伸びる会社の人材育成~女性が働きやすければ社員が定着する

採用、定着、教育…人が資本のリフォーム会社にとって、人材に関する悩みは尽きないもの。成功している会社はどんなことをしているのだろうか。ノウハウから運用のポイントまで、『伸びる会社の人材育成方法』を覗いてみよう。



女性が働きやすければ社員が定着する

エンラージ(東京都八王子市)

女性にとって居心地のいい職場をつくって人材を定着させているのがエンラージだ。働きやすい環境をつくった上で、成長が確認できるチェックシートや毎週2時間のロープレで、営業力を磨いている。


「女性中心の会社にしたかったので、女性が働きやすい職場を目指しました」と、石井誠社長。

その理由は、工事の決定権を握っているのが夫婦であれば女性の場合が多いから。同性同士の方が話がスムーズに進み、工事もうまくいくと話す。

同社では顧客と直に接する営業兼プランナーは女性がつとめ、現場監督は男性が担う。まだまだ工事の現場は男性中心のため、全てを女性ひとりで背負うとハードになるが、「分業のチーム制にすれば、女性が負担なく働ける」。

また、業務時間は9時から18時で、残業もほとんどない。給与は歩合制ではなく固定給。具体的な金額は非公開だが、相場より高めに設定している。

こうした安定した環境で無理なく働くことができるため、産休明けに店長に復帰した女性もいるし、時短で営業兼プランナーに復帰した女性もいると言う。

「女性にとって居心地がいい会社は、男性にとっても居心地がいいんです」の言葉どおり、退職者は1年に1人いるかいないか。採用した社員がしっかり定着し、その上「想像以上に成長している」。

働きやすい環境は、分業のチーム制や待遇だけがつくっているものではない。教育方針、成長が見える化できる「チェックシート」、毎週2時間のロープレなどが効いている。

次ページからは、これらの具体的な内容について詳しく紹介していく。


「短所是正はするな」で社員が伸び伸び成長

人材教育がうまくいっていないと感じたら「まず着手すべき」(石井社長)と語るのが教育方針を定めることだ。

エンラージの教育方針は「長所伸展」。得意なことを伸ばしてもらい、苦手なことは無理して伸ばさなくていいという考え方だ。店長には口酸っぱく「短所是正はするなよ」と話している。この教育方針のもと、社員は伸び伸びと成長できる。

教育方針とあわせて、会社の空気づくりも重要なポイントになっている。エンラージには「7つの約束」と「社員の誓い」がある。例えば「人の悪口は言わない」「マイナスの感情はセルフコントロールする」など。これを徹底することで、エンラージの明るい社風を実現している。

同社の社員は実際仲が良く、支店間の対立もない。3店舗の合計予算が達成できたら、全員でお祝いの食事会を開催するなどしていると言う。



【Key Point】

チームワークを発揮する社風は「教育方針」「約束」「誓い」でつくる

長所を伸ばす方が成長が早い

「苦手なことを無理して伸ばすより、長所を伸ばす方が成長が早い」と石井社長。採用の時からこれが羅針盤になっており、面接では「この人の、いいところはどこだろう?」と考える。光るところを見出そうとするのが、石井社長のやり方。


社員も顧客も大事にする

社員の誓いが、行動指針になっている。「人の悪口を言いません」は、社員に対しても、顧客に対しても。悪口が飛び交う環境は雰囲気が良くない。悪口を言わないようにすれば、空気が良くなり社員同士が助け合うように。働く仲間もお客さんも大事にする。


例えば、人生は楽しいもの

7つの約束が、エンラージの経営理念。例えば「エンジョイ」。人生は本来楽しいもので、楽しくない時はどこか間違えているという考え方だ。例えば、つまらないと思った時、人のせいにしていないか? 楽しくないということは、それが理にかなっていないのではないかと考える。



【Key Point】

何をやれば成長できるか一目瞭然

教える側も、教わる側も迷わない

エンラージには、入社後にクリアするべき項目をまとめた職種ごとの「チェックシート」がある。

新人教育を属人化させず、何をいつまでにやればいいかを明確に。教育する方も、教育を受ける側も迷わせない。チェックを入れていくことで、進捗度も見える化できる。

チェックシートをつくったのは…

教える方も、教わる方も、何をクリアしていけば成長できるか分かる「チェックシート」をつくりました。教える項目を明確にしていて、1ヵ月10項目、3カ月で30項目をクリアすれば、3カ月で『半人前』になれるようにしています。職種ごとにこうしたシートをつくりました。(石井 誠社長)




【Key Point】

エンラージ流接客を磨くロープレは

店舗を閉めて、毎週本気の2時間

エンラージでは14年前、社員数5~6名の時から、毎週月曜日の午後2時間、全社員で接客のロープレを欠かさず行っている。この時間は他の仕事を一切忘れて集中する。今契約したいという顧客がいても、この時だけは対応しない。店舗も閉めて、「外出しています」の貼り紙を貼って本店に集まる。

「人が育つ、営業成績も上がる、3店集まってやっているので仲が良くなりチームワークがいい、など成果が出ています」

ポイントは場面を切り取るのではなく、通しでやること。例えば来店対応なら現場調査のアポイントをとるところまで、実際の接客と同じ時間をかける。

終わったら品評会を行うので、やっている側も見ている側も真剣だ。「自分だったらこういうふうに言う」などアドバイスを受けて、本人もまわりも「エンラージ流」の接客が分かってくると言う。

「お客さん役が上手でリアルだと、笑いが起きて盛り上がりますよ。真剣ですが、ピンとはりつめた空気ではありません」

シーンはいろいろ

来店した時の対応だけでなく、「見積もり提出から契約まで」など様々なシーンでロープレを行う。「顧客からアイミツ先の見積もりが出ていないので待ってほしいと言われた時の切り返し」などリアルに再現。

また、営業だけでなく現場監督も、例えば「近隣挨拶で粗品のタオルを持って5~6件まわる時」などのシーンでロープレを行う。

▲完了現場報告会の様子。モニタを使い詳しく共有



お話をうかがったのは…

エンラージ(東京都八王子市)

社員数19名、売上高7.8億円。女性主体の会社で、受注額の平均単価は400万円。2000~3000万円の全面リフォームも多く手掛ける。



リフォマガ2024年4月号掲載

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