居酒屋の店長だった蜂須賀若菜さん。「人と接することが好き」と話し、営業でも人間関係を重視しているスタイルだ。スキルアップのため、資格勉強にも意欲的に取り組んでいる。
▲CUBEリノベーション(神奈川県川崎市)営業係長 蜂須賀 若菜さん(37)
前職は飲食店の店長。コロナ禍の業態変化を機に転職を決意し、2020年11月に未経験で入社。現在は営業係長として、年間6000万円の売り上げ目標を追う。営業から引き渡しまで一気通貫制。
コロナ禍きっかけで飲食業から転身
CUBEリノベーションは千葉に本社を置く総合リフォーム会社だ。川崎店は2020年にオープンした。同じ年の11月に、入社したのが蜂須賀若菜さん。前職は居酒屋の店長で、リフォーム業は未経験だった。
コロナ禍でデリバリーが増えて「このままでは、ただ料理をつくる人になってしまう」と危機感を覚え、人と接する仕事であるリフォーム業へ転身を決めた。
「リフォーム営業は飲食業の30倍大変ですが、やりがいがあって楽しい」と蜂須賀さんは言う。そもそも飲食業に就いたのは、人と話しながら自分がつくった物を提供したかったから。リフォームもまさに同じだと感じたという。
「ただ、リフォームは完成したら終わりではなく、そこからの暮らしがあります。関係性が長く続くからこそ責任感を持たなければと思います」
初回はビジネス色濃く
きっちりとした印象を残す
蜂須賀さんが大事にしているのが、顧客と接する時間だ。信頼してもらうために、特に初回訪問に気を遣い、きちんとした印象付けをしている。
まず、約束の30分前頃に職人と待ち合わせて、現場の情報共有を改めて行う。事前にメールで送っていても、顔を合わせて最終確認ししておくと、進行がよりスムーズだ。
そして、施主宅のインターホンは約束の時間ぴったりに押す。時計を見てちょうどになったら鳴らす。名刺を渡したあとは1歩下がり、深くお辞儀をするのが蜂須賀さん流。
「きちんとした人だな、という印象を持ってもらえるポイントをつくっています。待っている時間ぴったりにチャイムが鳴ったら気持ちよくありませんか?(笑)」
テーブルについたら、リアクションは少しオーバー目を意識する。大きめに反応することで、相手が話し続けやすくなる。
「『今話したそうだな』という隙を見逃さないように、よく表情を見ています。なるべく聞く体制で、話しやすい人だと思ってもらうようにしています」と蜂須賀さんは話す。
データ管理の一元化で発注ミスなくし効率化
蜂須賀さんの相棒ともいえるのがiPad。デスク作業の時間短縮に大いに役立っている。
特に愛用しているのが「GoodNotes(グッドノート)」というアプリだ。蜂須賀さんが飲食業時代から、経費管理に使っている。
案件ごとにアプリ内にノート=フォルダをつくり、現場調査から仕様決め、プランニング、発注、工程管理などの必要な情報のほぼ全てをアプリ内に集約させる。
例えば現場調査では、iPadで撮影をし、気になる場所への書き込み、保存、共有までiPadで完了。
仕様決めでは、取り込んだカタログに内装の品番をアプリの中で記載し、そのまま発注することもある。
案件ごとのノートは、契約前のものはひとつのフォルダにまとめ、契約が決まればフォルダ外に出す、というルールで、ひと目で進行状況がわかるように工夫している。(上画像参照)
以前紙で管理していた時は、メモを紛失したり、他のものと混じったりして、発注ミスが起きていた。
データ管理をアプリに一元化したことで、そうしたミスは減少。iPadなのでどこにいても作業しやすく、業務効率化を成功している。
iPadで業務効率化
「GoodNotes(グッドノート)」アプリで案件管理をしている蜂須賀さん。
「アプリ上で、アナログノートを使っている感じ」と言うように、複数のノートがアプリの中に保存されている。表紙に顧客名・住所・メモを記載。
▲スピード感が求められる現場調査のメモは、電池切れやフリーズの恐れを考慮して紙で取る。そのあと、スキャンして保存する。
▲工程表も取り込み、まとめて管理。
苦労を体験することで
工程への意識が変わった
現場のことをよく知らなかった頃、蜂須賀さんの予算組みはコストと効率重視になっていた。「工程もこれでできるだろう、と勝手に想定して組みがちだった」と蜂須賀さん。
そんな折、大工職人から「苦労ってやらないとわからないから、やってみる?」と言われた。
職人の仕事に興味があったこともあり、実際に解体作業をすることになった。もともと蜂須賀さんが「剥がせばいいので2人工で十分だろう」と考えていた現場だった。
2×4の戸建ての外壁解体で、塗り壁を剥がし、ラス網をひとつひとつ手作業で切り取って、やっと躯体の解体に手を付けられた。しかも真夏の熱射が照りつける過酷な環境下。
2人で丸一日かけてなんとか終わらせたものの、配慮に欠けた工程だったと蜂須賀さんは反省した。営業と職人の考えの乖離に気づいたのだ。
「考えの甘さに気付かされました。職人さんと一方的な関係ではなく、持ちつ持たれつの関係性でいられるようにしなければと改めて感じました」
以降、蜂須賀さんは工程を組む時は必ず職人に相談するようになった。
さらに、わからないこと・できないことは、身をもって知ることで成長できると考えた蜂須賀さんは、積極的に現場の手伝いをするようになった。
「『自分でできる現場監督は重宝されるぞ』と、職人さんに言ってもらったことも後押しになっています。現場を知ることで、的確な指示を出せるようになりたいです」と蜂須賀さんは話す。
体感・想像してもらい納得いくまで悩む
蜂須賀さんは、プランや商品選定においても、メリット・デメリットを施主が実感できているかを重要視している。
例えばトイレリフォームで、介護を準備したいという場合。施主をトイレに座らせて、手を手すり代わりにつかんでもらいながら、介護イメージを膨らませる。
「理論的に数字や商品を説明していくより、本人が体感するとが何よりわかりやすいんです」
体感できない時は、納得いくまで想像してもらう。ある時、吊り戸棚の高さに悩んでいた顧客がいた。天井付けにして清掃性を高くするか、低くして使い勝手を高めるか、どちらを優先すべきか決めきれずにいた。
もともとあった吊り戸棚に、使わないものが詰まっていたのを、蜂須賀さんは知っていたため、清掃性を優先すべきと考えたが、施主に納得して決めて欲しかった。
そこで蜂須賀さんは、施工までの期間、生活のなかで施主に使用イメージを想像して過ごしてもらうことにした。
「即決させてしまっては後悔しかねないと思いました。天井付けで毎日の掃除が不要になる方がいいか、掃除をしてでも使いやすい収納にするか。すごく真剣に悩んでくださいました」結局ぎりぎりまで迷った末に、天井付けにすることに。納得のいくかたちになり、非常に喜ばれた。
リーダーとしてもっと知識を蓄えたい
店長候補の蜂須賀さんは、来年には店舗を引っ張り、スタッフをまとめられるようにと研鑽を積んでいる。
店長職になることに対し、はじめは消極的だったが、加盟しているLIXILリフォームショップの店長育成塾に参加したことで意識が変わった。
「他の地域で働く同じような立場の方に会ったことで、刺激を受けました。大変だけど目標をもって頑張っている仲間の姿を見て、自分も成長したいとモチベーションがあがりましたね」
今は、インテリアコーディネーターの資格取得に向けて勉強中。忙しい毎日ながらも、時間をつくって少しずつ確実に知識を蓄えている。
▲蜂須賀さん愛用のアイテム。iPad、靴べら、さしがね。レーザー測量計。靴はかかとが踏まれていたり、汚いと印象がよくない。きれいな靴をキープできるように、靴は3日に1度は磨き、アルミ製の靴べらを持ち歩く。
▲いつも鞄に忍ばせている、奥さんからもらったプレゼント。疲れた時の支えになっている。
リフォマガ2023年7月号掲載
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