に電話確認し、「予定通り現場に入るから大丈夫ですよ」との返事をもらう。

ところが決められた時間に職人が来ないとカンカンになった施主から電話が。協力会社は渋滞にまきこまれており30分遅れで到着したが、施主はブチ切れており、作業に取り掛かることもできずに追い返されてしまった。


【野中さんコメント】
施主と協力会社の認識のずれが根本原因。新規の協力会社は特にフォローを厚くしたい。

スタートからやらかしてしまったので非常に難しい案件。施主は休日返上で在宅しており、車を移動したりと準備もしてくれている。不安も期待もいっぱいの状態。一方で協力会社はいつもの仕事の延長で、多少の遅れは大したことではないという認識。遅れると電話を1本入れれば済んだかもしれないことだった。

どうしても新規の協力会社に依頼する場面はある。そういう時はお互いの感覚は未知数。営業担当はフォローをいつも以上にしっかりするという意識を持つ必要がある。



《クレームを未然に防ぐ方法》
相手の立場や気持ち、背景などをできるだけ想像して先回りすること。そうすれば逆に好印象を得ることもできる。


【野中さんコメント】
経験と想像から予測は立つようになる。事例の宝庫の職人さんに話を聞くのがオススメ!

玄関先に良く吠える大型犬がいた時などは、「工事の音がストレスになるかもしれないので、ワンちゃんどうしましょうか?」と私は初回で聞いてしまう。すると預け先を見つけてくれることもあるし、夕方までお出かけしてくれることもある。

内心心配だったことを営業担当が気づいてくれたと好印象になることも。相手の立場に立って想像することはとても重要。自身が経験不足で難しいと思うなら、現場経験が豊富な職人さんに、遭遇した事例をどんどん聞いてみるといい。

▲エース・リフォームでは「足場設置工事チェックシート」などを使って、営業担当が現場環境を評価。不備があったら協力会社にすぐに改善してもらうことで、クレームにつながりかねないことを極力減らしている。



お話をうかがったのは…

エース・リフォーム(本社 長野県下伊那郡高森町)営業部長 野中優さん

ホテルのコックとして10年間働き、拘束時間の長さから転職を考える。営業職に向いているという妻の意見もありエース・リフォームに入社。すぐに頭角を現し、営業→支店長→営業部長となった。「頑張った分だけ、業績にも評価にもつながるのがリフォーム業界だと思います」。



リフォマガ2022年5月号掲載



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