リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書
第11回 床リフォーム(前編)
ドキッとする“解体あるある”を集めました
「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。
そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。
今回のテーマは「床」。床は人や家具、全ての重さを受ける部位なので、工事で解体をする時には安全面においても問題がないか確認する必要があります。床がフカフカする場合はその原因を突き止めないと、リフォームをしても同じことの繰り返しになってしまいます。事前に床下の状態をチェックして、解体してびっくり!という事態を防ぎましょう。
《事例1》
2階の床と1階の天井が太鼓張りのようになっていた
この状態で2階の畳をフローリングにすると、階下に響く音が大きくなりそう
木造住宅2階の和室を洋室にする工事でのこと。着工前に施主から、「2階の廊下の音が下に響くけれど、どこの家でもそうなのでしょうね」とお話がありましたが、その場では「そうですね。そのようなお話はよくあります」とさらっと流してしまいました。
ところが解体当日になって、職人が床下地の異常に気付きました。畳の下の合板を1枚めくると、2階の床を支えている梁の下端に1階の天井板が張りつけられていたのです。「2階の床と1階の天井が太鼓張り※のような状態になっていて、上の音が下にすごく響いていると思うよ。畳からフローリングに替わったら、もっと響くよ」。そう職人から忠告されました。
※太鼓張り…襖や建具などで、骨組みに板や紙が両側から直接貼られている状態。中が空洞になっているため叩くと太鼓のように音が響く。
【解決策は?】1階の天井をはがさないのなら空洞を埋める方法を
1階の天井をはがしてやりかえることが一番良いのですが、そこまで大事にしたくないという場合は、空洞を埋めて少しでも音が響かない方法をとることもあります。具体的には断熱材を2階の床下に詰める方法です。太鼓のようにボーンボーンという音が緩和されても気にならない程度まで音を消すことができるかどうかは現場により差があります。
床材を畳からフローリングにするなら、フローリング材の下に防音シートを敷いたり、階上用の防音フローリング材にする方法もあります。
【どうすれば事前にわかる?】2階の音が大きく鈍く響くか
通常は2階の床からの振動が1階の天井に伝わりにくくするために、イラストのように1階天井を吊り下げる形の「吊り天井」にします。さらに近年では、「吊り木」と呼ばれる天井を吊り下げる部材を耐震性があるものにして、更に音を軽減する方法をとることが多くなりました。
しかし中には、1階の天井の高さを確保するために吊り天井にしていないというケースの他、築年数が経った2×4住宅の中にもこのように太鼓現象を起こすような造りになっている場合があります。2階からの音がボーンボーンと鈍く響くという話があれば要注意。現場調査の時に点検口を開けて確認するとよいでしょう。
▲2階床からの振動を1階天井に伝わりにくくするために通常は吊り天井にする
[用語解説]太鼓現象
太鼓は中の空洞が密閉されていて、空気の出入り口が無い状態です。そのため、片側の面を叩くと内部の空気が振動して反対側の面に響く仕組みになっています。床においてもこれと同じような現象が起こることを、「太鼓現象」と呼びます。スプーンを落とした時のような軽い音では気にならなくても、例えば子どもが走るとドスンという重量床衝撃音が響きやすい特徴があります。特に近年問題になるのがマンションの二重床で、床とコンクリートスラブの間の空気が密閉されてしまうと、階上の床から階下の天井へと太鼓のように音が響いてしまいます。そのため、床面と壁面との間に隙間を設けて空気の逃げ道を確保するなどの対策をとるマンションもあります。
▲太鼓現象はマンションの二重床で問題になることも
リフォマガ2024年3月号掲載
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