起こさない!怒らせない!クレーム対策のオキテ
リフォームの営業担当が避けて通れないのがクレームの問題。いかにクレームを予防し、発生してしまったらどれだけ迅速に解決するか。この2つが肝だが、個別性が高くなかなかマニュアル化しづらいのが実情だ。それでも独自の対策を編み出し、クレームの抑え込みに成功している4社に話を聞いた。後半では、編集部で集めたリフォームトラブル事例についての分析も掲載している。
顧客の些細な引っ掛かりに気づき改善を重ねてクレームを防ぐ
さくら(大阪府交野市)お客様相談室 小串智美さん
ひょんなきっかけでさくらの会長と知り合い、同社でアフターフォロー担当として活躍し始めた小串智美さん。完工後の施主宅を訪ね、2時間話し込むこともしばしば。世間話を重ねていくうちに、潜在的な不満がわかってくる。手厚いアフターフォローによってクレームを未然に防ぎ、リピートにつなげているさくらの事例を紹介する。
書き手の主観を含まない話し言葉による報告書
地域密着のリフォーム会社さくら(大阪府交野市)は、OB6割、新規4割とリピート比率が高い。年代は40代以下が2割、50代60代が4割、70代以上が4割と比較的高めだ。
ここで9年前からアフターフォロー専任で、年間120軒の施主宅を回るのが小串さんだ。「70代80代の方は寛大に接してくれて、なかなか本音を言いません」。対面で丁寧に話を聞くことで、潜在的な不満まで引き出すことができるという。
回り始めて2年ほどは施主から怒られっぱなし。理由は残工事が放置されていることが多かったから。同席した吉村健二代表は「会社の拡大期だったこともあり、完工すると次の工事に目が行きがちだった。リアルな声を聞き営業担当の意識が変わりました」と話す。
小串さんは語尾まで施主が話した通りに書き留めて、報告書にヒアリングしたままを書く。「書き手の主観が入らずに、ニュアンスを伝えることが大事なのです」(吉村代表)。
リアルな生の声を伝えるこの報告書は、クラウドで管理して活用する。営業担当自身が報告書を読み、問題点を見つけ出し、上司が確認して対策を実施。これで対応のモレ、ひいてはクレーム化を防げる。また、特定の担当に多い問題点があれば、個人目標を立てて再発を防止する。
半年に1回、全体で集計を取り、良い声と悪い声に分けてランキングを出す。そこで組織としての課題も浮き彫りになる。小串さんが施主も営業担当もフォローすることで、現在では大きなトラブルを未然に防げているさくらだ。
詳細なヒアリング内容報告→問題点の抜き出しと対策→総括
▲臨場感あふれる報告書。気になったポイントは赤字にしている
▲営業担当自身が問題点とその対策案を書き、上長や部門長がチェック
▲対策を行った後に総括して完了。小串さんは完工後に必ずアフターフォロー訪問のためのアポイントを入れるが、断られるのは年に1件あるかどうかだという。地域密着店ならではの訪問率の高さだ
《クレーム事例1》
事前に言ったことと相違が出た時、黙っていたり、言い訳を重ねるので、担当と信頼関係が築けなかった。
【施主へのヒアリング】
「コロナだけど本当に6月末までにできますか?」と営業担当に聞き、「大丈夫です。トイレだけはできないかも」と言われ、念押しもして確認し、納期が決め手でさくらに決めた。それが、実際にはキッチンとお風呂洗面が出来上がらなかった。モヤモヤが残るなー。
それから、言ったことと違うことがあると、言い訳を先にしてきはるので、「無理をどんどん言ってこっちが悪いんか?」という気持ちになってくる。信頼関係が薄れていった。
2回ぐらい、黙って見積もりの金額が上がっていたので、「なんで上がったん?」って聞き、「あのね、●●さん、何かチョンボしたら謝るのが先でしょ」と言って怒った。
他のスタッフがマメに連絡をくれて不安を取り除いてくれたのでよかった。終わっても皆さんが気にかけてくださっているのが安心。(報告書より再構成)
【対応】
施主の生の声を見て営業担当自身で対策を考える
施主が話した言葉を、小串さんがそのまま書いた報告書を作成。生の声を読み、そこから営業担当自身が問題点を抜き出して対応策を出す。この事例では、「①コロナの納期が想定を超えてしまった。今後は『いつまでに返事をもらえれば』と書面を渡す」「②言い訳が多いです。気を付けます」等の対策案が見られる。
お話をうかがったのは…
さくら(大阪府交野市)お客様相談室 小串智美さん
車同士で軽い追突をされた相手がさくらの会長で、その場で話が弾みさくらに入社。アフターフォロー専任で、顧客の元を訪ねて9年。顧客にありのままの気持ちを話してもらうために、常に笑顔で傾聴し、気になることだけを尋ねるように心がけている。
リフォマガ2022年5月号掲載
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