【THE SHOKUNIN】物語の風景を具現化するモルタル造形の技術

【左官職人】谷 梨夏さん

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは左官でも、モルタル造形のデザイナーとして活躍する女性職人だ。



物語の風景を具現化するモルタル造形の技術
「本物を観察し、イメージを頭に入れてから製作します」

モルタル造形で重要なのは「本物を見ること」

モルタルを使って本物そっくりに、石や樹木、レンガなどを表現する「モルタル造形」。テーマパークなどでよく見かける重厚な石積みや西洋風建物などに使われている技術だ。

左官工事全般を手がける八幡工業に勤務する左官職人の谷梨夏さんは、施主のイメージを明確にイメージ画に起こし、さらに忠実に立体へと再現するデザイナーでもある。谷さんが造形を製作する上で大切にしているのは「本物を見ること」。疑木の仕事なら、植物園に行って本物の樹木を観察する。写真などの資料を数多く見て、イメージを頭に叩き込んでから製作に向かう。

「木の根を表現するにしても、どこから伸びているか、どこに一番陽が当たっているかなど、ストーリーを考え、不自然にならないように気を付けています」と話す。

▲谷さんが手掛けた擬木

▲杉板本実型枠コンクリート壁の補修前と補修後



アート一家に育ち左官に出会い、才能開花

職人歴3年の谷さん。「職人としてはまだまだヒヨッコ」と言う谷さんだが、すでに造形モルタルや特殊塗装においては高い技術を持っている。実は谷さんの両親はデザイン系の専門学校の出身。谷さん自身も都立工芸高校のアートクラフト科で、ジュエリーなどの制作を学んだ。しかも三姉妹の内、姉と妹は美大出身というアート一家に育ち、ものづくりは身近な存在だった。谷さんは八幡工業に入社したことでその才能を存分に活かしている。

「技術は先輩方にはまだまだ遠く及びません。左官職人と言っていただくのもおこがましい気持ちですが、その分、得意分野を任せてもらっています」と話す。

今、特殊塗装で依頼が増えているのが「杉板本実型枠コンクリート壁」の補修だ。杉板の木目をコンクリートに転写する施工だが、うまく転写できない部分が出ることがある。欠損した部分を補修し、その上に木目模様を描く。

「一本一本木目を描いていると、他の職人さんが来て『何階まで描くんだい?』と驚かれることもあります。今は小さい時から好きだったものづくりに携わることができ、仕事にやりがいを感じています」

▲谷さんが手掛けた特殊塗装。金属のエレベーター扉を木目調に変身させた。右がイメージ画

▲モルタルを削り出す「モルタルカービング」の作業を行う谷さん(左・中央)と出来上がった造形(右)



推薦の言葉

建築工房時温 代表取締役 渡辺亜利さん

谷さんには弊社のショールーム内のモルタル造形を施工してもらいました。映画「ホビット」のイメージで、と伝えたところ、ぴったりの絵を描いてくれ、出来上がりもイメージ通り。デザイン力や色彩の使い方など、谷さんのセンスは素晴らしいと思います。

作業中の谷さんの印象は「根性がある女性」。モルタルが固まるので、手を止められないのだと思いますが、集中している様子にガッツを感じましたね。建築士としては、アーティストが作品を作るように施工されてしまうと困るのですが、谷さんはその都度「こういう風にしますね」と確認してくれます。こちらのニーズに忠実に応えてくれるところが、職人だなと思いました。

私はリフォームでワクワクやときめきも一緒に提供できないかと常に考えています。モルタル造形はそうした表現に一番適していると思っているので、もっと広めていけたらと思います。

▲時温のショールームのイメージ画(上)と実際のショールーム(下)



谷さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

お客様からのご要望を丁寧にヒアリングして伝えてくださる営業さんはとても頼りになります。逆に営業さんからのこちらへのご要望をどんどん言っていただき、いろいろなお話をして次につながる関係が築けたら嬉しいです。



リフォマガ2021年3月号掲載

年間購読(毎月15日発行・購読料8,800円)のお申込はコチラ

バックナンバーのご購入はコチラ

リフォマガのご案内はコチラ

リフォマガ

『リフォマガ』は、株式会社リフォーム産業新聞社が発行する現場担当者向けの情報誌です。 リフォーム営業マンに役立つ営業テク、現場調査の方法、商品情報を発信します。 雑誌『リフォマガ』は毎月15日に発行。年間購読料8,800円。(税込・送料込)

0コメント

  • 1000 / 1000