【クロス職人】安藤一朗さん(41歳)
リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのはクロス職人の安藤一朗さん。技術の高さに加えて、スムーズに工程が進むように気配りをする熟練の職人だ。
下地の処理がクロスの仕上がりを決める
クロス職人の安藤一朗さんが作業をする上で、大切にしているのが「下地の処理」だ。特にリフォームでは、クロスを剥がした後、下の紙の部分まで剥がれて段差ができてしまう。その段差を埋めるために、数種類のパテを使っている。まず、一番下に「下パテ」を粗い目のものから、細かなものへと2回ほど塗り、上パテをさらに塗る。その工程を経て、やっとクロスを張る段階になる。
専用のパテは何種類もあるが、安藤さんが上パテとして使っているのは、「スキーム」という水性のパテだ。水性のパテは油性に比べ臭いが出にくいが、クロスが浮いてくることがある。しかし、スキームはそれがなく、しかも、作りおきしておいても固まらないので使いやすい。
「下地の処理を気をつけないと、やり直しになってしまうので、慎重に作業をしています」と安藤さんは話す。
▲4日前に練った上パテ。紙に包んで乾燥しないようにしている
▲上パテを塗って下地の処理をしたところ
▲パテを塗るヘラと手板
▲キッチンの壁。カップボードを設置するため、壁の一部にベニア板を入れている。かなりの段差ができるため、この下処理はなかなかの難所
切り口をシャープに厚みの違うヘラを使い分ける
さらに安藤さんがこだわっているのが、クロスの切り口をピシッときれいに揃えること。新築物件かリフォーム物件かでも、ヘラの厚みを変えて調整している。新築の場合は1mm、リフォームの場合は1.2mmのヘラを使う。巾木が壁から浮いていることがあるため、巾木の上にクロスをやや多めに被せて隙間をふさぐためだ。また、色付きクロスは隙間ができると目立ちやすいことから、色付きクロスが多い和室には1.5mmのヘラを使っている。
▲この現場は3LDKのマンション。5日間ですべてのクロスを張り終える
▲1.2mmのヘラでクロスをカット
▲使用しているカッターはOLFAの特専黒刃のロング型カッター。刃が薄く、切れ味の抜群。切れ味を保つために頻繁に刃を折っている
▲狭い場所のクロスをカットする時は小さいヘラを使用
▲コアラの顔がついたかわいいネールパンチ。「話のネタに買ったが、握りやすくて使い勝手がよかった」と安藤さん
安藤さんが愛用している道具
1 パテ用のヘラと手板
2 クロスの空気を抜くブラシとスムーサー(白)
3 クロスを切った後、巾木の部分と密着させるために使う木ベラ
4 細かな場所をカットするために使うヘラ(黒持ち手のものと白いもの)
5 クロスを接着させるローラーとカッター
6 ネールパンチ
7 ヘラ
推薦の言葉
株式会社コバヤシ 営業課 主任 清宮拓さん
「この現場は並の職人では太刀打ちできないな」と思ったら、一番最初に頼るのが安藤さんです。腕もそうですが、誰からも好かれる人柄が素晴らしいです。初めて会う職人さんとも、互いに仕事がやりやすいように気配りをし、現場で揉めているところは見たことがありません。きつい現場でも嫌な顔をせず、それどころか、元請けさんやお客様に「こうした方が良くないですか」と提案されています。
安藤さんは私が新人の頃、大工さんや電気屋さんなど、それぞれの職人さんの仕事が重なることなく、スムーズに現場を回すためのノウハウを教えてくれました。以前、引き渡し間近の物件で、私のミスからクロスを張り直すことになったことがありました。すると私を責めることなく、休みを返上してやり直してくれました。かといって、ミスに対して甘いのではなく、お客様の無理な注文をストレートに伝えた時には、「それは少し違うんじゃないか」と厳しく諭してくれることもありました。
安藤さんは私より7歳年上。今ではプライベートのことも話し合える、歳の離れたお兄さんのような存在です。
安藤さんからリフォーム営業担当者にメッセージ
「こうしてもらうと嬉しいなぁ」
現場の作業工程をしっかり把握してもらえると助かりますね。クロスを張っているところに「そう言えば、ここに下地をいれる予定だった」と言われると、二度手間になってしまいます。
また現場に行った時に、まだ大工さんが作業をしていて「入って大丈夫かな」と思う時も時々あります。営業さんとしては、お客様に少しでも作業が進んでいるところを見せたいのかもしれませんが、職人同士で顔を見合わせてしまうこともあります。現場を見ると「そうだったのか」と気付くことが多いと思いますから、もっと現場に来て、進行状況を把握してもらえたら嬉しいです。
0コメント