施主の工事うつを防ぐ!~〝現場の品質向上が一番の営業活動になる〟~

施主を工事うつにさせない現場の処方箋

配慮と工夫があれば、ストレスは感動に変わる!

工事中の施主は、想像以上のストレスを抱え疲弊している。連日続く騒音や、埃まみれの空間で暮らす事の苦痛、見知らぬ職人達の出入り、遠慮から工事内容の違和感を伝えられないもどかしさと戦いながら、なんとか日々を乗り切っている。ただそんなストレスや疲弊感は、工事店側のちょっとした配慮や工夫で、感動に変える事も可能だ。施主にモヤモヤを抱かせない現場管理の工夫を全国のリフォーム営業・監督達に聞いた。



〝現場の品質向上が一番の営業活動になる〟

裸足で歩けるくらい現場をピカピカに

「現場品質を上げる事が一番の営業になる。」こう話すのは、頸城建工・住まいのリフォーム専門店アクト長岡店で現場管理業務を行う井嶋泉美さんだ。

「工事中は音の問題もありますが、家の中が埃っぽくなるのが、お客様にとって一番のストレスになると思っています。ちょっとでも埃があったら嫌だなという女性目線を活かして、現場は〝裸足で歩けるくらいピカピカに〞をモットーに、養生も職人任せにせず自ら行っています」

井嶋さんの、現場管理術を紹介していく。



《養生》職人任せはNG養生は基本的に自分で

養生は職人任せにせず、自身で納得出来るまで行う。

「職人さんに養生を任せると工事の時間が減ってしまうので、基本的にどのように養生するか自分で決め、自分で養生します。」

家具類はひとまとめにシートで覆うのではなく、1個ずつシートで覆いテープでまとめる。「この方が後で動かす際にもラクです」。掃除も徹底。帰る時だけが綺麗なのではなく、日中も掃除を小まめに行い、常に綺麗な現場を保つ努力をする。掃除をする姿を見てもらう事も大切だと井嶋さんは話す。

「お施主様から、ここまでやるの?と思われるくらい養生や掃除をする事で、安心感を持ってもらえます。万が一何かを傷付けてしまった時も気持ちの面で違うのではないかなと思っています。」


《養生》工事をしない箇所も埃を徹底的に防止

養生の目的は、家に傷を付けないだけではなく、生活を守る事だ。井嶋さんは、工事を行う箇所だけではなく、工事とは関係のない場所まで徹底的に養生する。例えば、玄関廊下から続く2階への階段。人の出入りによる風で埃が上にいってしまうため、天井からマスカを貼る。また玄関は、工事が入らない場合、片づけが後回しになりがちな場所だ。人形等を飾っている人がいるため、ひっかかって落としてしまう危険もある。

「玄関は、空間を覆うように養生しています。また、棚の上なども奥の方に埃が入っていないかなども確認します。」(井嶋さん)


《段取り》お片付けのリミットを工程表に明記しておく

リフォーム前に必要な片づけについて、事前に施主に伝えていたとしても、中には忘れてしまったりする施主もいる。工程表には、片づけしなければならないリミットを、工事の順番に沿って分かりやすく記載。施主の協力を得る事で、スムーズに工事を進められる。


《段取り》工程表を出す前に職人に下見をしてもらう

工事の段取りが狂い工期が伸びれば、施主のストレスも倍増だ。井嶋さんは、施主に工程表を出す前、主要の職人と一緒に下見してもらうプロセスを設け、工事のリスクや注意点の洗い出しを行う。職人から具体的なアドバイスがもらえ、より手戻りのない工程表を組む事が可能になる。

「例えば壁紙張替えでは、事前に職人さんに見てもらう事で〝クロスが固くなって剥がれにくいから、通常より時間がかかる〟といった事が判明したりします。水道管工事では、事前に水道屋さんに見てもらえば、排管の材料によって工事範囲が変わってくる事などが判明します。職人さんも図面だけを見るより頭に入りやすいらしく、心構えが出来ます。とはいえ、手間が発生してしまうので、成約が決まっている案件で、必要最小限の職人さんにお願いしていますね。」


《コミュニケーション》音は大げさに説明心構えをしてもらう

音の問題については、施主に工程を説明する際、多少大げさに伝えるようにしている。

「在来の浴室を解体する時は、〝道路を掘削するような凄い音がします〟と伝えています。こうするとお施主様も心構えが出来て、工事後は〝実際は思ったより音が大きくなかったね〟と安心してもらえます。」

近隣挨拶の際は、「一番うるさいのはこの日です」とピンポイントで伝え、前日にも「明日からうるさくなります」とアナウンス。これにより、心象が良くなる。


《段取り》リフォームの目的を職人達と共有安心して工事を進めてもらう

井嶋さんは日頃から、そのお宅のリフォームの目的を職人達と共有しているという。ある高齢のおじいさんのためのリフォーム現場では、おじいさんがずっと工事に反対していて、工事中もずっと小言を言っていた。そのお宅では白蟻が発生しており、すぐにでも工事をしなければならない状況で、おじいさんの家族からリフォームを依頼されていたという経緯があったのだ。

そこで、井嶋さんはそのリフォームの目的を職人と共有した。

「工事中におじいさんから何か言われるかもしれないけれど、気にしないでねと、おじいさんへの対応方法を事前に連絡しました。そうする事で職人さん達も混乱せず、安心して工事にあたれます。」

井嶋さんは、職人が言われた事をただ作業としてこなすだけではなく、一丸となって現場を作り上げる1つのチームづくりを目指している。



お話をうかがったのは…
頸城建工住まいのリフォーム専門店 アクト(本社:新潟県上越市) 井嶋泉美さん

2004年に頸城建工に入社し、16年目になる。以前は、新築の輸入住宅の設計業務に従事。設計業務を経て、現場品質を上げたいという思いから、5年前より現場管理業務をメーンにする。一級建築士の資格を所有。長岡店に勤務。

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