現場調査のコツ~住宅性能診断でリノベ可否判断 安心・快適物件のみ提案

「頼みたい!」と思わせる現場調査のコツ

短時間で正確に、漏れなく調べ上げることが求められるリフォームの現場調査。採寸や撮影など調査だけに終始せず、施主の要望が実現できるかその場で判断したり、現況をわかりやすく共有することで、一気に信頼を得られる。そんな差別化できる現場調査の工夫をリサーチした。



住宅性能診断でリノベ可否判断 安心・快適物件のみ提案

アルティザン建築工房(北海道札幌市)

要となる3つの住宅診断

主に30〜40代の一次取得者を対象に、中古住宅のフルリノベーションを行う。寒さの厳しい北海道で快適な暮らしを提供するべく、断熱・機密性といった性能向上に注力する。

扱う物件は築30〜40年が多く、初めにインスペクションを実施し、リノベーションできるか判断する。主な項目は3つ。まずは傾きがないか、水平器を用いレーザーで測定する。次に基礎の強度。金属探知機で鉄筋があるかを調べ、非破壊でコンクリートの強度測定ができるシュミットハンマーを使用し、強度を推測する。そして雨漏れの確認。目視に加え、床下の湿度測定、サーモグラフィーを用いて状況を把握する。断熱材は新たに入れ替えるため、現況の量は問題ないという。

1枚の報告書にまとめ、リノベーションの可否を顧客へ報告し、購入するかが決まる。以前、床下点検口のない物件で、外からは綺麗に見えたが基礎の劣化が著しく、鉄筋コンクリートで増し基礎を作り補強したことがある。工期の延長可能性は初めに伝えていたが、追加費用は同社が負担することに。以降、調査時に床下に入れず現況がきちんと把握できない物件は、リスクが高いのでリノベ不可としている。また、補助金やローン申請なども全面フォローする。さらに住宅履歴情報も保存する。

「お客様が長く安心して暮らせるために、不安の残る物件は案内できません。それらは解体、新築すべきです。物件探しが終わった段階で信頼関係が築かれており、競合はほぼいません」と新谷さんは話す。

▲縦横のレーザービームで床の水平、柱の垂直度合を測る

▲目視と機器を使って調査を進める

▲インスペクション後に顧客へ渡す報告書。簡潔にまとめ、リノベ可否を明確に伝える



体感&光熱費減が顧客理解深まる

断熱効果については初めに説明しない。口で性能・省エネと伝えても響かないからだ。パッと見で変化のわかるビフォーアフター写真、モデルハウスで体感してもらい、説明するのがセオリーだ。効果的なのが光熱費削減の可視化。オリジナルの計算式で暖房による消費電力を算出し、エアコン・ガス・灯油それぞれの施工後の必要金額を提示する。Ua値などより顧客へダイレクトに響く。「地球環境より個々の健康被害、費用、自分ごととして捉えてもらえるように伝えています」(新谷さん)

コロナ禍で、以前はなかった小規模リフォームも受けるように。ある顧客宅では壁にカビが生え、窓の隙間風に悩んでいた。送風機を用いて気密測定を行い、隙間相当面積を算出。外張り断熱しかなかったので内側の壁にグラスウールを充填で壁内の気流を止め、窓まわりは内側からコーキングを施した。すでに樹脂サッシでペアガラスだったため取り替えはしなかったが、劇的に環境が変化した。

同社が手がける物件スペックの平均は、Ua値0.28、HEAT20G2、耐震等級3、耐震性能の評点は1.5を超える。いずれはUa値0.24まで下げたいという。それでいて、解体+新築より3割安く提供するのが目標だ。

「耐震計算、リフォーム補助金やローン申請などを自社スタッフで賄い、外注分のコストを抑えることで住宅に還元できます」(新谷さん)

▲インスペクションの道具。シュミットハンマー、レーザー式水平器、鉄筋探査機、スケール、スキマゲージ、タイル浮き探査棒、作業用つなぎ服、軍手、懐中電灯、カメラなど

▲電磁波レーダー式鉄筋探査機。直接基礎に当てて滑らすように探る。鉄筋があるところで音とランプで通知



お話をうかがったのは…

アルティザン建築工房(北海道札幌市)代表取締役 新谷孝秀さん

機械工学科を卒業後、新築の設備工事に従事。家全体に興味を持ち、工務店の道へ。ハウスメーカー勤務を経て2011年に同社設立し、性能向上リノベーションの提供を推進している。



リフォマガ2022年2月号掲載



⇓⇓同じテーマの記事を読む⇓⇓

0コメント

  • 1000 / 1000