【THE SHOKUNIN】畳屋に相談してもらえたら、和室のリフォームはもっと面白くなります

【畳】葉本裕紀さん(52歳)

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは、100年近く続く畳店の三代目・葉本裕紀さん。日々の仕事をこなしながら金沢職人大学校に通い、畳の勉強を真摯に続ける葉本さんの仕事へのこだわりを紹介する。



畳について一から説明

祖父の代から畳屋を営み、葉本裕紀さんで三代目となる「葉本畳店」。「親父の頃は、近所から『いつものようにお願いね』と依頼が来て、値段もお任せのことが多かった。昔は信頼関係で商売が成り立っていたんだと思います。今は時代が違い、どのように畳替えをするか知らない方も多い。特に初めてのお客様には畳について一から説明しています」と葉本さん。

畳替えといっても、全部取り替えるのか、畳表を替えるのか、畳表を裏返して張り替えるのか色々な方法がある。「お客様が一生のうち何度畳替えをするのか、想像しながら話を聞くようにしています。将来フローリングにしようと思われている方には、費用を安く抑える提案をしたり、フローリングにした後も置畳や畳スペース、畳の小上がりを作る選択肢もあることを提案したりします」

葉本さんは、一級畳製作技能士はもちろん、インテリアコーディネーターや福祉住環境コーディネーターなど、様々な資格を取得。多角的に畳を提案できるよう、日々勉強をしている。

それには1つのきっかけがあった。畳についてもっと情報発信をしたいと考えていた27歳の頃、ある人から「経験も浅く資格も地位もない人が情報を発信しても、信用度がない」と言われたことがあったという。自動車メカニックの仕事から家業を継いだのは25歳の時。勉強しているつもりだったが、まだ足りないことに気がついた。

「ショックですが、それが起点だったかもしれません。資格取得のための勉強のおかげで、話の引き出しも増え、自分の話に耳を傾けてもらいやすくなっていると思います」

▲葉本畳店の二代目、葉本さんの父親の葉本和義さん。82歳の現役畳職人だ



伝統の技を仲間と学び合う

現在、葉本さんは、伝統的な職人技を伝える金沢職人大学校畳科の8期生として、月に一度、仲間達と研鑽を積んでいる。「本当に金沢に行くのが楽しみです。入学する前には想像できなかったほど、充実した勉強をさせてもらっています」と嬉しそうに話す。

今、課題として神社で使われる御神座を製作中。

「以前、他の方が作ったものを神社に納める手伝いをしましたが、神様が座られるところなので、神社の中では撮影ができないんです。もし、その畳を次に修復するとしたら何十年後になりますから、その時まで技術は継承されていないといけない。自分は次の修復には関わることができないと思いますが、次の世代に引き継げるよう勉強していきたいです」

▲葉本さん愛用の道具。左から畳表を留める「待ち針」、穴を開ける「鼠歯錐(ねずみばぎり)」、畳縁などを留める「縁引き針」、「小指し(こざし)」、「鉋」、「ブラシ」。畳表は元々泥染めされているので、ブラシをかけてから使用する。ブラシは霧を吹いたものを馴染ませる時にも使う

▲左から糸を切る「小包丁」、框を切る大包丁が使い込んで形が変わった「包丁」。藁床を切る「框(かまち)包丁」。長年研ぎながら使っているので、どんどん刃が小さくなっていく

▲手縫いをする時には、手のひらに「手当て」を付ける。「自分はずっとこの大きさですが、付けたまま他の作業もする職人は、もっと小さい手当を使っているようです」と葉本さん

▲金沢職人大学校畳科の課題として制作している、神社で神様が座る「御神座」



推薦の言葉

五十嵐工房 代表取締役 五十嵐 義知さん

仕事がきれいで速いのは、職人として当たり前。その上で、葉本さんの素晴らしいところは人間性です。

以前リフォーム工事で、葉本さんに畳の入替えを依頼しました。その部屋には重いテーブルを置くため、新しい畳が凹むのでは、とお客様は悩んでいました。

すると、葉本さんは厚みが3センチほどの脚を支える小さな畳を作ってくれました。これなら畳が痛まないので、お客様にはすごく喜んでもらえました。

こうしたことがパッと思いつくというのは、常にアイデアを考えているからだと思うんです。これからもずっと仕事を依頼したい、職人さんです。



葉本さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「琉球畳は半畳の市松敷きではありません!」

琉球畳というと、半畳で畳の縁がない畳を市松模様に敷くことだと思われていますが、正しくは「琉球表」(七島【しっとう】イ草と言う、断面が三角のイ草を割いて織ったもの)を使った畳のことです。一般的に「目積表の半畳市松敷き」をそう呼んでいるので、営業担当さんから「琉球畳」と言われたら、どのようなものかを確認しておかないとトラブルの原因となってしまいます。

普通の畳と琉球畳では織り方も全然違います。その違いを知ってもらった上で、お客様に提案してもらえると嬉しいです。


「こんな営業さんはすごい!」

お客様のかゆいところに手が届くような、細かな配慮ができる方は、すごいと思いますね。そうしたところは真似をさせてもらいたいと思っています。


「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

リフォームを提案される時、「一畳いくら」とすでに値段が決まっていることが多いのが、畳屋としては寂しいです。

畳は本当に色々な種類があります。種類や価格について、気軽に畳屋に話を聞いてもらえたら、もっと畳の部屋が面白くなると考えています。

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