【THE SHOKUNIN】イ草農家さんのこだわりを伝えるのも僕の仕事だと思っています

【畳職人】田端太一さん(30歳)

今回登場するのは、若き畳職人の田端太一さん。職人として、材料にもこだわりを持つ田端さんの仕事術を紹介する。



畳替えは難しいからこそ腕の見せどころ

「畳の表替えは手間はかかりますが、言い方を変えれば腕の見せどころ。面白さだと思います」。

そう話す田端太一さんは「田端屋」の屋号で、畳と襖の張り替えを行っているタバタ(大阪府堺市)の三代目。畳の仕事は、新築の家に新品を入れる作業と、畳の表替えをする作業の2つがある。現場で一番気を遣うのは、表替えの方だ。畳は長く使っていると、畳同士隙間が開いたり、凹んでいるところが出てくる。時には畳と畳の間に、スマホがすっぽり落ちるくらいの隙間が開くこともあるとか。

さらに鴨居が少しずつ下がってきて、襖が簡単には取れないこともある。その場合は鴨居をあげる専門のジャッキを使って外す。

畳は持って帰って作業をする。現場でその都度はめ込んで寸法があっているか、確認することはできない。田端さんは畳にどのくらい隙間が開いていたかなどをペンでメモ。工場に戻り、メモを元に微調整を行い、張り替えた畳はピタリと和室に収まる。「もうピシッと入った時には本当に気持ちいいですね」

▲田端さんが手掛けた畳を入れた和室。ピシッと畳が収まっている



年に2回、イ草の産地に行き直接仕入れをする

田端さんは畳の材料にもこだわりを持っている。年2回は熊本のイ草の産地に行き、農家に話を聞いて仕入れている。「農家さんにもそれぞれこだわりがあって。畳表が全然違うんです。そのこだわりをお客様に伝えるのが自分の仕事だと思っています」と田端さん。

田端さんは一般の客から依頼を受けた場合は、なるべく国産の畳表を勧めている。「もちろん中国産でも良いものはあります。ただ、国産の畳表はきれいに飴色に焼けるんです。それはもう艶が出てきて長持ちするんですよ。安い畳表を選んで、『やっぱり、畳は長持ちしないから、フローリングにした方がいいわ』という発想になってしまうのは悲しい。材料へのこだわりも、職人として持っていたいですね」

「今後は和室に興味を持っている工務店さんと一緒に、畳屋だからこそできる、和室のプロデュースができたら面白いなと思っています」と田端さん。

「身近な存在なのに、畳のことをよく知らないというお客様も多い。畳のことをもっと知ってもらえるようHPやYouTubeなどを使って発信していけたらと思っています」



田端さんが愛用している道具

上は頭付巾尺と尺貫法の物差し。

中央右から渡り(ヒコーキ)/畳縁の幅を決める道具。形が似ているのでヒコーキ。

毛引き/同じく畳縁の幅を決める道具。毛引きは決まったヘリ幅でのみ使う。

右下から待ち針/畳床に畳表を仮留めする。

ヘリ引き/畳縁に折り目を付けたり、隅を形作る。

畳包丁/畳表や畳床を切り落としたりと、用途に分けて使い分ける。

木槌/敷き込み時に畳の高さを合わせるために叩く。製作時、糸を絞めるために

も使用。

折り目消し/畳表が産地から送られてくる際にできる、黒い折り目を消すローラー。

敷込鍵/敷き込んでいる畳を持ち上げたり、敷き込み時に使用



推薦の言葉

山岡工務店 社長 山岡 隆三さん

私と田端さんは中学校の同級生。仲が良くて、一緒に飲みに行く友達でもあります。田端さんは三代目ですが、私はいわゆる「町の工務店」の二代目。主にリフォーム工事を手掛けています。田端さんの素晴らしいところは、仕事を依頼したら、すぐに現場に来てくれるところ。それに仕事がとても丁寧なんです。リフォーム現場は建て付けが悪くなっていることも多くて、畳をきちんと収めることは難しい。それを田端さんはピタッと収めてくれるんです。

またお客様にも「この畳はこういう使い方をするといいですよ」と、畳に関することなら何でも教えてくれます。お客様にも田端さんはとても評判がいいんです。

うちの会社では、畳の仕事はすべて田端さんにお願いしています。他にお付き合いがある会社にも田端さんを紹介しています。いつも「いい畳屋さんを紹介してくれた」と言われるので、私も嬉しいです。



田端さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

お客様に畳面を提案する時に「国産がいいですか。中国産がいいですか」と一言聞いてほしいですね。中国産はお手頃ですが、持ちが悪いかもしれません。国産の場合は、減農薬で作られているので赤ちゃんが舐めても大丈夫なんです。畳は寝転がって肌に触れるものだから、そういうところに配慮して畳替えの提案していただけたらと思います。


「この営業さんはスゴイ!」

うちの工場に来て、畳のこと、イ草のことなどを勉強していかれた営業さんがいました。その知識をお客様への説明に活かして、良質な商品を販売しているのを見た時は、すごく勉強されたんだなと感心しました。



リフォマガ2021年10月号掲載

0コメント

  • 1000 / 1000