【THE SHOKUNIN】職人同士のつながりでどんな仕事も工期を守る

【塗装職人】尾崎雅生さん(46歳)

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは塗装職人の尾崎雅生さん。施工管理を行うことも多い尾崎さんに、一気通貫で現場監督の役割を担う営業にも通じる、現場をうまく進めるための仕事術を聞いた。



職人同士のつながりで工期のピンチをクリア

尾崎雅生さんは1級塗装技能士、1級建築施工管理技士、職業訓練指導員など、数々の資格を持つ、塗装のエキスパート。そんな尾崎さんが仕事をする上で大事にしているのは「工期を守ること」だ。特に土日や夜間しか作業ができないオフィスビルの現場では、工期の遅れは許されない。そんな時は通常より多く職人を手配し、ピンチを切り抜けてきた。

困った時に来てくれる仲間がいるのは、塗装技能士の検定員同士のつながりが大きい。検定員は実技試験の会場の設営・監督などの業務を行う。「試験会場での動きを見るだけで、普段の仕事ぶりがよくわかります」と尾崎さん。仕事への姿勢が同じ職人同士が自然と集まり、互いの仕事を助け合う信頼関係を作りあげてきたことが、尾崎さんの力になっている。

▲この日の現場は店舗の内壁塗装。丁寧に下地作りをする尾崎さん


老害にならないよう自戒
若い人に技術を伝授

現在、仕事のエリアは鎌倉・藤沢・平塚周辺が中心。元請けの仕事が3割、リフォーム会社からの依頼が7割だ。独立する前に勤めていた塗装会社では職人の手配や見積もり作成といった、施工管理をメインに担当していた。独立後、再び現場に戻ったが、いつかは現場を引退し、施工管理に従事したいと考えている。

「その理由は、老害になりたくないからなんです。歳をとってくると腕は衰えるのに、口だけは達者になる。そうならないように、自分には『若い頃のようには体は動かないぞ』と自分に言い聞かせています。実際、若い職人の方が体力はあるし、目もいい。自分の体がまだよく動く内に、若い世代に塗装の技術を伝えていきたいと思っています」

▲尾崎さんの愛用の道具。左から皮すき、ホコリ払い用の刷毛、マスキングテープ等を押さえたりカットしたりできる「はりきりくん」、潰れたネジ等を外せるペンチ「ネジザウルス」、ペンキ・パテ等を削り落とすスクレーパー、差替式ドライバー。上はカッター。「ネジザウルスは小型のものが使い勝手も良く、腰袋に入れておくと便利です」(尾崎さん)

▲「これを使っているかどうかで、職人を見る目が変わる」と、尾崎さんが話す「はりきりくん」。これでテープを押さえることで、しっかりと圧着。ペンキの漏れがなく、安心して作業が進められるのだとか

▲今使っている腰袋は、ニックスの2段ポケットタイプ。以前は3段を使用していたが、厚みが出ると足場に引っ掛かる可能性があり、薄いタイプにしている

▲現場以外では、ペンキのついた服は着ないと決めている尾崎さん。自動車で移動する時も着替えたり、会社のジャケットを着用したりして、身だしなみを整える。「いつも服が汚れているという、塗装職人のイメージを変えたいと思っています」



尾崎さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こんな営業さんはすごい!」

以前、外壁塗装の工事で、価格や塗装方法まで細かく注文を入れる施主の方がいました。このままでは工事が進まないと、困っていたところ、担当の営業さんが毅然とした態度で、理路整然と説明し、施主の方を説得。営業はお客様の要求に応えるのが仕事ですが、理不尽なことにははっきりとノーを言ってくれ、非常に頼りになりました。


「施工管理として、気を付けていること」

施工管理する上で、気を付けていることは、人員手配をギリギリにしないこと。「この現場の職人は2人かな」と思っても、3人手配すれば早く終わります。お客様も喜びますし、自分もイライラしなくてすみます。

仕事でのイライラはお金が絡むことがほとんどだと、私は考えています。材料が足りなくなったり、人手がさらに必要になったりすると、追加費用が発生してついイライラ。でも、それは見積もりを作成した、自分の責任なんですよね。

なので、見積もりを作る時は、人件費や材料費に少し余裕を持たせるようにしています。見積もりを安くするために、来てもらう職人に負担をかけるようなことはしません。それがスムーズに現場を進めるポイントだと思っています。



リフォマガ2024年5月号掲載

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