リフォーム解体新書~初回塗装時にスラリー層を除去していなかった

リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書

第16回 屋根リフォーム


ドキッとする“解体あるある”を集めました

「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。

そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。

屋根リフォームは、屋根材の素材を明らかにすることがポイントです。というのも、一見同じ材質に見える屋根材でも、素材が違うことがあるからです。例えばスレート屋根の場合、アスベストが含まれているものを解体する場合は届け出を出す必要があります。また、リフォーム内容に応じたアスベスト対策をとらなければなりません。とはいえアスベストを使用していないからと安心するのは禁物です。事例1で紹介するノンアスベストの屋根材のように、大きな問題を抱えているものもあるからです。事前の調査で、どの屋根材が使用されているのか確認することが大切です。



《事例2》
初回塗装時にスラリー層を除去していなかった

洋瓦のひとつ「モニエル瓦」の再塗装工事での話です。最初の塗装から10年経過していて、何カ所か塗膜の剥がれがありました。「モニエル瓦にはスラリー層という着色剤があって、塗装する時はそれを剥がす作業があるから大変だ」と聞いていましたが、スラリー層を剥がす作業は最初の塗装時で、再塗装なら問題ないと考え、工事を引き受けました。

ところが高圧洗浄時に問題が勃発。屋根上で職人が「水がドロドロになるけど、これスラリーだよ」と叫んでいます。要するに初回の塗装時にスラリーを剥がさず塗装していたというのです。塗膜剥がれが数カ所あったのは、劣化したスラリーと一緒に塗膜が剥がれ落ちたのが原因だったということです。


【解決策は?】泥状の水しぶきの飛散に注意しながら「スラリー層※」を除去する

モニエル瓦を覆う厚さ1ミリほどの層は「スラリー層」と呼ばれる層で、劣化すると粉状になります。スラリー層をできるだけ除去しないと塗装することができません。もともと瓦に色をつける目的で塗布されているため厚みは無いのですが、剥がすと結構な量になります。スラリー層に浸透するというモニエル瓦用の塗料を使うにしても、撤去しなければ不具合の原因になりかねません。高圧洗浄時にブラシなどでこそげ落とすように除去します。ただし、泥水のような水しぶきが飛散するため、近隣への配慮が不可欠です。

▲高圧洗浄時にブラシなどを使って「スラリー層」をできる限り除去する


【どうすれば事前にわかる?】前回塗装時の塗膜を指で剥がしてみる

前回の塗装時にスラリー層を除去せず塗装をした場合、数年で剥離し始めます。調査をする時は指で塗膜を剥がしてみましょう。粉状に劣化したスラリー層と一緒に塗膜がビリビリと剥がれてしまうなら、スラリー層が除去されていない状態で塗装されたものと考えられます。

以前は今のようにモニエル瓦に適した塗料(除去しきれないスラリー層に浸透して密着する塗料)がなく、「モニエル瓦は塗装できない瓦」と考えられていました。この現場では、初回に塗装した業者がモニエル瓦とわかっていながらスラリー層を除去せず塗装したのか、またはモニエル瓦によく似た「セメント瓦」と間違えて塗装してしまったのかわかりませんが、このような現場もあるので注意しましょう。



[用語解説]モニエル瓦のスラリー層※

「スラリー」とは、汚泥や鉱物などが混ざっている液体状の混合物のことで、どろどろした粘り気のある状態のものを指します。このスラリーを着色剤として使用した瓦が「モニエル瓦」です。着色スラリー層の上は、瓦の保護のためアクリル系樹脂のクリアー塗料で仕上げられています。よく「モニエル瓦」と間違えられる瓦が「セメント瓦」です。素材は同じセメント系ですが、モニエル瓦の方はセメントに砂利を混ぜたコンクリート製のため、表面を触るとゴツゴツした砂利の感触があります。そして大きく違う点が、再塗装時の塗膜の密着を邪魔する「スラリー層」の有無です。セメント瓦にはスラリー層がありません、そのため難なく塗装することができるのです。

▲モニエル瓦とセメント瓦の違い



リフォマガ2024年8月号掲載



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