リフォーム解体新書~層状構造のスレート屋根 劣化が激しくバリバリ割れる

リフォーム現場のトラブル解決
リフォーム解体新書

第16回 屋根リフォーム


ドキッとする“解体あるある”を集めました

「工事現場は場数を踏んで覚えるもの」と言われますが、現場の数だけ発見があると言えるくらい個々に違いがあります。中には「解体してびっくり!」ということもあるでしょう。

そこで、場数をたくさん踏まずとも「見えない必要工事」を予測できるよう、工事現場にありがちな解体あるあるを集めてみました。

屋根リフォームは、屋根材の素材を明らかにすることがポイントです。というのも、一見同じ材質に見える屋根材でも、素材が違うことがあるからです。例えばスレート屋根の場合、アスベストが含まれているものを解体する場合は届け出を出す必要があります。また、リフォーム内容に応じたアスベスト対策をとらなければなりません。とはいえアスベストを使用していないからと安心するのは禁物です。事例1で紹介するノンアスベストの屋根材のように、大きな問題を抱えているものもあるからです。事前の調査で、どの屋根材が使用されているのか確認することが大切です。



《事例1》
層状構造のスレート屋根
劣化が激しくバリバリ割れる

屋根の棟まで登るのが困難

スレート屋根の屋根材を撤去できずに工事がストップした話です。通常、屋根材を撤去する時は、重ね代が上になっている棟の方から軒の方に向かって剥がしていきますが、この現場では、屋根に人が乗るだけで屋根材がバリバリ割れてしまい、棟まで登るのを躊躇するほど劣化が進んでいたのです。職人は「ミルフィーユ状に成型されたこの屋根材は何回か経験しているけど、歩けないほど傷んでいるのは初めてだ」と言います。既存の屋根材が何層もの層になっている「層状構造」のスレート材で、アスベストを含んでいない建材だということは仕様書で確認済みでした。「ノンアスベストで良かった」と喜んでいましたが、このような問題が起こるとは想像もしませんでした。


【解決策は?】簡単に割れるようなら軒から棟に向かって剥がすことも

層状構造の屋根材は、劣化が進むと屋根上に乗るだけで砕けるように割れることがあります。また剥がれた層がずれ落ちることもあるので、安全策をとっていても歩きづらく感じるでしょう。屋根材が手で簡単に割れるほどの状態なら、屋根材の重なり方に逆らうことになりますが、むしろ軒の方から棟に向かって剥がす方が足元の安全を確保できて解体が進むこともあります。あくまで現場の状況によりますが、安全第一に対策を練りましょう。

▲下の屋根材から剥がせる状態なら上に向かって剥がすこともある


【どうすれば事前にわかる?】目視に加え、事前に仕様書を確認して既存の屋根材を特定する

この屋根に葺かれていた屋根材は、薄い材料をミルフィーユ状に固めて成形した「層状構造」のスレート瓦※です。

アスベスト建材の製造が禁止された頃、各メーカーからノンアスベスト建材が次々と誕生しました。この屋根材もこの時期のものです。アスベストが含まれない安心感がある反面、剥がれや割れといった不具合が生じたのもこの時期の屋根材に集中しています。割れの不具合なら接着することで補修できますが、層状構造の屋根材の場合は層が剥がれてしまうため、補修が困難でした。そのため劣化の進行も早く、中には葺き替え時にバリバリに割れてしまう現場もあります。

このように、同時期のものでも屋根材によって劣化の進行に違いがあります。屋根作業のリスクを事前に把握するためにも、事前に仕様書で既存の屋根材を確認して、特徴を踏まえることが大切です。



[用語解説]層状構造のスレート瓦※

「層状構造」は、板状の材料がミルフィーユのように何層にも重ねて成形されている構造のことで、屋根材にも層状構造のスレート瓦があります。繊維パルプとセメントを混ぜて圧縮した材料を何層にも重ねて成形したもので、アスベスト屋根材に代わるノンアスベスト屋根材として、2000年前後に生産されました。断面を見ると、右イラストのように何層もの層が確認できます。この屋根材が開発された当時はノンアスベスト建材の開発が急がれていたこともあり、いち早く市場に浸透しました。ところが10年ほどの経年で表層が剥がれるという問題が相次ぎ、生産されなくなりました。

リフォーム時期を迎えた層状構造のスレート瓦は、塗装をしても表層とともに剥がれるという懸念から、塗装ではなくカバー工法や葺き替えを勧めることが多かったようです。一方で、そのまま何も手をつけずに葺き替え時期を待つ家も多数あり、中には屋根上を歩くと割れてしまうくらい傷みが進んでいる例も見受けられます。

▲2000年前後に普及した層状構造のスレート瓦



リフォマガ2024年8月号掲載



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