達人のヒアリング術~施主と共に家をまわり潜在ニーズを発見する

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今日からマネできる達人のヒアリング術

素晴らしいプランは、施主の隠れた要望や現状への不満、住まいへの想いなどを的確に聞き出すことによって、はじめて提案できる。各社のヒアリングに定評のある達人から、すぐにでも取り入れたいヒアリング手法を伝授してもらった。



施主と共に家をまわり潜在ニーズを発見する

ヒアリング時の現地調査に力を入れているのが、なごみ工房の栗山映子さんだ。自宅に訪問したら、まずは着席して一通り要望を聞き、それからぐるりと家を見せてもらう。ここで栗山さんの主婦&女性目線での気づきが、潜在的な不満の発見に役立つという。



不便であろうポイントを質問してあぶり出す

「施主は大きく2つに分かれる」と話す栗山さん。1つは要望がはっきりしている場合で、あらかじめ準備されたリストなどに沿って話を聞いていく。

もう1つが「不便だけどどう改善したらいいか分からない。アドバイスが欲しい」という場合だ。実は要望がぼんやりしているほうが受け入れる余地はあり、ヒアリングさえしっかりできれば提案はしやすいという。

自宅を訪問して基本情報をヒアリングしたら、栗山さんは家を施主とまわって、現状把握を一緒にしてもらう。「気になるポイントを発見して、『これって不便じゃないですか?』とその場で質問することで課題が明らかになっていくんです」。

パターン1の、老後を見据えた60代夫婦の家が分かりやすい。トイレの便器の背面に、掃除道具が多く置かれて掃除が大変だろうと推測。背面が丸ごと収納で掃除がしやすいトイレを提案した。他にも和室、キッチン、パソコンコーナーと、各所の不便を発見、解決していった。

ちなみに、栗山さんは本棚もさりげなくチェック。インテリア本があれば趣味が明確に分かるし、料理本からはどんな料理をつくるか知れるのだという。



《パターン 1》お住まいの一軒家をリフォーム

子どもが独立した60代夫婦。必須の設備機器の取り換えと、ヨガを思い切りしたいという漠然とした要望があった。栗山さんは現状を見て踏み込んだ提案をした。


要点をまとめた「打ち合わせ記録」

ヒアリングと現調を一通り終えたら、重要な単語と、キッチン・棚・家電等の寸法を簡潔に記した、複写式の打ち合わせ記録「お打ち合わせ確認事項」を書いて、1通を施主に渡す。


潜在ニーズをくみ取ったプランを提出

溢れていたものを納め切ることができるような収納計画を各スペースで提案。また将来を見据えて、和室を居心地のいいメインスペースとする大胆なプランを提案。ほぼ提案通りに採用された。


各部位のBefore&After

【トイレ】

日々の掃除が大変そうな便座背面に注目

トイレの便座の裏に、ブラシやゴミ箱などが置いてあり、「かがんで背面をお掃除するのが大変ですよね?」と施主に確認する。

背面スペースがなくなる収納付きトイレを採用

背面に収納が付いたTOTOの「レストパル」を採用。タンクが隠れて小物も全て収納できた。掃除はフローリングワイパーで楽々。


【和室】

物置と化していた玄関横の広い和室

ハンガーパイプに洋服がかけられ、大型の布団が置いてあるなど物置と化していた和室。8畳と広く、将来的に寝室になるのではと目を付ける。

ヨガスペースにもなる心地良い部屋に変える

出ていたものを全て収納できるように、床の間の半分と、押し入れの1/3をクローゼットに。床の間部分には特徴的なクロスを貼った。姿見を設置し、ここを新たなヨガスペースとしても提案。


【キッチン】

勝手口前に並ぶゴミ箱、カラフルタイルの要望も

ゴミ箱が前に並べられて開かずの勝手口になっていた。右下の写真の、友人宅の床に貼られたようなカラフルなタイルを入れたいという要望も出た。

ゴミ箱をすっきり収納。タイルは落ち着いた色に

ゴミ箱を収納できる配膳台を設置。また、持ち物を見て、「実はあまりポップになりたくないのでは?」と気づき、タイルはグリーン系でまとめた。「言ったことを鵜呑みにしないことも大事です」。


【パソコンコーナー】

たこ足配線で火事や転倒の恐れがあった

足元にたこ足配線が走り、プリント用紙や資料も床に置いてあった。掃除がしづらくほこりによる火事、足を引っかけて転倒の恐れが。

パソコン周りのものを全て納める収納を併設

パソコンデスク+後ろに配線を通せる収納を設置。空間を圧迫しないように、収納の奥行きはプリンターと電話がぎりぎり置けるサイズに。



《パターン 2》中古マンションを購入してリフォーム

40代夫婦+娘2人の4人家族。築15年のマンションを購入し、前の住民が住む状態での内見のみでリフォームをするため、現在の自宅や持ち物などから嗜好を感じ取っての提案となった。


内見で得た情報も記録

1月に依頼、3月までに引っ越したいというスケジュール。内見して床とドアは既存のままということで、ベースの色はメープルに。トイレと和室にエコカラットを使いたいという明確な要望もあった。


要望のエコカラットにフォーカスした提案

持ち物や見せてもらった写真などから、ナチュラル志向で奇抜ではないものを求めていると推測。フレーム付きエコカラットを絵画のように飾った洋風の和室を提案したところ、そのまま採用された。


各部位のBefore&After

【和室】

一般的な和室を洋風にイメチェン

一般的な和室を、壁にグレーのアクセントクロスとフレーム付きエコカラット、縁なし畳、木のブラインドで洋風にがらりとイメチェン。


【キッチン】

提案通りの木目調クロス貼りに

木目調クロスを使いたいという要望があったため、床色に合うナチュラルな色味の木目調クロスを、キッチン本体、壁、天井に貼った。


【トイレ】

エコカラットで遊び心のある空間に

エコカラットを①絵画のように貼るパターンと、②壁全面に貼るパターンを提案。②で竹のような意匠性のあるタイルが採用された。



お話をうかがったのは…

なごみ工房(千葉県佐倉市)リフォームプランナー 栗山映子さん

大学の住居学科で学び、ガス会社のリフォーム部門に就職。2012年よりなごみ工房主宰。リフォーム・リノベーションのプランニング、造作家具提案、パースセミナー等を行う。自身の結婚、出産、介護、子育ての経験をプランづくりに生かし、「我が家が一番!」と思える提案を心がける。



リフォマガ2023年1月号掲載



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