春は塗装で稼ぐ!繁盛店の売上アップ術
住まいの美観を保ち、建物を長持ちさせる塗装リフォームは安定した需要があり、コロナ禍においても影響が少ない領域だ。そのため、新たに塗装事業に参入するリフォーム会社も増えている。
気温や湿度が安定して工事がしやすいこの春、塗装リフォーム提案に力を入れてみてはいかがだろうか。5社の繁盛店を取材し、現地調査のポイントや見積書のつくり方、プレゼン法、集客術、ショールーム活用法などの最新ノウハウを紹介する。
塗装専門事業部を設けて成約率が2割→7割に大幅増!
年間400件もの外装工事の問い合わせに対応が追い付かず、多くの受注機会を失っていたという桶源住興。そこでグループ会社のHOME CREATIONS内に塗装専門事業部を設置。専属スタッフを置き、高品質な工事を提供できる強力な体制をつくり上げた。3年で事業部売上2億円を達成した手法に迫る。
専属の営業担当者によって迅速な対応が可能になった
明治41年創業、愛知県豊田市で100年以上の歴史を持つリフォーム会社の桶源住興を母体とし、ワンストップリノベーションを行うHOME CREATIONS(以下、ホームクリエーションズ)。3年前、ホームクリエーションズ内に梅村知由社長がさらに設けたのが、塗装専門事業部のペイントスタジオだ。
当時、桶源住興では年間400件の外装工事の問い合わせを受けていた。だが、受注するのはそのうちの約80件、成約率はわずか2割ほどだった。それもそのはず、外装工事のことは外注の職人に丸投げ状態で、見積書提出まで2週間もかかっていた。相見積もりが当たり前の世界で、多くが他社に流れていったという。そこで、外装工事の成約率アップのためにつくったのが、ペイントスタジオだった。
現在、ペイントスタジオには専属の営業担当が3名在籍する。重視するのはスピード感。営業担当自身が現調を行い、3日以内に見積書とプレゼン資料を提出する。体制が一変し、ペイントスタジオ立ち上げから3年で、ホームクリエーションズでは年間300件の外装工事を受注し、事業部売上2億円を達成した。
工事内容の説明まで兼ねる詳細な見積書
梅村社長が力を注いだのが、誰がやっても同品質になる営業システムの構築だ。まずは塗料などの「主力商品」を決め、コスト面で問屋や職人に協力を求めることで、塗装専門店と互角に勝負できる価格設定をした。それと同時に職人とは年間契約し、自社職人のような扱いにして、塗装品質の維持にも努める。次に計50枚にも及ぶ「プレゼン資料」と「見積書フォーマット」を構築した。プレゼン資料は写真やイラスト、図などを多用して、感覚的なわかりやすさを重視したものだ。
見積書フォーマットには、商品の特性や施工法までを記載。さらに備考欄によく聞かれる質問の回答を先回りして書いている。つまり、工事内容の説明までを兼ねてしまう見積書なのだ。
新人の営業担当が打ち合わせで説明不足になったとしても、自ずとこの2つの資料がフォローしてくれるシステムとも言える。実際に、2021年春入社の岩川楓さんと石田将大さんも、「資料作成やプレゼンでは、充実した資料があるためあまり苦労しなかった」と口を揃えて話す。
多数の塗装事例をこなし短期間で一人前の営業に
見積書フォーマットに寸法さえ正確に入れれば間違いは起きにくい。ということは、裏を返すと現地調査の正確性は必須だ。ホームクリエーションズでは先輩営業担当に付いて実地で学び、実践することで現地調査の仕方を習得していく。
「入社当初は寸法の測り忘れなどのミスもしてしまいましたが、月20件の外装工事に特化した現調を2人でこなしていく中で、短期間で慣れることができました」と石田さんは話す。専門部署を設けるメリットはこんなところにもあるのだ。
現調にかける時間は30分程度。全景、付帯部、劣化部分、塗装できない部分、壊れている箇所など、隅々まで写真を撮る。既存写真さえあれば、後でわからなかった点を先輩や職人などに見せて尋ねることもできるし、工事で壊したのではないかといったクレームを防ぐこともできる。
専用ホームページやロゴ、ユニフォームの作成、ショールーム展開など、ブランディングにも力を入れる。「安いからではなく、ペイントスタジオにお願いしたいと思わせるようにしていきたい」と岩川さん。若い世代にも訴求すべく、現在ホームページもスタイリッシュなデザインへとリニューアルを進めている。
充実の「プレゼン資料」の一部を公開!
文字は極力減らし、イラストや写真を使うなど、わかりやすさを追求したプレゼン資料の中身を紹介する。
1. 外壁塗装工事の全体の流れ(図)
問い合わせ→建物診断(現地調査)→見積書提出→検討(打ち合わせ&調整)→契約→色決め→着工→工事中の体制→完工検査→定期メンテナンスと、問い合わせから完工後のメンテナンスまでの全工程を図で示す。
2. 契約から引き渡しまでの流れ(図)
1と同様に図を用いて、契約から引き渡しまでに特化して、より具体的に説明。契約→工期確認→色決め→着手金→近隣挨拶→足場設置→塗装工事→完工検査→足場解体→完工金。この流れを知るだけで顧客の不安感は軽減する。
3. HOME CREATIONSで使用する外壁塗料一覧
各グレードの主力商品5種類を一覧で紹介。顧客は表を見て比較しながら検討できる。目的や予算によるが、中間に位置するハイブリッド、フッ素、無機という3種の塗料で見積書を出すことが多い。
4. 注意したい業者の見極めポイント
顧客が不利益を被らないように、注意すべき業者の見極め方も提示。これがHOME CREATIONSは悪徳業者ではないというアピールにもなり、信頼を得ることにもつながる。
5. 現調時にチェックする付帯部の図解
外壁と屋根以外に塗装する付帯部について、家の図解を用いて説明すれば顧客の理解度が高まる。塗装をしない部位も明確になり、後々「塗っていないじゃないか」と言われるようなトラブルも避けられる。
6. 屋根+外壁+ベランダは必ずセット提案
せっかく足場を組むので、外壁だけでなく屋根工事とベランダ防水も必ず一緒に提案する。資料には工事過程が具体的に伝わる写真を多用。最終的には、全体の7割程度がセットでの依頼になるという。
7. 内装・設備リフォームの提案
併せて行うことをお勧めする、給湯器や水まわり、クロス等のリフォームメニューも用意。現調時に給湯器の状態をチェックでき、塗装と給湯器交換のタイミングも重なりやすいため、特に給湯器は採用率が高い。
8. 外装・外構リフォームの提案
玄関ドア、門まわり、テラス、駐車場など外装・外構リフォームメニューも1枚で構成。「同時施工で通常リフォーム工事より20万円以上お得に⁉」「LIXILコンテスト1位」といったキャッチの工夫が光る。
説明不足を補う「見積書フォーマット」
プレゼン時のもう1つの柱、見積書も細部までつくり込んでいる。
見積書の備考欄で疑問に先回りして回答
商品名や数量以外に、塗料の耐久年数や保証年数までが記載されたオリジナルの見積書フォーマット。特筆すべきはほとんどの項目でテキストの入った備考欄。実はこの備考欄で、顧客に聞かれそうなことに予め答えているのだ。
七つ道具でぬかりなく現調
レーザー計測器、高所カメラ、ドローン、サーモグラフィカメラ、打診棒、伸縮梯子、コーキング材という七つ道具(写真は一部)を携帯して初訪問。道具を駆使して念入りに現調を行う。コーキング材は常に持ち歩き、雨漏りなどはその場で営業担当が直してしまうという。
最新システムの導入や紹介にも力を入れる
スマホによる案件管理で効率化を進めるHOME CREATIONS。施主に対してもLINEによる施工進捗配信を行い、リアルタイムの情報共有によって安心感を与えている。年配の顧客が多いこともあり、紹介特典は5000円のグルメギフトや1万円のクオカードなどかなり厚めに設定している。
保証書を付けることで安心を担保する
体制+品質+保証の3つを整えて、自社の強みにすることが大切と語る梅村社長。HOME CREATIONSでは、前述の通り塗装に特化した部署で体制を整え、年間契約の職人を確保して品質を維持。そして、保証対象と免責事項が明記された塗装保証書を必ず付けている。
お話をうかがったのは…
HOME CREATIONS(愛知県豊田市)ペイントスタジオ 外装リフォームアドバイザー
岩川楓さん
トータルコーディネートを行う家具ショップ勤務を経て、2021年4月にHOME CREATIONSに入社。ペイントスタジオに配属される。一気通貫体制で、現場管理をしながら世間話をしたり相談事に乗ったりと、契約以降も施主と深くかかわれることが喜び。
石田将大さん
他業種の営業を経て、2021年4月にHOME CREATIONSに入社。当初、職人とのコミュニケーションに難しさを感じたが、半年を過ぎて慣れてきた。塗装工事は決して安くない工事なので、丁寧な仕事を心掛ける。完工後に施主に喜んでもらえるとやりがいを感じる。
リフォマガ2022年3月号掲載
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