おうち時間が増えたいま、インテリアの重要性は高まっている。デザイナー・インテリアライターの土橋陽子さんは、「インテリアは、作業しやすい家事動線や居心地をつくる機能があり、少しの工夫で過ごす時間を変えるもの」と話す。
▲デザイナー・インテリアライター 土橋陽子さん
東京都在住。日本女子大学住居学科を卒業後、イデーに入社し定番家具の開発に携わる。その後10年間の専業主婦を経て、2012年から親子インテリアワークショップを開催。2017年には自身がデザインした、こどもが読みたくなる時計「ふんぷんくろっく」がグッドデザイン賞を受賞。現在、ワークショップの開催や「ふんぷんくろっく」のブランディング、インテリアの連載を手がける。モンテッソーリ教育の教師養成講座の勉強中。大学生と高校生のママ。
体験が幸せな時間をつくる
「部屋のフォーカルポイント(目を引く場所)や色の割合などはどうでもよくて、その人がどう暮らしたいかが幸せの秘訣」と話すデザイナー・インテリアライターの土橋陽子さん。
インテリアショップ「イデー」で培った経験や主婦目線を活かし、現在、年1回のワークショップやデザインした時計「ふんぷんくろっく」のブランディング、複数の連載を手がける。
土橋さんは、2012年から親子インテリアワークショップを開催している。紙のシェードを使ったナイトライトを作るプログラムは、土橋さんの娘が幼稚園時代、一緒に折り紙をしていた時に生まれた簡単な工程に、ひと工夫凝らしたものだ。紙を折ったり描いたりして組み立てを楽しむ。
参加した人からは「『お前が作ったの?』ってパパがびっくりしてました」とメールが届く。「そんな家族の幸せな時間が流れ、子どもの自信になり、その子はナイトライトを消して寝るようになります。自分で暮らしはつくることができるんです」
▲土橋さんデザインの「ふんぷんくろっく」
無いインテリアは自らつくる
「ふんぷんくろっく」のデザインは、ワークショップでの出来事がきっかけになった。ワークショップでは大体、子どもは時間を気にせずのんびりと過ごすことが多い。対して、お母さんたちはその後の予定を消化しないといけないので、時間にカリカリすることも多いが、子どもには伝わらない。
ある時、子どもを叱るお母さんに「日頃、時計を囲んで会話をしてますか?」と軽く聞いたところ、お母さんに大泣きされてしまった。このお母さんも、余裕がなくなっていたのだろう。戸惑いながら土橋さんも反省し、「来年は子どもが読める時計を会場に用意します」と約束。しかし、「12進法と60進法」を関連づけて子供でもわかりやすく読めるアナログ時計が見つからず、それならばと自身でつくってしまった。
インテリアは暮らす人そのもの
「インテリアは、作業しやすい家事動線や居心地をつくる機能があり、少しの工夫で過ごす時間を変えるものだと思っています」。土橋さんはそう話す。どんな灯りや座り心地、相手からの見え方や距離、配置だと心地いいと感じるのか、一人一人がきちんと向き合うことで、インテリアは「暮らす人そのもの」を表すようになっていくと考える。
例えば、家の手入れの仕方もほこりを落とし掃除機をかけるのか、ロボット掃除機に任せるのかでインテリアのつくり方は変わり、選ぶ家具や配置も変わる。
土橋さんは「照明から取り入れるとよい」とアドバイスする。独身の頃、帰宅して最初に点ける灯りが、好きなテーブルに当たるだけで心が豊かになったという。灯りの光らせ方を工夫すれば暮らしは変わる。一人暮らしで寂しいと思うのならセンサー付きのライトを、平凡な天井照明なら布や紙を張ったりして陰影をつくる。
「相手から見えたとき、きれいに見えるのかをちょっと気をつけると、夫婦関係がよくなります」常に全力投球の土橋さんは、月2回のお茶の稽古が息抜き。心が無になり元気になれる。
「今後は野点用のカゴを作るワークショップを催し、公園で親子茶会を開いてみたいし、モンテッソーリ教育の知識を活かした『ふんぷんくろっく』のコンテンツを増やしたいです」
土橋さんの自宅を拝見
6年前にリフォーム。扉は子どものプライバシーを守りながら繋がれて、塗装ができるものにこだわる。色使いが素敵な趣のあるお部屋。
▲壁の色はCOLORWORKS のオリジナルペイントHipのシックな赤に
▲リビングの一角にある仕事コーナー。デンマークビンテージデスクに、ハーマンミラーのコズムチェア、MoMA限定のfunpunclockやvitraの物入れなど赤を効かせている
▲廊下にスウェーデン生まれのシステム収納「string poket」の新色セージを設置
▲リビングにあるお茶道具を収納しているライティングビューロー
リフォマガ2022年7月号掲載
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