性能向上リノベーションに潜むビジネスチャンス

2022年トレンド大予測!
必ず知っておきたい16のキーワード

年頭にあたり、リフォーム・住宅市場をリードする5名の識者に、住宅業界に関わる人が知っておくべき、最新のトレンドや展望について聞いた。テーマはキッチン、インテリア、エクステリア、性能向上(断熱・耐震)の4つ。計16のトレンドキーワードをピックアップし詳しく解説もする。2022年、変化の激しい住宅業界を生き抜くヒントになれば幸いだ。



性能向上トレンド

加入するリノベ不動産で売上高1位を記録するなど、ワンストップリノベーションを熊本で拡大させる銀杏開発。昨年YKK APと共同し、中古戸建ての性能向上リノベーションプロジェクトで「熊本楡木の家」も竣工させた。なぜ今、リフォーム会社は性能向上リノベーションをすべきなのか。村田鷹司専務に話してもらった。



キーワード14 資産価値を上げるリノベーション

リノベーションの際に、断熱や耐震などの工事も行うと、施工費は高くなるが不動産物件としての資産価値は高まる。万が一状況が変わった時に売ることを想定して性能向上リノベーションを行うことはリスクヘッジになる。


中古住宅購入リノベはこれから規模が拡大する

日本の人口減少に伴い、住宅の新築着工戸数は年々減少し、リフォームの市場規模は横ばい状態。一方、住宅を購入する全世帯のうち、既存住宅を購入する世帯の比率は年々伸びている。中古住宅には新たなビジネスチャンスが潜んでいるのだ。

単純にリフォームという切り口で見た時、デザイン力で勝負する会社は多く、不動産入り口のリノベーションのほうが競合は少ない。だからこそ当社では、ワンストップリノベーションに力を入れる。仲介と工事を一括で請けられれば粗利も大きい。中古といっても築浅の新耐震の物件はすぐに売れてしまう。築30〜40年以上の旧耐震や断熱性能の低い物件をいかに売るかという時、性能向上リノベーションのニーズが生じる。

表層的なリフォームに加え、断熱や耐震など性能向上のための工事を行うと、施工費は当然高くなる。だが同時に、不動産物件として高く売ることができる物件になる。当社では「売る予定はないかもしれないが、万が一の10年後の査定のために備えませんか」と提案する。実際、性能向上リノベーションをした施主の一部は再販に至っている。


耐震フレーム+断熱窓で広い開口を維持して性能UP

開口部を外付けフレームで補強する「フレームⅡ」をバランスよく配置し、窓を小さくせずに耐震性を向上させた「熊本楡木の家」。高性能トリプルガラス「APW430」を組み合わせることで、断熱性もアップさせている。


築43年の家で最高等級の省エネと耐震性を目指す

築43年の楡木の家で、現代の新築基準を超える断熱性能HEAT20G2と耐震等級3の数値を目指してリノベーションを行った。断熱のUA値が1.84から0.45になるなど見事クリア。



キーワード15 ブランディング

予算の関係で妥協して中古を買う層より、ワンランク上の年収層が性能向上リノベーションと親和性が高い。おしゃれな事例で視覚的に訴えるホームページなど、対象者を引き寄せるためのブランディングが成功の鍵となる。


ブランディングによって性能向上が刺さる層を誘引

見えないものにお金を出すかどうかは、やはり予算があるかにかかってくる。以前は年収300〜400万円が当社のコアな客層で、資金的に妥協して中古を購入するという人が多かった。すると、性能向上を厚くやろうとはなかなかならなかった。

銀杏開発のホームページは、親しみを持ってもらえるように人が多く登場する、会社のインフォメーション寄りのものだ。それに加え、今年に入ってインスタグラムからアクセスできるワンストップリノベーション専用ホームページ「USERENO(ユズリノ)」を開設。ここにはおしゃれなリノベーション事例の画像をたくさん載せた。すると客層が年収500〜600万円に跳ね上がった。

彼らはあえてリノベーションを選択するという志向を持っており、住まいを資産と捉えて性能向上を施す意識も強い。ある程度余裕がある顧客層に性能向上リノベーションは向いており、顧客を捉えるための会社のブランディングも重要ということだ。


ワンストップリノベーション専用HPによって顧客を開拓

上のワンストップリノベーション専用HPによってリノベーションの顧客層が変わり、導入後に単価が800万円から1200万円に上がるなど、如実に効果が出ている。下の通常のHPと比較すると違いがよくわかる。



キーワード16 ビンテージ

築古の物件はリノベーションでは解消されないゆがみがあったり、塗装の割れなども生じやすい。住宅のビンテージという概念を顧客に正しく伝え、経年変化を楽しむ感覚に共感してもらえるかを確認する必要がある。


中古+リノベーションの市場を安定させる努力を

問い合わせがあったらまずは性能向上リノベーションをした築50年弱のショールームに来てもらい、打ち合わせを行う。そこで断熱性能を体感してもらうとともに、ビンテージという概念に共感してもらえるかを確認する。建物のゆがみや塗装の割れなどが受け入れられない人には向かないからだ。

熊本地震を体験したとはいえ、熊本で耐震性に重きを置く人はそれほど多くない。やはり限られた予算の中でのバランスになってくる。それでも最低でも耐震等級1相当はお勧めしており、100万円かかっても長期優良住宅の補助金の上限250〜300万円を獲得することで、補助金でペイできるといった説明を行う。また、重い瓦をガルバリウム鋼板に替えるという提案なら、耐震性も意匠性も上げられる。あるいは、YKK APと共同でつくったショールーム「熊本楡木の家」のように、耐震フレームと断熱窓を組み合わせるといった提案だと通りやすくなる。

メルカリではないが、「本当に住宅が新築である必要はあるのか。中古でいいのではないか」という消費者意識は年々大きくなっている。その市場を安定的に拡大させていくには、やはりディーラー認定車のような建物の性能保証が大切だ。中古住宅購入+リノベーション市場が活気を帯びているこの期を捉え、性能向上リノベーションに取り組むことがリフォーム会社には求められているのではないだろうか。


リノベーションの魅力を体感できるショールーム

新品の設備や手つかずの中古住宅を見るだけでは、施工後のイメージが湧きにくい。そこで、銀杏開発では昭和49年建築の中古住宅をリノベーションしたショールームで、見て触って体感してもらう。



お話をうかがったのは…

銀杏開発(熊本県熊本市)専務取締役 村田鷹司さん

28歳で父親が宅地開発のために設立した銀杏開発に入社し、社長である兄と不動産を軸としたビジネスを開始。特徴的な賃貸物件を集めたフリーペーパー発刊をきっかけに、不動産会社からリノベーションの依頼が舞い込むようになる。現在、ワンストップリノベーションに力を入れる。



リフォマガ2022年1月号掲載



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