【THE SHOKUNIN】「職人商人」であることが理想のスタイル


【家具職人】冨浦幸耕さん(40歳)

家具職人として、桐箪笥のアップサイクルや古い家具の修復を手掛けている冨浦幸耕さん。家具職人としての確かな腕と、顧客の予想を超える斬新なアイデアで人気を呼んでいる。


※アップサイクルとは…

中古品や廃棄されるはずのものを、新しいアイデアでリメイクすることで、元の製品よりも価値の高いものを生み出すこと。


▲祖母の桐箪笥のアップサイクルの依頼。上下を分け、テレビ台へと生まれ変わった



桐箪笥アップサイクルのスペシャリスト

冨浦幸耕さんが運営する「エドライフ」(埼玉県さいたま市)は家具の製作・修理や販売を行っている。

依頼の7割は桐箪笥のアップサイクル。アップサイクルとは、使わなくなった桐箪笥を魅力的な家具に蘇らせること。冨浦さんには注文が数多く寄せられている。

冨浦さんの木工の作業は1日3〜4時間。「僕の場合、仕事の半分以上は考えること。本当にこのデザインでいいか、もっといい方法はあるのではないか、とずっと考えています」

「こうした方がいい」とひらめくと、すぐに顧客に連絡して承諾をもらう。最初の打ち合わせとはデザインが変わることもあるが、自分のアイデアだから、追加の費用が発生しても最初に決めた価格はそのまま。

さらに家具が完成するまで、冨浦さんは作業途中の写真を何回も送り、経過を報告する。「何工程も経て、家具が完成することを理解していただくと、価格にも納得してもらえます」と話す。

「僕はお客様と話がしたい。どうしたら要望通りのアップサイクルになるのか、答えを持っているのはお客様だから。単なる家具工場だと、下請けになってしまい、お客様と接することができなくなってしまう。お店を持って、自分でお客様と話ができることは、僕にとってはとても大事なことなんです」

外見はそのまま、中身をクオーツに変えた振り子時計も顧客からの修理依頼がきっかけ。とても喜んでもらえたので、製品化したところ、あっという間に売れた。顧客の声に耳を傾け、どうしたら一番喜んでもらえるのか。冨浦さんの頭は常にフル回転をしている。

▲金具の取り付け作業をする冨浦さん


職人でも商人であれ
自ら提案できる職人に

冨浦さんは以前勤めていた会社で「職人商人」という言葉を知った。単に家具を修復するのではなく、職人自らどんなことができるのか提案し、ビジネスに結びつける発想を求められる。「職人でも、直接お客様に営業できれば、もっと利益を上げられる。僕の周りにはそうした職人が増えています」と冨浦さん。これからの時代、職人が独立してやっていくには「職人商人」であることが理想のスタイルだと冨浦さんは考えている。


推薦の言葉

フィクサス 代表取締役 古賀照也さん

冨浦さんと知り合ったのはInstagramのフォローから。「こんな近くに面白そうなことをやってる人がいるなぁ」と思い、直接メッセージを送り会いに行くことにしました。

初めて会った時、冨浦さんのお店で5時間ほどおしゃべりをして意気投合。それからは互いに仕事を手伝ったり手伝ってもらったりしています。

冨浦さんのアップサイクル術は、他にはない発想とアイデアで、まったく未知のものに生まれ変わります。

「まさか桐箪笥がこんな風になるなんて」と誰も考えつかないことをやる唯一無二の存在ではないかと思っています。

昔の職人気質タイプではなく、フレンドリーでオープンな性格なので、お客様もコミュニケーションが取りやすいと思います。ぜひ一度お店に行ってください。魅了されること間違いないですよ。

▲古い桐箪笥から金具を取り、塗装を施して、別の家具に利用することも

▲当初は外側だけを塗装する予定が、内側も10cmほど塗り込んだことで、桐の白さが際立つ仕上がりに

▲冨浦さんが愛用している道具の一例。上はノミ代わりに使っている、スクレーパー。深く彫り込まない時などに使いやすい。下は最初にお世話になった親方からもらった玄翁



リフォマガ2021年9月号掲載

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