前向きで明るい人柄と素早い行動力で、顧客の信頼を勝ち取っている上野山大さん。顧客の内、リピーターが6割を占めるという、上野山さんの営業術を紹介する。
▲東栄住宅設備(神奈川県海老名市)営業部 上野山 大さん(39)
前職は自動車の整備士。高校の後輩の紹介で、東栄住宅設備の前身のリフォーム会社に営業職として入社する。社歴は約17年。営業業務のほか、現場監督も務め、完工まで一気通貫で顧客対応をしている
入社直後はしどろもどろ
話をよく聞き、聞き上手に
神奈川県海老名市で、県央中心にリフォーム事業を展開している東栄住宅設備。
同社に入社するまで、営業職の経験がなかった上野山さん。「最初は接客マナーを知らなかったので、お客様から直接ご指摘いただくことが多かったです」と話す。入社当時は書類を剥き出しのまま持って行き、「こういうものは裸で渡すものじゃないんだよ」と顧客から教えてもらうこともあった。
人と話すことは苦手ではなかった上野山さんだが、最初は緊張で、しどろもどろだった。
「当時は『営業だから自分が話さなければ』という気持ちが先行してしまい、途中から何を喋っているのかわからなくなっていました。段々とお客様の話を聞けるようになってからは、落ち着いて会話のキャッチボールができるようになりました」
上野山さんはリフォームに関する知識を勉強するため、初心者でもわかる建築の本を1冊購入。それをずっと読み込んで勉強した。また、同社には自社の職人がいることから、分からないことはすぐに質問ができた。環境にも恵まれ、どんどん知識を吸収していった。
自信を持って提案できるようになったのは、入社して3年経った頃。「この地域は一戸建てのリフォームが多く、お客様のニーズも様々。様々なニーズに応えられるようになるには3年ほどかかりました」
営業一人ひとりが広告塔
笑顔のためにマッサージ
上野山さんが営業をする上で大切にしているのは、第一印象だ。特に声のトーンと笑顔には気を配っている。顧客宅を訪れるときは元気よく声のトーンは高めに。玄関先では顔をマッサージし、表情をやわらげる。
「特に新人の頃は経験も知識も足りないので、パッと見た瞬間の印象で勝負しようと考えていました。今でも清潔感を出せるよう、こまめに散髪したり、服に汚れがないかチェックしたりしています」
上野山さんの靴下はいつも黒。顧客宅に行く前に現場で汚れてしまった時でも、目立たないようにするためだ。
「私たち中小企業のリフォーム会社では、営業一人ひとりが広告塔。お客様にどう見られているかを意識することも重要だと考えています」
▲身だしなみには常に気を配っている上野山さん。「リピーターのお客様から『いつもヘアスタイルがすっきりと決まっているね』と褒めて頂けているので、より一層気をつけています」
迅速な対応で
顧客の不安を払拭
上野山さんの年間の売上目標は8000万円。それを達成するには、隙間時間を作らず、スピーディに動くことがポイントと考える。1日のアポイントは約8件。効率よく自動車でまわれるように、道路が空いている時間帯を選んだり、地域を絞ったり、スケジューリングを工夫している。
その他、上野山さんが大切にしているのは「迅速な対応」だ。特に急ぎで修繕が必要な場合は、できる限り即日、顧客宅を訪問するようにしている。上野山さん自身が行けない時は職人が駆けつける。問い合わせが殺到するのが台風の次の日。事前にブルーシートを用意したり、人員配置を考えたりして準備しておく。時には営業部も一緒に屋根に登って作業することもある。
「問い合わせから時間が経てば経つほどお客様は不安になります。まずは、誰かが行くことで安心していただきたいと思っていますので、スピード感を大事に『行動力あるのみ』を実践しています」
小学生でもわかる説明
顧客の間違えは指摘しない
顧客に工事内容や設備について説明する時、上野山さんは専門用語を極力使わない。例えば、顧客から「昔の給湯器と省エネ性能の高い給湯器は何が違うの?」と聞かれたら、「昔は捨てていた排気の熱を再利用しているんです」と回答。多くを語らずシンプルに、小学生でも理解できる言葉を選ぶ。
また、顧客が建築用語を間違って使っていても「それ、間違っていますよ」と指摘しない。例えば「基礎(コンクリート)」のことを「土台」と呼んでいても、「それは基礎で、土台はその上の木材のことです」といちいち言わないようにしている。
「私たちがお客様が何のことを指してそう言っているのかを理解できたら、言い換える必要はないと思っています。定食屋さんでも、食堂でニラレバ定食を注文したら「レバニラ定食です」って言い返されたら、気分は良くないですよね(笑)。もちろん、最後はきちんと正式名称を使って説明しています」
トイレを借りたら必ず掃除
工事後も来た時よりも美しく
顧客在宅中のリフォーム工事の場合、上野山さんは水道やトイレが使えない時間がどのくらいになるのか、先に伝えておく。
「しばらく使えなくても大丈夫と言っていても、実際は、工事中に困ってしまう方は結構いらっしゃいます。なので工事が長くかかりそうな時はお出かけしてもらうなど、対応をお願いしています」
同社では、基本職人はトイレを借りないようにしているが、借りた時は必ず掃除をしている。そのため、職人の車にはトイレ掃除の道具を積んでいる。
さらに工事終了後はリフォームをしたところの周辺を工事前よりキレイな状態を目指して掃除をする。顧客から「もう、このくらいで大丈夫」と言われるまで掃除するのがモットーだ。これがアピールポイントとなり、リピーターを増やしている。
相見積もり必勝法は
先出しか、後出しかで作戦変更
上野山さんが相見積もりを勝ち抜くための方法は、他社より先に出すか、後に出すかで作戦を変える。
先に出す場合、金額で勝負はしない。顧客には「手抜き工事はしたくないのでこの金額です」と伝え、後から上乗せはしないと説明する。見積もりは安くても、後から追加工事が増えて費用が膨れ上がったという話を顧客から聞くことがあったからだ。
そのため、見積もりには今後起こり得る工事項目を列挙して、万が一工事が発生した場合の金額を記載しておく。実際、追加工事はほとんどないという。
また、顧客には他社に見積もりを依頼する時、「うちと同じ項目で出してもらってください」とお願いする。「条件を揃えることで比較してもらいやすくなり、同じ土俵で勝負ができます」と上野山さんは話す。
後出しの場合は「見積もりを出した日、即決してもらえるように全力でいきます」と上野山さん。もし、顧客に迷いがあれば、工事への不安なのか、金額なのか、理由を深掘りしながら聞いていく。その理由を解決できる方法を考えてその場で提示し、クロージングに持っていく。
上野山さんの今後の目標は、支店を出すこと。それには「行動あるのみ。今いるスタッフでしっかり地盤を固めていきたいです」と上野山さんは話している。
▲上野山さんが愛用しているアイテムはiPadと、スマホとApple Watch。メールや問い合わせなどにすぐに返信できるよう、Apple Watchの通知を常に確認する。
「iPadは使わず嫌いだったのですが、調べものもすぐできますし、カタログもこれで見られるので便利。昔はiPadを使うのはお客様に失礼かと思っていましたが、今はお客様もよく使われているので抵抗はなくなりました」
《上野山さんが手掛けたリフォーム例》
80代の夫婦宅に50代の娘さんが同居されるのを機にキッチンと浴室をリフォーム。特にキッチンはL字型で冷蔵庫までの動線が不便だったことからI型にし、キッチンの並びに冷蔵庫を置けるようにした
「プランを提案するときは、家電が配置しやすいコンセントの場所など、お客様が気付かない細かなこともお話ししています。『こういうこともできるんだ』と思ってもらえるように心がけています」と上野山さん
リフォマガ2024年3月号掲載
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