リフォーム解体新書~凍害被害のサイディングを剥がしたら、壁の中が真っ黒

リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書

第18回 外壁リフォーム(後編)



ドキッとする“解体あるある”を集めました

「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。

そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。

外壁材でサイディング材が普及したのは1990年頃ですが、2000年を境にサイディング材の施工方法が大きく変わりました。変更前はサイディング材の裏に通気するための隙間を設けることが必須ではなかったのです。その頃施工されたサイディング材はすでに耐用年数を迎えていて、今後のリフォーム計画を立てる時期に来ていると言えるでしょう。事例4のように、外壁の傷んだところだけを張り替えるつもりが、サイディング材を剥がしてみたら、その状態の悪さにびっくりするかもしれません。建築時期を把握しておくなど、建物に潜む懸念材料を押さえておくことが大切です。




《事例4》
凍害被害のサイディングを剥がしたら、壁の中が真っ黒

外側からの雨水と内側からの湿気のダブルパンチ?

凍害で傷んだサイディングを一部張り替える工事で起きた話です。その家は1997年に建てられた木造一戸建てで、築25年。凍害が起こりやすい寒冷地で、今回はボロボロになった部分だけ張り替えることになり、解体作業が始まりました。施主の話によると「この家は直張り工法のサイディングだから、塗装しても剥がれてしまう」と塗装業者に言われて、一度も塗装していないとのこと。そのためサイディング表面の防水性がなくなり、染み込んだ雨水が冬になると凍ってしまったと考えられます。ところが開けてびっくり!サイディングの内側も大分傷んでいて壁の中が真っ黒です。凍害はどうやら塗膜の劣化だけの問題ではなさそうで、とりあえず工事を中断しました。


【解決策は?】今回は部分補修でも、壁張り替えかカバー工法の提案を

凍害の被害は、サイディング材に染み込んだ水分が凍結と融解を繰り返すことで起こる劣化症状です。サイディング内に水分が進入する原因は、外側からの雨水と、内側からの湿気です。雨水は塗装をすることで防げますが、内側からの湿気はサイディングの内側に湿気を排出する通気層が無いと防ぎようがありません。この事例の場合、壁の柱や間柱に直接サイディングを打ち付ける「直張り工法」で、内側の湿気が籠っている状態です。またこのような状態のサイディングに塗装をすると、内側からの湿気で塗膜がはがれるリスクがあるため、塗装を断られることも多いようです。このままでは内側と外側から水分が進入し続けるため、サイディングがボロボロになってしまいます。壁内の構造材にまでダメージが及ぶ前に金属サイディングでカバーするか、サイディング全体を張り替える必要があます。サイディング材の耐用年数も考慮の上、今回は一部補修を行うにしても、将来的に根本的な原因を是正する工事を提案すると良いでしょう。


【どうすれば事前にわかる?】2000年より前の建物は要注意 土台水切りから隙間の有無を確認する

サイディングに水分が進入する原因を現場調査の時に確認しておく必要があります。一部補修の工事であっても、事前に隠れた必要工事を予測しておかないと、施主に適切なアドバイスをすることができません。サイディングに不具合が生じやすい「直張り工法」は、2000年以降は採用できなくなっていますので、まずはサイディングが張られた年の確認を。2000年より前であっても「通気工法」を採用している建物も多いので、通気層が設けられているかどうかを確認します。イラストのように、基礎の上にある基礎水切りから千枚通しのような細い道具を入れ、サイディングの裏に隙間があれば、通気層が設けられている「通気工法」で施工されていると判断できます。

▲千枚通しの他、コンベックスや指でもOK



[用語解説]凍害

凍害は主に寒冷地域で発生するサイディングの劣化現象です。サイディング内部に染み込んだ水分が冬季に凍って体積が増えると、サイディング材の塗膜が膨らんだり、亀裂がより深くなったりする現象が起きます。暖かくなって凍った水分が溶けると、大きくなった膨らみや亀裂にさらに多くの水分が進入します。このように毎年水分の凍結・融解を繰り返すとサイディング材が劣化して、しまいにはボロボロになってしまいます。イラストのようにサイディング内部に水が進入する経路は外側からの雨水と、内側からの湿気です。外側は塗装や亀裂の補修をすれば防ぐことができますが、内側は湿気を逃す通気層を設けないと問題を解決することはできません。

▲凍害の原因となる水分の侵入経路(直張り工法の場合)



リフォマガ2024年10月号掲載



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