伸びる会社の人材育成~会社は人づくり・自分づくり

人づくりを最優先に取り組んでいるシュウハウス工業が、19年前から大切にしている社内イベントが「アイレボ」だ。月1回欠かさず全社員が集まり、全てをポジティブに転換していくミーティングを行っている。同社の人材育成について詳しく聞いた。



月1回、最優先の社内イベント
「アイ・レボリューション」

「新築もリフォームも担当するヒトによって変わる。お客様は数十年そこに住むことになる。その数十年に寄り添えるような、ヒトをつくりたいんです」

そう話すのは、シュウハウス工業の岡﨑秀悟社長。

「会社は人づくり、自分づくりです。恩師からも、苦しくても人づくりしなさいと言われて、経営が苦しい時も止めずに力を入れてきました」

同社が最優先で行っている社内イベントに「アイレボ」がある。アイレボリューション(自分改革)の略で、社員が名付けてくれた。毎月1回、仕事の手を止めて、全社員が集合。良いことも悪いことも話し、一旦リセットするためのミーティングを行う。

1カ月間にあったことを、どうプラスに変えていくかを、グループに分かれてディスカッションする。従業員が3名の時からずっと大事にしているミーティングだ。

真摯に、ヒトづくりを優先して取り組んできた結果、現在では建築事業単体で社員30名、グループ全体で50名の規模に成長した。

2024年3月期の売上高は同社単体で約9億円、グループ全体では20~23億円の見込みだ。

「人材とは?」の質問に、岡𥔎社長はこう答える。

「息子、娘、家族。ファミリーですね」

アイレボでは、3~4名のグループに分かれて、前半は「この1ヵ月にあったこと」をテーマに話し合う。仕事をしていると良いことも悪いこともあるもの。それらを洗いざらい話して、悪いことはどうすればポジティブに転換できるか考える。悪いことがあっても、この日にリセットし、翌日から前向きに進む。

後半は、特定のテーマについて話す。アイレボの司会進行は、社員ではなくコーチングのプロが行っている。コーチと社長で、今の課題は何か、どんなメッセージを誰に送りたいかなどを事前に話し合って、テーマを決める。

例えば「ライフオブゲームエンジョイワーク」がテーマの回があった。人生の中で仕事に費やす時間は長い。楽しいゴールに向けて、過程を楽しみ抜くにはどうしたらいいか、ディスカッションした。

「愚痴は言ってもいいけど、聞いた人はプラスに変えてあげよう」など意見が出たほか、「目標を達成したらごはんに連れて行って、社長が食べているものと同じものを食べさせてほしい、という要求もありました」(笑)と、岡𥔎社長。

▲グループに分かれてディスカッション


カレーの日+アイレボ

毎月1回、アイレボにあわせて「カレーの日」も開催。3~4名のチームで前日から仕込みをして「みんなのことを考えながら」つくる。「チームビルディングになりますし、毎回メンバーを入れ替えて行うのでコミュニケーションがとれてチーム力が上がる。食べた人から『おいしい』と感想を言われると嬉しい気持ちになる」と、効果はバツグン。

▲力をあわせてカレーづくり

▲できたカレーは皆で楽しく食べる



シュウハウス工業流 ヒトづくり術

シュウハウス工業では、カレーの日やアイレボの他にも、ヒトづくりのためにユニークな工夫を凝らしている。


週1回の「カフェ」勤務で基礎力を身につける

シュウハウス工業では新入社員は入社後1年間、週に1回カフェで勤務することにしている。接客することで「コミュニケーション能力」を高め、全体を見配りすることで「危機管理能力」を磨く。グラスが割れる、などトラブルを経験することで、「問題解決能力」を身につけることもできると言う。

同社のユニークな取り組みは他にもある。例えば「2時間に1回の休憩」だ。集中していると、小休憩をとることなく仕事をし続けてしまうことがある。一見問題無く思えるが、岡𥔎社長は「2時間に1回くらいは、手を止めてお菓子を食べながら雑談しよう」と呼び掛けている。小休憩をはさむ方が、パフォーマンスが上がるし、雑談によってコミュニケーションが円滑になる。

「そうしてみんなで笑顔で過ごすと〝効率〟より〝効果〟を上げられる。〝和〟を大切にしているんです」

▲シュウハウス工業が運営する「カフェリアン」

▲仕事の手を止めて「人生ゲームをして皆で遊びなさい」と言ったこともある。社員からは「普段あまり会えないスタッフと一緒に遊べて、こんなに楽しめると思ってなかったのでうれしい」「またやりたい!」などの感想が集まった。



《社長の「人材観」を聞く》
「自分の器より大きいヒトは入ってこない」

もともとは、気軽な気持ちで起業したと言う岡𥔎社長。「儲けて家族がごはんを食べられればいいと思っていました。ですが、経営が分からなくて藁をもつかむ思いで参加したセミナーで出会った恩師から、『自分の器より大きいヒトは入ってこない。岡𥔎の品性を磨きなさい』と言われて意識を変えたんです」

岡𥔎社長は、採用の時にも「人柄」を重視している。

「『和を乱さないように』と採用の時に社員に話しています。意見を言うのに遠慮はしなくていい。ダメなことを注意してもいい。ただ、聞く人の気持ちに配慮してくれと話しています。同時に、意見を言われた側は「『私のためを思って話してくれているんだ』と思って聞くようにとも話しています」

面接で全てを見抜くのは難しい。こうした姿勢が難しい社員が入社してくることもある。そんな時には「『和を以て貴しと為す』。戦うんじゃなくて、話し合いで答えを出そう。理解できるまで話し合おう」と度々話をする。

「でも、うちの会社が真水だとすると、海の魚は真水の川では住むことができない。(そういう社員は)出してあげないと生きていくことができないので、『卒業』という選択も大切」と語る。

一方で、「自分はネガティブだ、変わりたいと言って入ってくる社員もいます。そういう子を『シャケ』と呼んでいます。海からきて真水に馴染もうと努力している。こういう子はいつかきっと、変わっていけると信じています」

▲代表取締役社長 岡𥔎秀悟さん



お話をうかがったのは…

シュウハウス工業(高知県高知市)

2003年創業。新築とリフォームの他、グループでカフェやインテリアショップ、システム外販、コンサル事業などを手掛ける。建築事業では高知、愛媛、徳島に拠点を持ち、売上高は合計9億円。グループ全体では20~23億円の売上高。売上構成比は新築70%、リフォーム25%、その他5%。社員数は建築事業で約30名、グループ全体で約50名。



リフォマガ2024年6月号掲載

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