今月の輝く!リフォームセールス~何にでも興味を持って掘り下げる探究心 ありきたりにならない提案で会社の年間売上は3億円

「小さい頃からぼんやりと、将来は建築業界で働くイメージがあった」と話す津田寛太さんは、施主と直に接して、設計をすることを重視。何にでも興味を持つ持ち前の好奇心旺盛さを生かし、自分にしかできない提案を行う。

▲アズ建設(東京都杉並区)マネージャー 設計 津田 寛太さん(25)

高校・大学で建築を学ぶ。大学4年からアルバイトしていたアズ建設に新卒入社。現在3年目。顧客対応から設計まで、責任を持って担う。スケボー、釣り、服、植物など多趣味で、時代背景を感じられるものに惹かれる。



愛着の持てる空間づくり
プラスαの提案を

アズ建設は、住宅リノベーションから店舗・空き家改修、さらにインテリア雑貨の販売まで、暮らしに関わる事業を幅広く展開している。

主に接客・提案にあたるのは、北村社長と津田さんの2人。ありきたりにならない提案で差別化を図り、大型リノベーションを中心に、会社として年間受注件数は30戸、売上は3億円を誇る。

津田さんの理想にも通じる会社のコンセプトが「長く、愛着の持てる空間づくり」だ。実際、訪ねてくる顧客もここに魅力を感じていることが多い。提案の際は、要望にプラスα、会社の色となる意匠性を加えることを心がけているという。

「素材感を足すことが多く、特に無垢材を使うことが多いです。年月を増すほど味が出て、良いものになる。アズ建設を選んでくれたからには、どこにでもあるプランにはしたくないんです」と津田さん。

入社3年目ながら、「慣れれば慣れるほど固定パターンに落とし込んでしまう」ことを危惧し、固定概念に囚われないよう視野を広く、を常に意識している。



一気通貫だからこその信頼感
直接会って本質を掴む

津田さんの肩書きは設計だが、同社には営業がおらず、実質設計担当が営業的な側面を持っていて、いわゆる一気通貫スタイルだ。

この体制は「言った言わない、のトラブルが起きにくい」と津田さんは話す。役割分担されていると、どうしてもどこかで伝達に齟齬が生まれ、意図が正しく伝わらなくなりがちだからだ。

「お客様の本質は、言葉では20〜30%しか表現できていないと思うんです。残りは、実際に会って、服装や生活スタイル、とりまく環境などに実際に触れて知っていく必要がある。そうして『どんな人か』を把握できないと、良いプランや、その方に響く伝え方を掴めない、と考えています」

そのため、打ち合わせは基本施主宅で、対面で行う。情報収集は、口頭の質問だけに頼らず、視覚を使う。植物の有無、家具のこだわり、綺麗好きか、照明の明るさはどうか。

こうして、どんなタイプの施主かを探っておいて、提案の手法にも変化を持たせるのが津田さんのやり方だ。



「ペットに無垢で大丈夫?」
聞き逃さず、窓際にタイル提案

例えば、どんなプラスαの提案をしているのか。ペットを飼っている施主の、マンションリノベーションの事例を紹介する。

リビングの床は無垢材に張り替えが決まっていたが、ふと「ペットがいるけど無垢って大丈夫かな」と奥さんが心配ごとを口にしていたことを、津田さんは聞き逃さなかった。ヒアリングで得た奥さんの印象は、綺麗好きで丁寧な人物だった。

そこで、窓際の一角だけ屋外用のタイルを貼ることに。ここに、ペット用のトイレや水まわりを集約すれば、手入れがしやすくなると考えた。完成後も満足してもらえたが、よりうれしく感じたのが1年後、メンテナンスの相談で久しぶりに訪問した時のこと。

「夏場はタイルが冷たいので、わんちゃんが気に入って寝そべってくれたみたいで、奥さんも喜んでくれていて。引き渡し後すぐより、実際暮らしてからの声を直接聞けたので、よりうれしかったですね」

この施主は「今すぐ困っていることはないけど、ここもこうしてみたい」などの要望を引き続き相談してくれている。仕上がりに満足しているからこそ、次に繋がっているのがわかる。

▲ペット・飼い主どちらも快適に過ごせる場所

リビングの一部だけに、屋外用パネルを施工。ここにペットの水まわり用品をまとめて置けば、汚れても手入れしやすい。



施主が共感できる言い回し
アプローチに変化を付ける

提案で気を付けているのが、どんなアプローチをするのかということ。同じ無垢材を勧めるのでも、手間を気にしそうな施主には「メンテナンスは思ったより手がかからないですよ」、窓が多く寒い構造の家なら「空気を含んでいるので、冷たくないんですよ」といった具合だ。

大事なのは、施主が共感できる言い回しになっているか。施主のタイプを掴めているからこそ、響く言い回しができるのだ。

また、相見積もりに対してはこちらから深掘りすることはない。

「相見積もりの有無で、こちらの提案スタイルを変えるのは違うと思っていて。他社と比較したり、批判することはないです。あくまで、うちはこういう考えですよ、を伝えるに留めます」と津田さん。

値下げ交渉をされることもあるが、基本的に応じることはしない。

「応じることで『値下げできるんじゃん』と思われる方が、返って信頼を損なわれかねないです。金額にはすべて理由がありますから、納得していただけるように説明します」

見積もりの提出も対面にこだわっているのには、こうした理由があるからだ。



毎日俯瞰して自分を見つめ
自信を積み重ねる

津田さんは自身の将来について「『これを作ってください』ではなく『あなたに作って欲しい』と思われる設計になりたい」と話す。

「今は、経験や実績、センスを培う下積み期間。社長のような提案の引き出しはまだないので、アドバイスをもらいながらも、若いからこその発想や、普段からの情報収集力を武器に、自分の長所を伸ばしたいです」

経験の足りない部分を、少しでも早く埋めるために心がけているのが、やることひとつ一つに意味を持たせることだ。

図面ひとつとっても、淡々とした作業にせず、今回は全体の美しさを意識しよう、今回は大工さんにわかりやすいようにしよう、と毎回目標を決めて取り組む。同じ仕事の繰り返しにせず、初めてのことから何か吸収しよう、という意識の表れだ。

津田さんの毎日のルーティーンが、1日の終わりのタスク整理。その日のTODOは、仕事中にノートの1ページに書きとめ、これを終業前に1度剥がして、やれなかったことだけを再度書き出す。この時重視するのが「できたことが何だったか」だ。つい、できなかったことばかりに意識が向きがちだが、できたことも間違いなくある、という事実を重ねることで、自信につなげている。

「毎日何かしらはできるようになっている、と考えます。その方がモチベーションもあがるので。これからも幅広く興味を持ち、アンテナを広げて知識を増やしていきたいです」

▲パースはワクワクさせるためのツール

手書きパースは、施主のタイプに合わせてテイストを変えて仕上げる。パースは、細かい部分の共有より、イメージを膨らませてもらうために用いる。

「完璧な完成形を見せる目的より、どんな雰囲気にできるか、よりワクワクしてもらうために書いています」(津田さん)

▲津田さんが愛用しているグッズ。手帳、スケールや下地探しなどの現調グッズをポーチに入れて持ち運ぶ。ファイル入りのメモ帳は、小物もしまえる優れもの。スタンレー社のスケールは「形から入るタイプ」の津田さんお気に入りのデザインだ。

▲事務所に併設して、雑貨を扱うショップを運営する同社。津田さんが接客することも。商品セレクトは社長。「長く愛着を持って使える」リノベーション事業と同じコンセプトで集められた商品が揃う。



リフォマガ2024年2月号掲載

年間購読(毎月15日発行、購読料 ビューアー版8,800円・雑誌版11,000円)のお申込はコチラ

バックナンバーのご購入はコチラ

リフォマガのご案内はコチラ

0コメント

  • 1000 / 1000