「頼みたい!」と思わせる現場調査のコツ
短時間で正確に、漏れなく調べ上げることが求められるリフォームの現場調査。採寸や撮影など調査だけに終始せず、施主の要望が実現できるかその場で判断したり、現況をわかりやすく共有することで、一気に信頼を得られる。そんな差別化できる現場調査の工夫をリサーチした。
手間惜しまず老朽化見抜く
コスモスイニシア(東京都港区)
戸建てに無い共用部調査に注力
中古マンションの買取再販を手掛ける同社。首都圏の中古マンションをリフォームし、再販売している。築30年以上の物件も多い。
買取後、物件担当者がプランを作成。社内会議で決定後の買取から1〜2週間で、施工店の担当者とともに現調を行う。コロナ対策のため、共同で作業する時間は減らしているが同日に行う。住んでいる人がいないので、「元請けの工事に比べて時間をかけて丁寧に現場調査できます」(岸本さん)。
マンションと戸建ての大きな違いは共有部の存在だ。構造部分も共用部。老朽化したまま放置すれば、買い取った部屋だけでなく近隣住居にも影響する。管理組合に許可を取って補修することが多い。旧耐震の物件の場合は、構造専門のスタッフによる性能評価を実施。棟ごとリノベする場合、耐震対策も行う。
▲床の水平を測る。直床の場合は真ん中、二重床の場合は家具を置く部屋の端部分が下がりがち
▲現場調査の道具。水平器は今年から担当者全員が持つことにした。床の傾きは工事後に是正依頼があっても直すことが難しい。「中古マンションを買う時点で不安を持っているお客様が多い。我々が積極的に不安を解消したい」(岸本さん)
配管、断熱、漏水を重視
現場調査で重要視するのは3点。配管、断熱、漏水だ。
まず水廻りの配管をチェック。床周りの配管は、実際のルートは解体まで分からないが、現況図面をもとに通っていそうなルートを考えてプランニングする。直床の場合は配管の出口の位置を変更できないため、正確に計測してプランに反映する。
2つ目は断熱。旧耐震基準はじめ築35年以上の物件は外壁断熱がされていない物件が多いので、必ず目視でチェックする。エアコンスリーブなどから壁の内部を見て有無を確認する。同社の再販物件では、外に面する壁には断熱材を施工している。
3つ目のポイントは漏水だ。例えば、エアコンのドレン管。以前の物件で、エアコンのドレンが適切に排水されず壁の間に溜まっていたことがあった。以前のオーナーが行っていたリフォームにより、既存のドレン管を途中で切断していたためだ。現在では、先行配管ドレンを利用する場合は必ず通水試験をするようになった。
▲ルーフバルコニーのある物件、最上階は雨漏れの可能性が高い。サッシ下部から水漏れが起こることが多いので注意して目視!
▲エアコンスリーブ孔から壁の中を目視。断熱材の有無を確認する
▲キッチンの配管、梁の位置を測る。撤去予定の場合、キッチン自体のサイズは詳しく測らない
▲事前に作成したプランニングシート。現況次第では大きくプランが変わることも少なくない
グーグルフォームで見落とさない
トラブルとそれにまつわる検査内容の変化は、検査項目に反映する。検査項目はグーグルフォームにまとめている図面との差異や躯体、窓などジャンルごとに確認。例えば「窓」の中でも、ガラスとサッシを繋ぐゴムのような部分「ビート」が劣化していないか、ガラスに傷が入っていないかなど項目を細分化し、チェック漏れを防ぐ。
グーグルフォームに入力した検査結果は、自分のアドレスにメールで届くようになっている。「過去の案件でも検索しやすくなりました」(髙橋さん)。
お話をうかがったのは…
コスモスイニシア(東京都港区)
流通事業部 商品企画部 建築課 岸本 泰明さん、流通事業部 商品企画部 建築課 髙橋 晴彦さん
同社は新築マンションの建設も手がける。リフォームの場合にも新築と共通の設備を使うことで新築に近い品質で仕上げ、再販に繋げている。新築部門と一部の人材や技術を共有、構造チェックなどを通して買取再販物件の品質向上に資している。「マンションは共有部に制限があるので、リフォーム時は特に配管スペースに気を遣います」(岸本さん)
リフォマガ2022年2月号掲載
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