伸びる会社の人材育成~「10カ月研修」で自信をつけてデビュー

採用、定着、教育…人が資本のリフォーム会社にとって、人材に関する悩みは尽きないもの。成功している会社はどんなことをしているのだろうか。ノウハウから運用のポイントまで、『伸びる会社の人材育成方法』を覗いてみよう。



若者の離職を食い止める
「10カ月研修」で自信をつけてデビュー

山商リフォームサービス(東京都足立区)

「20代の若者を採用し定着させる」を命題に、真剣に人事に取り組んでいるのが山商リフォームサービスだ。若者を育てるために始めたのが、10カ月の新卒研修。効果が出始めつつあり、「3年以内の退職率」が低下していると言う。


山商リフォームサービスが新卒採用を始めたのは2000年のこと。だが、せっかく入社した新卒が3年以内にやめてしまうケースが一時は多かった。十数年前の人材が残っているのが最後で、その後が空洞化してしまっているという状態に。

そこで「若者の離職を食い止める」を最大のミッションに、2021年から新卒の10カ月研修を開始した。

人事を担当する仲宗根直子さんは、「離職の理由は色々あると思いますが、一番の原因は『育てる環境が整っていなかったこと』」だと振り返る。それまでにも3カ月に及ぶ週1の研修を行っていたが、業務を進める中で知りたい情報を学べる機会が遅すぎたり、逆に教えるのが早すぎてイメージが湧かないなど「今一番知りたいことにマッチしていなかった」。

入社して10カ月間集中してしっかり学ぶと、そうしたミスマッチが無くなる。新入社員が自信を持って現場に出られるように変わったと言う。


研修のカリキュラム

【Point】研修期間も週1回店舗へ

入社時に所属店舗は決まっているので、週1回は店舗に出勤し実務に携わる。研修期間も、所属店舗のメンバーとコミュニケーションが途切れないようにするのがポイント。



会社設立のシミュレーションで自分のいる場所を理解する

受講者から人気が高いのが「経営理念ロールプレイング」の研修だ。毎週水曜日に、架空のリフォーム会社を設立するシミュレーションを行うのがその内容。

他の研修は、講義を受けて学ぶスタイルが多いが、この研修では講師はアドバイス役に徹し、自分たちで主体的に会社設立を目指してもらう。

市場調査を行い、社名を決め、ロゴを作成。会社HPも開設する。社長や役員を決めて会社概要や就業規則までつくる。取得すべき許可や保険も調べ、広告宣伝のための具体的な見積もりまでとることも。イニシャルコストやランニングコストの試算も行う。

自ら手と頭を動かしていくことで、会社がどうやってできているのか臨場感を持って学ぶことができる。自分がどういう場所にいるのか理解がすすむのだと言う。

受講者は産みの苦しみを味わいつつも、なかなかできない体験に意欲的に取り組んでいる。

最後には会長や担当講師、人事の前でプレゼンを行う。「SNSをつかった広告宣伝などレベルが高い」と感心するほど。


研修で成長していく新卒社員

▲実際の現場で学ぶ現地調査の研修

▲メーカーでの実機研修  


会社設立シミュレーションで受講者がつくったチラシ

会社設立のシミュレーションで新卒受講者が実際につくったチラシ。社名、写真、キャッチコピーまで考えられており本格的。

【Point】

会社設立シミュレーションでは、チーム編成も主体的に考える。受講者全員で1社つくってもいいし、チームに分かれて会社を設立してもいい。全て自由で、自分たちで考えて取り組んでもらう。



《人事担当に聞く新卒採用と研修運用のコツ》
10カ月研修は採用でもPR
安心できる企業だと伝えよう

仕組みができても、実際の運用がうまくいかないと意味がない。

人事担当の仲宗根さんに、新卒の採用と研修運用のコツを教えてもらう。


しっかり採ってしっかり育てる

新卒を採用し、育成することに注力する山商リフォームサービス。2023年には11人を採用できたが、目標は高く目指すは20人だ。

「まだ目標には達していませんが、一定数採用できているのは10カ月間のしっかりとした研修を謳っている効果が大きい」。

同社では採用活動として建築やデザインの専門学校に年間20~30校訪問している。その際に研修の説明をすると、教員から学生に安心な企業だと紹介してもらえるケースがあると言う。そのため、同社の商圏外のエリアからも応募がきている。研修は、育成だけでなく採用にも効くのだ。

2023年に採用した11人は、現在10人が残っている。若者が定着するようになって「会社が活気づいています」と、仲宗根さん。



お話をうかがったのは…

山商リフォームサービス(東京都足立区)

東京・埼玉・神奈川・千葉で12店舗を展開する総合リフォーム会社。社員数は102名(2023年3月現在)で、売上高は39億6000万円。



リフォマガ2024年5月号掲載


0コメント

  • 1000 / 1000