住人の暮らし方のクセを見抜き 動線を考え抜いた収納を提案

新型コロナウイルスの影響による家庭の巣籠現象で、家の中の物が一時的に増えたり、掃除や整理整頓に力を入れたりする家庭が増えている。収納を考える事は快適な暮らしの第1歩だ。無闇に物を入れるスペースを増やすのではなく、限られた空間を有効活用した本当に使いやすい収納リフォームのノウハウを紹介していく。


狭さを克服する収納リフォーム~リノベる(本社 東京都渋谷区)~

住人の暮らし方のクセを見抜き 動線を考え抜いた収納を提案


リノベる 石岡多恵子さんの『収納リフォームのコツ』

1 見せる派か見せない派かを聞く

扉はコストになるので使い分けが大切。整理整頓が上手で1週間で棚の物を使い切るような人は、全てオープンでもいい(事例1)。

2 可変性を持たせ作り込み過ぎない

例えば、可動棚の収納に、パイプと棚の両方を設置できるようにすると、棚にもかける収納にもなるので、持ち物の変化に合わせられる。

3 持っているもの・既製品を生かす

既製品の棚や扉付き収納がぴったり納まる場を設ければ、他と統一感を持たせることができ、コストダウンにもなる。



可変性を持たせることで暮らしの変化に対応できる

リノベるのデザイナー、石岡多恵子さんが顧客に必ず確認するのは、収納の中の物を「見せる派」か「見せない派」か。扉を付ける=家具工事なので確実にコストアップになるが、「きれいに収納できないという人には扉が必要になります。使われていない物については、費用をかけてまで持っていくかをお伺いします」。

事例3のダイニング収納のように、中身によって扉の有無を半々にすることもある。「キッチンは扉付きで、子供用収納はわかりやすいようにオープンという分け方なども考えられます」。

つまり住まい方のクセを見分けて、適切な収納を提案するのだ。

時間が経つにつれ入れる物も変わるから、収納スペース内は作り込み過ぎずに可変性を持たせる。例えば2段のパイプに子供服をかけるようにしておき、大きくなったら1段するなど、施主が自由に変えられるようにしておく。



事例1 男性の1人暮らし

WICを洗面室に配置しコンパクトな動線に

2DKの中古マンションを雰囲気のあるワンルームにリノベーション。施主はひとり暮らしのOさん。予定より少し狭い延床面積38m²だったので、空間を最大限に生かすために、各スペースをパズルのように組み合わせて納めた。例えば、浴室の右隣にキッチン収納を配置し、玄関から洗面までの面を揃えている。


《洗面室》

洗面・脱衣室にクローゼットがあるので、洗濯乾燥→収納、入浴→着替えがスムーズに行える。


《玄関》

土間を広く取って自転車を置けるようにした玄関。オープン棚に靴をディスプレイ収納している。



事例2 母+本人(女性)+息子(高校生)

洗濯→干す→しまうを劇的に楽にするシステムを構築

築23年55.67m²の中古マンションをリノベーション。母親と本人、アドバイザーとして妹の3人が主婦の知恵を出し合ってプランニングを行った。間取りはオープンな2LDKで、完全に独立した個室は、高校生の息子さんの部屋のみになっている。


《ウォークスルークローゼット》

裏で洗濯&室内干しして即収納

主に家事を担うお母様は、洗濯物を外に干す→取り込む→畳んで収納という作業が大変だった。そこで室内に物干し場を豊富につくり、お母様と施主で使う寝室横にウォークスルークローゼットを設けた。天気にも左右されず、室内で一連の作業が完結する。


《小上がり》

季節ものの布団が全て入る

リビングに設置した小上がりの奥半分は固定だが、手前の半分はキャスター付き。縦に並べると、壁を背もたれに大人数で座れる。季節ごとに替える布団類はまとめてここに収納。天井には物干しポールが仕込まれ、シーツなど大物も干せる場所。


《SIC》

オープンな棚にしてコストを削減

息子さん向けに、ここだけオールドアメリカンテイストに。可動棚の棚板をかけるシステムだけをつくり、棚板は施主自ら用意した。SIC奥に母親の買い物カートも置かれている。



事例2 夫婦+子供2人

楽しくお片付けでき常にチェックできる回遊の収納

築37年の61.48m²のマンションをリノベーション。テーマは子供たちが楽しく暮らせる家。あえて子供部屋はつくらずに、小上がりやロフト、フリースペースなど、居心地のいい遊び場所をあちこちに設けた。


ゆったりした間取りで大容量収納を実現した

3LDKを1LDK+ウォークインクローゼットに変更し、奥様念願の広いリビングを手に入れたH邸。空間の高さを生かして、リビングには小上がりとロフトをつくって延床面積を広げている。この2つは、昼間はフリースペースで、夜は親子4人のベッドスペースになる。また、小上がりの下はおもちゃやルンバ収納として活用した。

北側の部屋は、回遊式のウォークインクローゼットとシューズインクローゼットにつくり替えた。子供たちがぐるぐる回って遊べ、楽しくお片付けもできる。また、自然と持ち物全体を確認でき、しまい忘れを防ぐ効果も得られるという。


《回遊式収納》

外使いの物や衣類を集約

物置と化していた北側の部屋を、玄関→SIC→WIC→フリースペース→廊下と回遊できる収納に大胆に変えた。「回遊式にすると収納量は減ってしまうのですが、子どもにとっての楽しさを優先しました」(石岡さん)。


《ダイニング》

キッチンの背面収納を延ばしてスッキリ収納に

キッチンの背面からダイニングまで一直線に続く大容量の収納。ダイニングスペースでは半分は扉付き、半分はオープンな棚にして使い分けている。オープン棚は主に書棚として利用している。


《小上がり》

遊んですぐ片付けられるおもちゃ収納を設置

目線が高くなる畳の小上がりは子供たちにとって楽しい遊び場。遊び終わったおもちゃは、小上がりの引き出しにお片付け。小上がりの下にはルンバの充電基地も。夜には布団を敷いて夫婦のベッドになる。



お話をうかがったのは…

▲リノベる(本社 東京都渋谷区)デザイナー 石岡多恵子さん

京都にあるアトリエ系設計事務所で、主に新築のデザイナーズマンションの設計に携わる。2013年にリノベるに入社し、10月には丸7年になる。マンションの構造を熟知しており、その知識を生かしたマンションのフルリノベーションを得意とし、顧客からの信頼も厚い。



リフォマガ2020年7月号掲載



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