2022年トレンド大予測!
必ず知っておきたい16のキーワード
年頭にあたり、リフォーム・住宅市場をリードする5名の識者に、住宅業界に関わる人が知っておくべき、最新のトレンドや展望について聞いた。テーマはキッチン、インテリア、エクステリア、性能向上(断熱・耐震)の4つ。計16のトレンドキーワードをピックアップし詳しく解説もする。2022年、変化の激しい住宅業界を生き抜くヒントになれば幸いだ。
インテリアトレンド
新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、人々の生活様式は大きく変わった。流行から既に1年半が経過し、コロナ以後も定着するニューノーマルが多数あると、ルームクリップ住文化研究所の川本太郎所長は予想する。ルームクリップの投稿のタグや画像の分析から見える、今後のインテリアトレンドについて聞いた。
キーワード8 「映え」から「心地良さ」へ
他者の目を意識した「映え」や「オシャレ」は鳴りを潜め、自分が真に「心地良さ」を感じる空間づくりにトレンドが移行。防音や断熱、空調など、目に見えない環境も重視され始めており、今後その傾向は強まっていくだろう。
他者に見せる「映え」から自分が心地良い場づくりへ
新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、人々の衛生意識や食習慣、収納など、暮らしや住まいのあらゆる面が大きく変わった。既に1年半が経過し、生活様式がコロナ以前に戻ることは想定しづらい。だが、コロナが終息した時、新しい生活様式、いわゆるニューノーマルのなかで、残るものと残らないものはあると考えている。そこで2022年も引き続きトレンドとなるであろう事柄に絞って解説したい。
まず言えるのが「映え」から実際の「心地良さ」を重視する志向の高まりだ。
そもそも10年、20年単位で価値観は変化する。2010年代はSNSの時代。スマートフォンが普及し、携帯で気軽に写真を撮って投稿するのが一般化した。2017年には「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれ、社会現象にもなった。
それまで不可視だった住まいと暮らしの領域も可視化され、多くの人が他者の視線を強く意識し始めた。ルームクリップでも、カフェ風、西海岸風、男前などの見せる系インテリアスタイルが人気を博す。それぞれのスタイルにキーとなる素材やアイテムなど必須要素があり、それをDIYで実現したユーザーがけん引し、「オシャレ」は大きなトレンドとなっていった。
▲2017年、映え全盛期に投稿された、「西海岸風バー」をイメージしたカウンターキッチン。
今はシンプルなデザインと使い勝手の良さが好まれる
下図のように「オシャレ」タグは2019年には2014年の12.5倍にもなった。だが、2019年をピークに年々「オシャレ」タグは減少している。
今は「映え」からシンプルなデザインや使い勝手の良さを重視する志向にシフトし、心身ともに豊かに暮らす環境を整える傾向が強まっている。コロナ禍における在宅の長時間化で、2020年以降この傾向は加速した。
目に見えない室内環境を整える人も増えた。具体的には室内に断熱や防音を施し、空気清浄機や加湿器を導入するといったことだ(下図参考)。今後は空気清浄機や加湿器置き場を、ルンバ置き場のように予め考えることが当たり前となりそうだ。
同じキッチンの2015年と2021年の比較
2015年(上)にはカフェ風だったが、2021年(下)にはカフェを演出する小物が全て取り払われ、すっきりとシンプルにまとめられている。テーブルも実用的な大きなものに替わった。
キーワード9 ライフハックとしての収納
コロナ禍において、備蓄の重要性が体感として再認識された。近年は災害の激甚化への備えも叫ばれている。大量購入による割安感や無駄の削減も魅力で、効率的で便利な、ライフハックとしての収納のニーズはますます高まりそうだ。
備蓄の習慣が根付きパントリーの再構築が進む
コロナ禍で在宅時間が延び、買い物数を控える一方で1日3食を自宅で食べるようになった。そこで効率的で便利な、ライフハックとしての備蓄収納のニーズが急激に高まった。
昨年のユーザーアンケートでも、食材のストックを増やした人は全体の42%もいた。コロナ以前、ミニマルな暮らしが浸透しつつあったが、備蓄の重要性が体感として再認識され、これは元には戻らないと思う。
アマゾンなどで1ヵ月分の飲料や食材を大量購入し、少しずつ消費していく形も一般化しつつある。今後災害が激甚化すれば、防災のための日用品も多めに用意する必要性が増すだろう。マンションの場合、宅配ボックスからパントリーへのスムーズな物の移動も課題だ。備蓄収納はこれから様々な発展を見せるだろう。
かさばる箱買い商品から細々した軽いものまで備蓄
大量の同一商品を箱買いしたり、細々した多種多様なものを備えたり、重い・軽い、大きい・小さいなど、備蓄するものは多岐にわたる。この収納計画こそ、プロの腕の見せ所かもしれない。
求められる機能が急激に増えた玄関周り
コロナ禍に、玄関に即席でマスク置き場や消毒液置き場を新設する例や、外に立水栓を設置する例が多数見られた。外から室内に物を持ち込まないためのシューズクロークの設置を含め、今後玄関収納の考え方も大きく変わるだろう。
キーワード10 複数の場づくり
在宅ワークの利点が周知され、今後も都心では出社との併用が続きそうだ。その際に重要なのが、食事と仕事の場。いずれも1ヵ所に固定せずに複数の場を設けることで、住まいが創造的で豊かな場になる。
在宅ワークの常態化で食と職の場が変わる
住まいにおける「食事の場」も変化を見せている。1日3食ダイニングテーブルだと味気ないと、場を変えて楽しむ例をよく見かけた。一部の人が行うイメージだった「ベランダで食事」も、かなり一般化したのではないだろうか。
それを踏まえ、キッチンから外部空間への動線はよく考える必要がある。また、室内外に食事ができる場を複数提案すると、施主に響くかもしれない。コロナ終息後も、都市部では在宅ワークと出社を組み合わせた働き方が続きそうだ。コロナ禍で、小さくてもしっかりしたワークスペースをつくるのが流行ったが、同じ場に固定されることで煮詰まる例も多かった。
今後はオフィスのように家もフリーアドレスにし、気分転換に仕事をする場を変えるという働き方も出てくると思う。集中したい会議は固定のワークスペースで、書類作成はダイニングテーブルで、天気のいい日は外でといった具合だ。そんな想定をもとにフレキシブルに使える家が誕生するといい。
食事の場を変えて気分転換する人が続出
2枚ともおしゃれな食事風景に見えるが、上は余りものをワンプレートに乗せて、洗い物を減らしながらカウンターでカフェ気分を味わった例、下はデリバリーの弁当をお皿に移し替えてベランダで食べた例。食事の場は気軽に変えることができる。
固定のワークスペースより複数の場を持つことを推奨
ダイニングテーブルで仕事をしたり、押入れをワークスペースに改良したり、リビングや部屋の一角にワークスペースを新設したり、ベランダで仕事をしたりと、在宅ワークの場は様々。複数の場を移動しながら仕事をすれば、アイデアも生まれやすそうだ。その際、ダイニングテーブルにコンセントを組み込むなど、コンセントの配置が重要になる。
お話をうかがったのは…
ルームクリップ(東京都渋谷区)取締役/RoomClip住文化研究所所長 川本太郎さん
2007年日本経済新聞社入社。大阪社会部、消費産業部(現企業報道部)で勤務。2013年Tunnel(現・ルームクリップ)にコミュニティマネジャーとして参画。2015年にセールスチームを立ち上げセールス担当役員に就任。2021年にRoomClip住文化研究所を立ち上げ所長に就任。
リフォマガ2022年1月号掲載
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