KURASHIをたのしむVol.25 必要最小限のもので豊かな暮らしを実現

男の子3人とともに、家族5人でマンション暮らしをする尾崎友吏子さんは、「余分なものを持たないシンプルな暮らし」を実践するミニマリストだ。尾崎さんの心地よい暮らし方や要らないものを見極めるコツを聞いた。

▲ミニマリスト 尾崎友吏子さん

大阪在住。建設コンサルタント会社で働き、橋や道路などの公共事業の設計に携わる。シンプルな暮らしを綴ったブログで人気となり、メディアや雑誌でも活躍。二級建築士、インテリアコーディネーター、整理収納アドバイザー1級の資格をもつ。大学と高校と中学3人の母。


東日本大震災がきっかけに

「シンプルな暮らしの魅力は、『今』に集中できること。それにより将来や過去のことに執着したり、心配しすぎたりすることが減りました」と話す尾崎友吏子さん。吟味して購入した洋服も、1、2週間過ぎて着なければ、メルカリでさっさと売る。袖をすぐに通さない服は、自分には必要ないと判断する。

尾崎さんは以前からシンプルな暮らしに憧れていたが、3人の男の子のママになり、家事の負担やものも増え、部屋は洗濯物などで散らかることが多かった。

そんな頃、東日本大震災が起き、「家や道路、橋が流されていく」映像を目にして衝撃を受ける。「ものは一瞬でなくなり、たくさんのものを持っていても虚しい」と感じた。それがミニマリストを実践するきっかけになった。

それからは、要らないものをどんどん手放して、暮らしはシンプルになっていった。そして7年前に90㎡あったマンションから、70㎡のマンションに引っ越した。

「家族が増えると、少しでも広いところへ引っ越すというのが普通ですが、我が家はより狭いマンションに移りました」




小さな家で快適に暮らす

引っ越したマンションのLDKは、全てフローリング仕様だったが、リビングだけ畳敷きにリフォームした。「フローリングだと家具が欲しくなります。ソファを1つ置けば、テーブルも欲しい。そうなると部屋が狭くなる上に、掃除も面倒になります。一方畳だと、家族が好きな場所に座りゴロゴロ過ごせます」と尾崎さん。

ソファの代わりに、おしゃれな「キャンプチェア」を置いている。軽くて移動が楽なので、あちこち好きな部屋で使ったり、趣味のキャンプでも利用したりできる。

家族全員の服は、3畳の「ファミリークローゼット」に収納している。よくある間取りは、各部屋にクローゼットが設けられており、その個室を使う人のものをそれぞれ収納するのが普通だが、尾崎邸は1カ所に保管する。ハンガーで干した洗濯物はすべて、ファミリークローゼットのバーに直行。それによって乾いた洗濯物を個々の部屋に運ぶ手間が減り、取り込んだまま畳んでいない洗濯物の山はなくなって、整った部屋を保てるようになった。

▲リビングは畳敷きに。家族みんなが好きなスペースでゴロゴロくつろぐ

▲ソファの代わりに使っているキャンプチェア。持ち運びが楽で、部屋のあちこちに居場所をつくれる

▲三畳のファミリークローゼット。ハンガーで干した洗濯物はここに直行。服を畳む手間を考えて、吊るす方式を取り入れた



不要品は「使っているか」で判断

尾崎流の整理・収納術は、「整理」とはものを減らす、すなわち不要品を手放すこと、「収納」はものの居場所を作ることだという。

整理を収納の前に意識し、ものを減らしてから片付ければ、さほど収納場所はいらない。

「なぜここに置くのかと考えながらものの置き場を決める。そうすると使いやすい場所に収納でき、さっと取り出して使えさっとしまえます」

キッチンでは、必要な道具を取り出しやすい場所に置き、使わないものは置かない。たとえば鍋は、料理の手順を考えてコンロではなくシンクに近い場所に収納。フライパンと違って、鍋はいきなり火にかけるよりも、最初に水を張ることが多いからだ。洗った後もコンロのそばに置くよりも、シンクに近いほうがすぐに収納できる。

尾崎さんは、「たくさんのものがある状態で部屋をすっきりさせるのは、テクニックがいりますが、ものを減らせば簡単。要らないものを見極めるコツは、使っているかどうかです。使うかもしれないと迷う場合は、使用する時が『いつか』がわからないものは手放します」と話す。

将来は、もっと小さな家に住み替え、時には別の場所に住んだりする2拠点暮らしも面白いと考えている。

▲キッチン。シンクまわりはよく使うキッチンツールを厳選し、掃除の手間を最小限に。鍋はコンロよりシンクに近い場所に置き、使いやすく工夫する



リフォマガ2023年3月号掲載



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