「古いものと植物が好き」という松田尚美さんは、フランスのアンティークなどを取り扱う「BROCANTE」の店主だ。直感的に「美しい」と感じた古物にこだわり、自宅でも愛用している。今回は、アンティークの魅力や暮らしに取り入れるヒントを聞いた。
▲BROCANTE(東京都目黒区)店主 松田尚美さん
東京都出身。15歳から生け花を習う。大学ではインテリアデザインを学びながら、花の学校へも通う。卒業後、アパレル会社に就職し、25歳の結婚を機に退職。30歳までフローリストとして活動しながら、ガーデンデザイナーの夫と何度か渡仏。2004年にフランスのアンティークなどを販売する「BROCANTE(ブロカント)」を自由が丘にオープンした。2児の母。
▲エントランスを彩る植物に気持ちが安らぐ。夏にはエンドウやスイカも育てている。店内のドアや窓も、アンティークなものにあわせてシャビーな雰囲気に
ブロカントに魅せられて
路地を少し入ったところに、緑に囲まれたレトロな趣の「BROCANTE」がある。フランスのアンティークを中心に、店内は椅子や収納家具、ガラスの器が心地よくディスプレイされている。どれも品よく気取らないものだ。
店主の松田尚美さんは「アンティークにこだわらず、フランス全土から集めるシンプルでシックな家具や雑貨を扱っています。店名のブロカントの語源である『名もなき美しいガラクタ』に愛着を持っています」と話す。
ブロカントは、フランス語で古道具のこと。アンティークとまではいかないものの、長年にわたり大切に使われてきた食器や家具、生活道具などを指す。主に欧州の骨董品のことを言うことが多い。
BROCANTEは開店20年目。当初、ガーデンデザイナーである夫の造園事務所をつくる予定だった。「フランスに行って、家具や雑貨をよく買っていました。それらを、打ち合わせ場所に置く什器として使おうと思っていたのです」
しかし、自由が丘に素敵な物件が見つかり、「アンティークを買いたい」という依頼も多かったので、アンティークショップに急きょ計画を変更。ダイニングキッチンだった部屋の壁を取り払い、店舗スペースにリフォームして、2004年にオープン。什器にと考えていた家具などを販売することにした。
▲落ち着いた雰囲気の店内。どれもシックだが、懐かしさを感じさせる。2階は植物関連の日用品を扱っている
古いものほど良品が多い
今でも年に3~4回、フランスに出向き、家具や雑貨を買い付けている。
マーケットでは、アンティークほど古くはなく、農家の人に大切に使われていた古道具など、手の届く値段のものに出会える。「美しいものをいっぱい買って、ショップに来てくださる人に喜んでいただきたい」と松田さん。
フランスには3週間ほど滞在し、蚤の市で知り合った人の温かさ、壮大な景観、マルシェの新鮮な食材と、フランスの豊かな暮らしを堪能。気持ちをリセットして帰ってくる。
ショップに最近、「唯一無二の自分用の椅子が欲しい。1個いいものを買いたい」と若い男性客が来ることが増えた。お気に入りの品を、暮らしに1つ取り入れるだけで心が癒されるという。遠方から飛行機に乗って足を運んでくれるリピーターもいる。
「古いものほど丁寧に作られ、丈夫にできていて良品が多いと思います。丁寧に作られたものは、佇まいが美しい」と松田さんは話す。
お気に入りの古物を楽しむ
そんな松田さんは、気に入ったフランスの古道具を自宅でも愛用している。
椅子は、塗膜を剥がした木肌の明るいタイプを好んで使用する。アンティークの重さが軽減し、インテリアに取り入れやすい。料理好きの松田さんは、小回りの効く小鍋を重宝し、美しいプレートを日常的に使っている。古いガラス器も好んで集めて、花瓶として活用したりする。
とりわけ、風合いのある古い器と花の組み合わせに心惹かれる。「例えば口の広い陶器だったら、花のたおやかなラインが見えてきて、いろいろな発想が膨らみます」。余計なものがない空間に、古いスツールなど使って飾ると、器と花の魅力がグッと引き立つ。
コンクリート打ちっぱなしのモダンな部屋やカントリースタイルに、ポイントでアンティークを取り入れてもよく映える。
「自分が良いと思った古いものを楽しんでほしいです。例え多少値が張るものを購入したとしても、結果的に、大事に長く使うようになります。美しいものは、使うほどに風合いを増すように思います」と話している。
▲松田さんが愛用する古道具たち。プレートは落ち着いた色彩が好みだ
リフォマガ2023年10月号掲載
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