今月の輝く!リフォームセールス~売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる「近江商人の商売十訓でお客様と長いお付き合いを目指します」

今回登場するのは、「三方よし」の近江商人の魂を体現している営業マン・小野俊也さん。顧客・営業・職人の良い関係性が満足度の高いリフォームを実現すると語る、小野さんの仕事術を紹介する。

▲LIXILリフォームショップ クサネン(滋賀県草津市)店長 小野俊也さん(43)

滋賀県出身。電気工事の職人として様々な現場を経験したのち、29歳のときにクサネンに入社。現在、クサネンに2つのあるショールームの内、栗東市にある「LIXILリフォームショップクサネン」の店長を務める。学生時代は野球やラグビーを、今はキックボクシングと体を動かすことが好き。ギターやベースなどの楽器演奏、釣り、マラソンなど多趣味な一面も。増改築相談員福祉住環境コーディネーター2級 第二種電気工事士 給水装置工事主任技術者 液化石油ガス設備士

▲色紙に一言!営業で大切にしていること

近江商人の経営哲学「売り手によし、買い手によし、世間によし」。「お客様も僕らも職人さんもいい関係でいなければ、いい現場が作れない。そしていい仕上がりにはならないとい思いを込めて、この言葉にしました」(小野さん)



「僕がお客様の息子だったら」
 家族の気持ちになって提案

滋賀県でLPガス販売やリフォームを手掛けるクサネン。栗東市にある「LIXILリフォームショップクサネン」店長・小野俊也さんの机のクリアシートの下には「近江商人の商売十訓」が貼ってある。

「この商売十訓には、仕事をする上で『う〜ん、そうだよな』と納得する事柄が凝縮されています。中でも好きなのは『売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる』です」と小野さんは話す。

営業マンだから、数字を作りたい。店長として、売上を上げる責任もある。

しかし、小野さんは長い目で見て必要がないと思うリフォームは勧めない。

「後からお客様が『このリフォームいらなかったな』と後悔するような工事はしない方がいい。それより、長いお付き合いができる関係性を作っていきたいと思っています」

小野さんは大型リフォームの場合、その家族の5年後、10年後を考えて、やるべき工事とそうでない工事を提案する。ポイントの一つは子どもの性別と年齢。数年後には結婚や独立で出ていく可能性がある場合だ。

「今はリフォームのタイミングではないと思ったら、『僕は今、営業マンとしてではなく、お客様の息子だったらと考えてお話します』と、前置きしてから説明します」



3姉妹のプライベート空間
独立後を見据えて

こうした小野さんの姿勢がよく表れた事例がある。小中高に1人ずつ、3人の娘さんがいる家のリフォームの案件。6畳間の勉強部屋は3人で共有。寝る時は和室を使っていた。さすがにプライベート空間が欲しいということで、押し入れを3段ベッドに作り替えたいという依頼だった。

しかし、小野さんは進学などで娘さんたちが独立した後を考え、作り付けの押し入れベッドはやめた方がいいと提案。その代わり、押し入れを潰して部屋を広げ、そのスペースに3段ベッドを別途購入して置くことを勧めた。

「押し入れに3段ベッドを作ってしまうと、他に使い途がなくなります。3段ベッドだけなら、使わなくなったら廃棄できますし、工事費用も安く抑えられます。売上のことを考えていないわけではないのですが、お客様に長く喜んでもらえることを第一に考えています」



「お客様は神様」ではない
顧客・営業・職人は対等

「お客様は神様」という言葉はある。しかし、小野さんは顧客と営業、そして職人は対等の立場であることを貫いて、営業活動を行っている。

無茶な値引きを要求する顧客には「それは弊社ではできません」とキッパリ説明する。例えば、短時間で終わる工事に対して、「なんでこんなに工事費用が高いのか」と言う顧客には、どんな工事でも職人の日当が発生することを伝える。

「僕ら営業がお客様と対等の立場でないと、適性な工賃を職人さんに払えなくなります。払えないと、職人さんの仕事がやりづらくなり、結局いいモノが作れなくなるのです」

顧客が営業や職人を下に見る、ベテランの職人が若い営業を下に見る。そうした関係の中では良いリフォームはできないと小野さんは考える。

まずは、顧客と営業の関係が対等であることを理解してもらうことで、良い関係性を築くよう心掛けている。



初回アポイントで簡単な補修
お困りごと解消で契約に

小野さんは、簡単な交換工事でも、見積もりを顧客に渡す時はポストインではなく、手渡しと決めている。単に郵送してしまうと、値段だけで他社と比べられてしまうからだ。

「対面だと、なぜこの金額な説明ができます。それに顔を合わせることで、お客様と仲良くなるきっかけが作れます」

さらに、新規顧客宅に現場調査で行った時は、さりげなく家の中を見渡し、部屋に置いてある趣味のものをチェックする。

よくあるのが、カルチャーセンターなどの講座で作った作品だ。毛糸の編みぐるみが置いてあったら「どなたが作られたんですか?」とすかさず質問する。顧客との会話を広げるために、興味を持ったものはなんでもトライしている小野さん。今では釣り、楽器、キックボクシングなど趣味の範囲が広がり、顧客と会話が弾んでいる。

他にも初回のアポイントでは、打ち合わせ後1時間ほど時間を空けている。その時間でちょっとした家の補修サービスをするためだ。「扉の開け閉めがしにくい」「コンセントのプレートがグラグラ」などが解消すると、感謝してくれた顧客からは、ほぼ契約が取れると言う。

「たとえその時は契約が取れなくても、後々、別の工事を頼んでくれることも多いです」と小野さんは話す。



「なんで先に言ってくれないの」
デメリットは先に伝える

意外だが、「デメリットを必ず伝えること」も相見積もり必勝法になると小野さんは話す。以前他営業担当案件で、浴室のリフォームで、顧客の希望通りに床の材質を高級感のあるタイルにしたところ、「浴室に足を踏み入れたら、ヒヤッとした」とクレームが入った。

「シャワーで温めてから入ってくださいとお伝えしましたが、お客様からは『そういうことは、なんで先に言ってくれないの』と言われた事例がありました。ですので、どんな工事でも、実際にあったデメリットについて、全部お話ししています」

他社がメリットばかりを伝える中、デメリットも説明し、相見積もりを勝ち抜いている。他にも、競合対策として、小野さんは打ち合わせの最後に必ず次に会う日時を決めている。

「昔は見積もりができてから電話をして次のアポを決めていました。しかし、その間にお客様が他社と打ち合わせをして、契約してしまうことがあったのです。今は『この日までに見積もりを絶対に作る』というギリギリの日程を計算して、相見積先の動向を探りながらアポの日を決めるようにしています」



女性の感性を活かして
顧客の高い満足度をキープ

「LIXILリフォームショップクサネン」は、同系列ショップのお客様満足度アンケートにおいて、2017年度と2020年度に滋賀県第1位を獲得。店長の小野さんは、「今後もこうした顧客満足度は維持していきたい」と語る。

また、下に紹介した小野さん担当のリフォーム事例は、LIXILメンバーズコンテストで入賞を果たした案件だ。築100年の家のリフォームは2018年度に敢闘賞を、北欧風のリフォームは2021年度に京滋エリアの地域最優秀賞を受賞している。

「弊社は女性プランナー2名をはじめ、優秀な女性スタッフに恵まれています。こうした受賞の数も増やしていけたらと思っています」


▲小野さんが担当した築100年を超える家の全面リフォーム。当初は浴室のパネル交換だけの依頼だったが、小野さんが極力営業色を出さずに希望をヒアリング。家族の仲の良さを感じた小野さんが、会話しながら料理ができる対面式のキッチンなどを提案したところ、2000万円の大型リフォームとなった

▲長い間小野さんが担当していた高齢夫妻宅。ご主人が亡くなり、一人暮らしをしていた奥さんが体調を崩され息子夫婦と同居を機に全面リフォームを希望。奥さんから「小野さんになんでも任せておいたら大丈夫」という相見積もりなしの依頼だった。息子夫婦の意向でテイストは北欧風に。完成前に奥さんは亡くなってしまったが、愛用していた足踏みミシンを机にリメイクし、リビングに設置。奥さんの思い出を残せる心遣いをした

▲小野さんは、顧客には「いつでも携帯に電話をください」と伝えている。プライベートな時に電話がかかってきても、「しんどいと思うことはありません」と小野さん。「家の困りごとの窓口が、僕に一本化している方がお客様は楽なんです。そういうお客様は相見積もりはゼロです」

▲小野さんの愛用しているアイテム。左から会社案内、三角スケール、直尺、曲尺、レーザー距離計、スケール、ボールペン、ペンライト、消毒液、カメラ、複写式になっている打ち合わせシート。顧客にはこのシートに、今回の打ち合わせ内容、次回の持参物、次回のアポイントの日時を書いて渡している



リフォマガ2022年5月号掲載

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