プリント面材の進化によってデザインキッチンが普及する

2022年トレンド大予測!
必ず知っておきたい16のキーワード

年頭にあたり、リフォーム・住宅市場をリードする5名の識者に、住宅業界に関わる人が知っておくべき、最新のトレンドや展望について聞いた。テーマはキッチン、インテリア、エクステリア、性能向上(断熱・耐震)の4つ。計16のトレンドキーワードをピックアップし詳しく解説もする。2022年、変化の激しい住宅業界を生き抜くヒントになれば幸いだ。



キッチントレンド

国内外の最新キッチン事情に精通するキッチンジャーナリスト、本間美紀さん。本間さんがここ数年急激にシェアを伸ばしていると話すのが、デザインと価格のバランスがいい、中間層向けのデザインキッチンだ。その特徴とともに、キッチンの役割の変化や最新機器事情などについても語ってもらった。



キーワード1 手頃なデザインキッチン

ベーシックな直線型のキッチンに、メラミンの面材で様々な素材を再現した、高級キッチンのようなインテリアとしてのキッチンが台頭。高級キッチンと住設キッチンの間に位置づけられる中間層のキッチンは要チェックだ。


プリント面材の進化によってデザインキッチンが普及する

これまで、数百万円するようなハイスペックのオーダーキッチンと、主に国内メーカーによるプロダクトとしての住設キッチンとの間には大きな隔たりがあった。だが、ここ2、3年でその中間層が誕生している。シンボリックなブランドがTJMデザインの「kitchenhouse(キッチンハウス)」だ。

近年、ハイスペック系のキッチンブランドは石や金属調塗装などを用いて、マテリアルの質感をより前面に出す傾向にある。そうした流行を踏まえ、同ブランドは高級キッチンのように素材感を際立たせた、インテリアとしてのキッチンを、ぐっと手頃な200〜350万円ほどの価格帯で提供する。

それを実現しているのが、急激に進化したメラミンのプリント面材だ。ベーシックな直線型のキッチンを基本とし、メラミンで様々な素材感をリアルに再現することで、家具のようなおしゃれなキッチンを、よりカジュアルにつくり出したのだ。


わかりやすく買いやすい訴求が今後重要になる

キッチンハウスの姉妹ブランドの「GRAFTEKT(グラフテクト)」は、さらに手頃な価格設定だ。キッチンレイアウトは計11種類あるが、本体価格は一律85万円(税別、取付・組立費用別)。加熱機器やレンジフード、水栓、食洗器の標準品は価格に含まれ、グレードアップ品も選べる。オプションで30万円〜のバックセットやダイニングテーブルなどの家具も追加できる。このような、消費者向けのわかりやすい訴求の仕方も、メーカーとして今後重要になってくる。

サンワカンパニーの「WITTE(ウィッテ)」や、KOBE STYLEのセカンドライン「FUN×kitchen(ファンキッチン)」など、追随する商品も次々と出ている。



メラミン材ひとつで多彩な質感を再現する

「kitchenhouseベーシック」は180万円(税別)~。メラミンのオリジナル面材「エバルト」は、天然石調(上)や木目調(中)など豊富なテクスチャーを揃える。新素材「フェニックス」を用いた光を乱反射させるマットな黒(下)も人気だ。



キーワード2 キッチンのマルチファニチャー化

キッチンキャビネットは大容量で、ホームオフィス商品よりも高性能。家電類がビルトインされて音や匂いも格段に減り、キッチンにワークスペースを設けたり、背面収納をLDまで伸ばす需要が高まっている。


ワークスペースを内包し、ダイニングまで伸長するキッチン

キッチン収納がダイニングやリビングまで伸びたり、キッチン内にワークスペースを設けたりと、元来のキッチンの機能に留まらない「キッチンのマルチファニチャー化」も進んでいる。

食器や鍋など重いものを入れることを想定し、頑丈につくられているキッチンキャビネット。書類などを入れる十分な深さもあり、レールの機能性もホームオフィス商品よりも高性能だったりする。PCやプリンター類、書類を収納することなどお手の物なのだ。

キッチンがワークスペースとして成り立つようになった理由はそれだけではない。食洗器やオーブンなど家電類はきれいにビルトインされ、水栓も水が滑らかで跳ね返りがほとんどない。換気扇も昔より格段に静かに稼働する。音や匂い、水はねなどに惑わされない環境面が大きく後押しし、多目的で使えるようになったのだ。

▲キッチンとダイニングを一体でつくった例。統一感があってすっきりとしていながら、大容量の収納を実現できている



キーワード3 機器の進化

おしゃれだけど日本人には合わないと言われてきた海外製の食洗器やIHクッキングヒーターも、需要が高まるにつれ日本人にフィットした仕様が続々と登場。施主に選択肢の一つとして提示しやすくなった。


設備機器のレベルアップでキッチンシステムも変わる!?

これまで日本人の食習慣やキッチン事情とはマッチしづらかった海外製の設備機器が、高性能かつ日本人にフィットするようになった点も見逃せない。

Miele(ミーレ)の食洗器には、ラーメンどんぶりや中華鍋、小皿、箸などを入れやすいアジアンモデルのバスケットが登場。食洗器が適切な量を判断する洗剤の自動投入機能や、専用アプリによる食器洗いの開始・終了時刻設定機能なども搭載している。

BOSCH(ボッシュ)からはスマホばりの多機能タッチパネル付きIHクッキングヒーターが登場。揚げ、ご飯炊き、魚焼きなど10以上の焼き方を選べる。鍋の底をセンサリングして温度を一定に維持する「フライパンセンサー」搭載で、ホットケーキも失敗せずに毎回きれいなキツネ色に焼くことができる。このIHがあれば単体の魚焼き器やグリル、炊飯器などが必須ではなくなる。

進化した機器による省スペース化によって、キッチンの自由度も広がりそうだ。


小皿から中華鍋まで入るMieleのアジアンモデル食洗器

食器洗い器G7000。日本人が使用する食器にフィットした「アジアンモデル」バスケットを搭載する。73万7000円(G7964C SCViK2O、税込)W598×D570×H805-870mm ミーレ・ジャパン


コンロの大きさや火力を自在に操れるBOSCHのIH

IHクッキングヒーターPXE645FC5V。4つの加熱ゾーンを持ち、左側は2口をつなげ大きな1口としても使用できる。日本向けの48×27cmの長方形のオリジナルグリルパンは、5.3cmと深さがありフタ付き。野菜の蒸し焼きなど多様な使い方ができる。32万4500円(税込) ボッシュ



お話をうかがったのは…

キッチンジャーナリスト 本間美紀さん

インテリアの専門誌「室内」の編集を経て独立。キッチン、家具、住まい、家電、キッチンツールまで、デザインのある暮らしの取材を得意とし、建築家住宅の取材は300件以上。ドイツ、イタリア、北欧など海外取材も多い。著書に「リアルキッチン&インテリア」(小学館)など。



リフォマガ2022年1月号掲載



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