一級建築士事務所スマイリズム.堀野和人さんのコラム。図面を見ただけでその家の良くない所が瞬時に分かる堀野さんに、図面をするどく辛口にチェックして頂きます。
本当にコンセプト通り?
今回のコンセプトは「ゆったりとした玄関とリビングが心地いい家」。南接道で約28坪とコンパクトな間取りでありますが、南北に連続した20帖のLDKは明るくて風が通り、コンセプト通りで気持ちのよさそうな空間です。主寝室につながる広いバルコニーも多用途で使えて便利そう。いい所もたくさんありますが、いくつか気になる点も。
プランコンセプト
ゆったりとした玄関とリビングが心地よい家
概要
敷地面積:109.24㎡(33.04坪)
延べ床面積:92.74㎡(1階床面積 51.34㎡/2階床面積41.40㎡)
ポイント:南北に連続した20帖のLDKは明るくて風が通り、気持ちのよい空間である。その他主寝室につながるバルコニーも多用途に使えて便利そう。
NG① ダイニングから遠く開閉できない冷蔵庫
キッチンの通路幅が狭く冷蔵庫を開閉できるだけのスペースがない。キッチンと背面収納との間隔は1.0mを基準に考えるとよい。冷蔵庫はキッチンからだけではなく、ダイニングからでも飲み物の出し入れなどがしやすい配置が望ましい。
NG② 食卓東側・リビング入口の空間の有効活用を
食卓の東側及び、リビング入口の空間が余っているように感じる。空間にゆとりがあるのであれば、パソコンカウンターを設置したり、ソファーのデザインを変えるなどして空間を有効に使えるような提案を含んだ間取り図にすべき。
NG③ お客様も使うの?玄関から丸見えのトイレ
玄関框を斜めに配置したその先にトイレの扉がある。本来玄関ホールは演出すべき空間であり、トイレがあるのは絶対に避けたい。また1階のトイレはお客様も使うので、プライバシーに最大限配慮して安心して使用できるように計画したい。
NG④ コンセプトと違う…ゆとりのない玄関
広さは標準的であるが、コンセプトの「ゆったりとした玄関」にはほど遠い。また、階段やリビング、トイレの動線も集中していて危険でゆとりのない玄関だ。
NG⑤ ホールから使えないシューズボックス
よく見られるケースであるが、下駄箱(シューズボックス)は玄関土間、ホールそれぞれから使えるように配置する事。ホールから一旦土間に降りるための履物が必要になる。
NG⑥ テレビの配置はこれでよいのか?
ベッドへの通路上にテレビがあるのでベッドへ昇降しづらい。テレビを配置する場合はベッドから視聴しやすいように、ベッドの足下側におくとよい。
NG⑦ 間取り図がまさか…左右反転している?
どうにも1階と2階がつながらないと思ったら、2階の間取り図が左右反転している。階段位置に注意してみてほしい。階段が半間モジュールずれしている例はたまに見るが…。
NG⑧ 大型収納がない時は小屋裏収納の設置検討を
家には納戸などの大型収納が一ヶ所は欲しい所である。コンパクトな家で納戸等が確保できない場合は、積極的に小屋裏収納の設置を検討するとよい。一般に収納の必要床面積は12㎡以上、且つ延べ床面積の10%以上とされている。
NG⑨ 今必要はなくとも将来を見据えた計画を
加齢による身体機能の低下により、特に夜間の階段昇降には危険が伴うため、新築時からのトイレの設置をおすすめする。設置しない場合でも、将来的に大きな間取り変更を伴わずにトイレを設置できるような間取りの工夫をしておくとよい。
NG⑩ 収納スペースが不十分タンススペースの計画を
子供室とはいえ半間の収納だけでは不足する。後でタンスを置く場所がないとならないように、机、ベッド、本棚の他に衣装タンス等を図面にレイアウトしておくと親切でよい。
一級建築士事務所 スマイリズム. 堀野和人代表
ゼネコンで現場管理業務に従事し、その後ハウスメーカーの設計部門を経て、2014年に一級建築士事務所スマイリズム.を設立。地域の住宅販売会社と設計提携するなどして、より設計品質の高い住宅の普及を目指して活動する。本業の他、地域のまちづくり活動や、里山保全活動にも積極的に取り組む。
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