真似したい合わせ技提案~温熱環境、耐震性、家事動線。3つの性能アップを必須で行う

顧客満足度爆上げ!
真似したい合わせ技提案

施主の要望にプラスの提案をし、期待値を超えることで顧客満足度は劇的に上昇する。また、家具提案や点検などとリフォームを組み合わせるという合わせ技でも、他社から抜きん出ることが可能だ。5つの異なるタイプの合わせ技手法を紹介する。



温熱環境、耐震性、家事動線。3つの性能アップを必須で行う

大規模改修の際に、建物自体の性能アップを必須で行うようにしているのが、後藤組設計室の後藤智揮さんだ。現状に慣れ、住み手が気づかずにいても、改善できると知れば直したいと思うもの。減築や施主参加型など、顧客にフィットする合わせ技も併用する後藤さんの手法を、事例から紹介する。



気づいていないことまで考えてあげるのがプロ

要望の有無にかかわらず、温熱環境を整えること、耐震性アップ、家事動線の短縮化は、リフォームにおいて必ず配慮するという後藤さん。

「現状に慣れてしまい気づいていない方も多いのですが、温熱環境は暮らしやすさに直結するのでとても重要です」。住んではじめて「起きてすぐに暖房を入れなくても良くなった!」などと、そのメリットを体感し、感動してもらえることも多い。

サッシの断熱でよく採用するのがハニカムスクリーンだ。既存の窓に設置することで断熱性能を高められるほか、遮光やサッシを隠すことによるデザイン性アップも期待できる。「内窓だと別にカーテンやブラインドを付けなくてはならないのが、これ1つで済ませることができるのです」。

目に見えない躯体の耐震補強や、作業効率を考えて動線を整えることも、プロならではの提案と言える。

後藤さんはこの3つにさらに合わせ技を加えることもある。



減築や施主参加型など顧客に合わせた手法も

事例1は、2階建て4LDKの親の家を引き継ぐリフォーム。施主からはアイランドキッチン、車を2台置きたい、ゆっくり暮らしたいという要望があった。

そこで後藤さんが提案したのが減築だった。あえて階段などを減築することで、暗かったリビングが光あふれる空間に生まれ変わった。併せて外空間が広がり、車2台もゆったりと停められるようになった。細切れだったLDKをつなぎ、中央にアイランドキッチンを置いたことで、減築を感じさせない伸びやかな間取りも確保している。

事例2も、縁あって平屋の家を手に入れてリフォームした例。昔ながらの分断された間取りを大胆に変えて温熱環境を整えたほか、特徴的なのが施主参加型で進行したことだ。

後藤さんは施主家族と、近郊の飯能産の木材を見に行き、左官職人にワークショップをしてもらった。「思い出になるのと同時に、つくり方を理解して施主自身がメンテナンスをできるようになりました」。



事例1

築31年、45坪4LDKの戸建て住宅を親から引き継ぎ、夫婦+子ども1人の3人家族のための家にリフォーム。「ゆったり暮らせる家」をコンセプトに、あえて減築をすることで、光が入り込み使いやすい間取りに生まれ変わらせた。


《合わせ技 1》
断熱を徹底して温熱環境を整える

床、壁、天井に断熱材を隙間なく入れて、家全体を断熱して温熱環境を整えた。アルミサッシは既存のままだが、リビングの掃き出し窓など大通りに面した開口部には、内窓とハニカムスクリーンを付けることで、断熱と遮音を実現している。

▲間に空気を含むハニカム構造で断熱する「ハニカムスクリーン」


《合わせ技 2》
金物による耐震補強を施す

後藤さんは大規模改修の場合は必ず、躯体の補強も検討する。「どの程度の耐震工事が必要かは開けるまでわからないので、予め予算取りしておいて、解体してから改めて見積もりを出すという形で進めます」。


《合わせ技 3》
減築でリビングに光を入れ車2台の駐車スペースも確保

あえて階段の出っ張った部分や、1階の縁側と2階のテラス部分を減築し、暗かったLDKに日差しが届くようにした。減築によって外空間が広くなり、施主が希望していたキャンピングカーと通勤用の車の2台分の駐車スペースも確保できた。


《合わせ技 4》
細切れだったLDKをひと続きの回遊動線に

空間が分かれ使いづらかったリビング、ダイニング、キッチンは、廊下を取り込んだ東西に伸びやかなひと続きのLDKに間取りを変更した。キッチンを中心とした回遊動線上にパントリーや他の水回りも配置。



事例2

中廊下を挟み、パブリックな二間続きの座敷と、プライベートな寝室と台所に分かれた、昔ながらの間取りの築30年の平屋。現代の暮らしに合わせた間取りへの変更と、温熱環境を整えることが新たに住む施主の希望だった。


LDKを中心に据えた現代の間取りにチェンジ

▲家の中心に南の庭に面したLDKを据えた間取りに変更

▲キッチン→トイレ→洗面脱衣兼家事室→勝手口と、一直線に動線がつながっている

▲既存のままの形で残した縁側は、ハニカムスクリーンを新設して断熱性能を高めた


《合わせ技 5》
施主参加で思い出づくり&メンテナンス法を伝える

▲左官職人に左官のワークショップをしてもらい、施主自身がペンキ塗りも行った

▲近郊の飯能産のヒノキを床材に採用し、施主と共に産地見学へ。材料や施工法を知ることは、メンテナンスを学ぶことにもつながる




お話をうかがったのは…

後藤組設計室 神奈川分室(神奈川県川崎市)後藤智揮さん

1982年北海道生まれ。京都大学工学部建築学科、同大学院を修了後、建築商会、植本計画デザインに勤務。2013年に後藤組設計室を開室。気兼ねなくつかえる素直な建築や空間を、木にこだわりながら創る。一級建築士。



リフォマガ2022年9月号掲載



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