社員がグングン育つ会社の新人営業の指導術
4月は新人社員を迎える季節。新人は元より、初めて後輩を持つ社員にとっても大きな成長のチャンスだ。指導する側・される側、双方のやる気を引き出し、能力を高め合うためにはどのように向き合えば良いか。研修内容やコミュニケーションの取り方など、互いに好影響を与える社員教育の方法を聞いた。
7ヶ月の座学研修で定着率UP
山商リフォームサービス(東京都足立区)
フルリフォームを中心に、首都圏で12店舗を展開する山商リフォームサービス。2020年はコロナの影響で、従来の週1回の研修も満足にできないこともあり、新人の定着率が落ちたという。そこで2021年入社の新卒社員から、新人育成の方法を大きく変えた。それまで座学研修は毎週木曜、計3ヶ月のみですぐ店舗配属だったが、3月後半の入社から10月半ばまでの7ヶ月に拡大。その間、新卒社員は毎日9時から17時まで研修を受けた。
「数年前から座学研修を充実させる準備を進めていたので、ちょうどいいタイミングでした」(仲宗根さん)。結果、8人いる昨年の新卒社員は1人も辞めていない。
本社に新卒社員を集め、ビジネスマナーや会社概要から教えていく。同社では4つのエリアに営業と施工監理それぞれのマネージャーがおり、座学研修は8人が4〜5日ずつ担当。営業や施工監理の現場への同行、積算、業務上で用いるソフトの使い方などを指導する。役員からは社員としての心構え、ブロック長からはセールストークなどを教える。
中富さんの心に残っているのは、「会社とは何か」を教わった研修だ。新卒だけで会社を立ち上げる設定でワークショップを行い、組織の仕組みを学んだ。「一人ひとりが自分の役割を理解して、全員で協力しないと会社は動いていかないと実感しました」と振り返る。
また、メーカーショールームで商品知識を高める研修も行った。TOTO、リクシルなど8社ほど、各社2、3回ずつ実施。商品解説とは別に会社の特徴やカタログの読み方、製品の組み立て方などを、メーカーの営業と相談して作ったオリジナルのカリキュラムで進めた。「実物を見ることで、店舗配属後、自信を持ってお客さまにお勧めできました」(中富さん)。
同行で積極性と計画性養う
10月半ば以降に新入社員は各店に配属され、先輩の現場に同行する。年明けからは洗面台のみ、単品の取り換えなど小さな工事から徐々に1人で担当するようになる。研修で商品や営業についてなどの知識を身に付けていることから、「配属された時の不安は少なかった」と中富さんは語る。
教育担当は固定せず、店舗の先輩全員で新人を指導している。新人自らが同行したい現場を決め、先輩社員に依頼する。毎週末に1週間ごとのスケジュールを店長に提出、前週の振り返りもしつつ、行動方針を確認する。中富さんのいる町田店では先輩は5人。どの先輩のどの現場か、選び自らお願いするには積極性が欠かせないと中富さんは語る。「1週間単位で決めるのは大変です。ただ、これまでは待っていれば教えてもらえたけど、自分から動かなければいけない、という意識になりました」。
自らタイムスケジュールを組み、上長に提出・修正を経て実行、報告することで計画性が養われる。プレッシャーなくじっくり学んでもらうため、入社から1年は新入社員には予算を持たせない。3月半ばまでは営業も施工も、どちらの業務にも平行して携わらせる。合わない業務に配属しないよう、実務を経験してから本人の希望も加味し、上長が総合的に見て判断する。こうした戦略で定着率向上を狙う。
既存社員のレベルアップも座学で
取材日はちょうど別室で積算の研修が行われていた。段階ごとにレベル分けし、工務担当の役員が教える。全員がパソコンを持ち込み、実際に積算を行いながら学ぶ。既存社員向けの研修も業務時間内に不定期に行われており、本社に対象社員を集めて実務の内容をマネージャーや役員が指導することが多い。仲宗根さんによれば、今後は中途入社の新入社員に対する教育システムを整えていきたいという。
「研修の枠に収まらない知識付けたい」
中富さんは最近、キッチンの取り換え工事でホームセンターと比較されて受注できなかったという。メーカーごとの比較については研修での知識もあり自信を持ってお勧めしたが、「ホームセンターにまで目が行っていなかった」と話す(中富さん)。研修の枠に収まらない知識をつけていくのが今後の課題だという。
▲計画から報告まで一枚で行う
お話をうかがったのは…
山商リフォームサービス(東京都足立区)
町田店 総合職 中富聖也さん
業務部 広報課 仲宗根直子さん
リフォマガ2022年4月号掲載
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