「壁紙の張り替えだけでも気軽に頼めるようになれば、家を好きになってリフォームするきっかけをつくることができます」と語るのは、フェイクグリーン専門店「いなざうるす屋」を運営するクサカベグリーン（東京都杉並区）の日下部有香社長だ。あらゆる壁に輸入壁紙を張った自宅やフェイクグリーンの写真をアップしている日下部氏のInstagramには2万人近いフォロワーがいる。
▲クサカベグリーン（東京都杉並区）日下部有香代表
新築買うも帰りたくないほど嫌いに
日下部氏は自宅の玄関から階段、リビング、寝室、トイレや洗面所まで家のあらゆる場所に動物やボタニカル柄などの輸入壁紙を張っている。「毎日良い家だなぁと思っています」と笑顔で話す日下部氏だが、壁紙に出会うまでは帰りたくないほど家が嫌いだったという。
日下部氏は2010年に新築の建売住宅を購入。壁・床・建具がすべて真っ白だった。最初は新築を楽しんでいたが、白いためどんどんと汚れが目立つようになっていく中で気持ちが変化していく。「掃除や片付けが苦手で、気力も技術もなかったのでメンテナンスができなくなり、段々と家が嫌いになっていきました」と語る。嫌いになった最初のきっかけは玄関。仕事柄荷物の出し入れが多いため、玄関の壁の汚れが特に目立ったからだ。「家に帰って一番最初に見るところが汚いので、もうあの家に帰りたくないと思うほど嫌になって。せっかく新築を買ったのに不動産を探すほどでした」と日下部氏。
そんな状況を打破したいと考えた日下部氏は「家を一新するためには壁紙を変えよう」と思い立ち、輸入壁紙専門店WALPAのワークショップに参加した。そこで「輸入壁紙の虜になった」という。「パイナップルと猿の柄の壁紙にフォーリンラブしてしまって。ここの壁に何を張ろう？ではなく、この壁紙をどこに張ろうと考えていました」と語る。
▲Before
▲After 玄関には猿が描かれた壁紙を張った
▲パイナップル柄の壁紙を張ったトイレ
壁が変わるだけで世界が変わった
ワークショップに参加して自分で張るのは無理だと痛感した日下部氏は、プロに頼もうと探し始めるが、そこで絶望感を味わったという。誰に頼めばいいかわからず、リフォーム会社3社に依頼するも「うちで扱っている壁紙以外は張れない」と断られる。そこで職人を探すことにして、ウェブで検索して片っ端から電話をかけた。そうして、ようやくあるクロス職人に出会う。「輸入壁紙を張ったことのない方で、どうなるかわからないよと言われましたが、もうそれでもいい！とお願いしました」と日下部氏。
職人の手によって壁紙が張られていく様を見たときのことを次のように日下部氏は振り返る。「大袈裟でなく、世界が変わりました。いきなり家を好きになったんです。壁が一面変わるだけでもこんなにも楽しく、生活が豊かになるのかと衝撃を受けました」。輸入壁紙を張ったことがなかったその職人も今では素早く張ることができるようになったという。
壁紙のリフォームを入り口にして、別の箇所のリフォームにもつなげられる可能性があると日下部氏は考える。
「汚い壁をどうにかしたいが始まりでしたが、壁紙を張り替えてから家が好きになってもっと楽しみたいと思うようになりました。家を好きになると、ほかの部分も変えたくなって、最初に壁紙を張り替えてくれた業者さんにほかのリフォームもお願いしたくなりましたね。壁紙のリフォームは家を好きになってもらうきっかけを作れます」と語る。
「私は運良く引き受けてくれる職人さんと出会うことができましたが、私と同じように壁紙を張りたいと思った人があの絶望感を味わってほしくないです。小さな範囲でも施工が気軽に頼めるようになったらいいなと思います」
▲白いレンガ柄とボタニカル柄の壁紙を張り分けた洗面所
フェイクグリーンを楽しむコツ
フェイクグリーンの専門店「いなざうるす屋」を営む日下部さん。「本物のグリーンを育てられないけれど、グリーンのある生活に憧れている人に雑貨感覚で楽しんでほしい。フェイクグリーンは植物の偽物ではなく、雑貨です。」と話す日下部さんにフェイクグリーンを楽しむコツを聞きました！
偽物感が強い部分を隠す
葉っぱの裏や茎などフェイクっぽさが出やすい部分は、折り曲げたり、かごや鉢などの入れものに入れて隠す。鉢植え風にする場合には、新聞紙などを入れて固定するのがおすすめ。底上げをして自由自在に高さを変えられることもフェイクグリーンならではの楽しみ方。
湾曲をつける
ワイヤーが入っている部分は「曲げる・広げる・暴れさせる」ことができる。飾る場所を決めたら、その場所をよく目にする位置からのアングルを意識して形を整える。「植物は真っ直ぐに生えていません。リアルを想像しながら形作ります」(日下部氏)
リフォマガ2020年12月号掲載
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