リフォーム解体新書~床を解体したら、束石がボロボロだった

リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書

第12回 床リフォーム(後編)


ドキッとする“解体あるある”を集めました

「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。

そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。今回紹介する事例は、現場調査時にしっかりと確認すれば「開けてびっくり」という事態を防ぐことができたものばかりです。事前に現場の問題点を把握していれば、床を開けてから工事をストップするようなことが起こらなかったでしょう。床工事で工事が中断すると、住む人が安全に生活できなくなります。戸建て住宅なら床下の確認を、マンションならコンクリートスラブの状態を把握することが大事です。



《事例5》
床を解体したら、束石がボロボロだった

このまま床工事を進めてよいものか?

床材を張り替えるため床をは剥がしたところ、束石に白いモコモコしたものがついていることに気が付きました。床下に入って確認したところ、中には束石の角がボロボロに崩れているものもありました。「これは単に年数による束石の劣化なのか?このまま床工事を進めて大丈夫なのか…」と心配になってきました。大工も「あっ」と驚いた様子。「このままだと束石がボロボロになってしまうよ。土壌の問題だから、ちゃんと処置しないと、工事できないよ」と言われてしまいました。床解体が進行中でしたが、工事をストップせざるを得ません。施主にちゃんとした説明と対処の方法を伝えなければならないと思い、頭を抱えてしまいました。


【解決策は?】土壌から水分を吸い上げないように防水対策を

束石を覆う白いモコモコしたものは、硫酸ナトリウムの結晶で束石の強度に影響します。特に束石の内部を微細破壊しながら析出される「硫酸ナトリウムのしんじょうけっしょう針状結晶」は危険です。土壌に含まれる「硫酸塩」と雨水に含まれる「硫化イオン」が束石に吸い上げられ、混ざることで起こる現象で、「硫酸塩」が基準を超えて多く含まれる土壌に建つ家で確認されることがあります。この場合、いくら床を新しくしても、束石が不安定な状態となりすぐに不具合が起きます。工事を中断して、まずは床下の工事を行います。土壌が表面に露出しないよう、一面に防湿シートを敷くのが一番よいのですが、難しければ、束石の下だけでも防湿シートを敷きます。束を鋼製束にすると、その後のメンテナンスもしやすくなるでしょう。さらに束石にも防水塗料を塗るとより安心です。

▲束と束石を交換する時に防水対策をとる


【どうすれば事前にわかる?】調査時は床下の確認を必ず行う

「針状結晶」は現場調査時に床下を確認することでわかります。築浅の建物では少し白いものがついているくらいで見逃すかもしれませんが、前もって「針状結晶」のことを知っていたら適切なアドバイスをすることができるでしょう。特に土壌の上に束石を置いている建物(ベタ基礎でない建物)では束石に異変がないか観察しましょう。「針状結晶」は土壌に「硫酸塩」を多く含む地域で発生するため、近所でも同様の話があるかもしれません。「針状結晶」が疑われる場合は、地域の土壌に「硫酸塩」が多く含まれているという話がないか、施主に尋ねてみましょう。実際に土壌の検査をする場合は時間と費用がかかりますので、検査機関に確認をとり検討する必要があります。



[用語解説]硫酸ナトリウムの針状結晶

床を支えている束石が、白くモコモコしていて、原形をとどめていないことがあります。そのまま放置していると、束石の内部が破壊されて崩れ落ち、その上に立つ束が宙ぶらりん状態になることもあります。このような現象を起こす厄介者の正体は「硫酸ナトリウムの針状結晶」と呼ばれ、束石を少しずつ破壊していく恐ろしい結晶です。

コンクリート製の束石は、土壌に浸みこんだ雨水を吸い上げますが、もし土壌に「硫酸塩」が多く含まれていると、「硫酸塩」も一緒に吸い上げてしまいます。すると束石の内部で雨水に溶け込んでいる「硫化イオン」と反応して「硫酸ナトリウムの結晶」となります。この結晶は束石の表面に付着する粉状の結晶とは違い、針のようにコンクリート内部を微細破壊しながら析出される「針状結晶」で、これが束石を破壊するのです。

▲束石を崩してしまう「硫酸ナトリウムの針状結晶」は「硫酸塩」を多く含む土壌で発生しやすい



リフォマガ2024年4月号掲載



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