【THE SHOKUNIN】第三者という中立な立場で、雨漏りの原因を突き止めます

【雨漏り調査員】田中清隆さん(58歳)

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは、雨漏りの原因を突き止めるエキスパート・田中清隆さんだ。



調査件数900件
雨漏りは心の中にも入り込む

雨漏りに悩んで精神的に病んでしまう人がいる。

いつも天気予報を気にして、雨が降るたびにうつ状態になる人。新築を購入直後に雨漏りが発生。何度工事をしても直らず、家族の精神状態が不安定になり、家の中は散らかり放題になった人。そんな悩める人達を田中清隆さんは何人も見てきた。こうした雨漏りの悩みは、決して大袈裟な話ではないと話す。

「900件以上調査をやってきましたが、お宅に伺うと、どうにかして直してほしいという強い思いが伝わってきます。必ず原因を見つけなければならないという気持ちになりますね」

工務店と顧客がトラブルになりかけている案件が持ち込まれることもある。

瑕疵保険の保険金を使って修理する場合、保証の問題があるから、顧客は自由に業者を選べない。いつまでも直らないと、どこに不満をぶつけて良いか分からなくて悩んでいるケースも少なくない。



雨漏りクリニックは、住まいの検査技師

田中さんの「雨漏りクリニック」では雨漏りの調査・診断だけを行う。工事は請け負わない。第三者の立場として、客観的に判断する。

「私達は病院で言ったら、レントゲンやCTの検査技師。私達が病気の原因を特定し、改修工事業者さん(医師)が工事(手術)をする。原因がはっきりしないのに適当に当たりをつけて工事をするのは、お腹が痛いなら、この辺りを切って手術をしようというのと同じだと思います」

調査中、田中さんは淡々と作業を進める。原因がわかってもわからなくても、表情は変えない。その場で結論を言わず、必ずすべてのデータを解析して、画像と書面で伝えている。

「お客様の期待値が高い分、その場で軽々しいことは言えません。多分ここだろうと思っていたのに、持ち帰って確認したら別の場所が原因だったこともありました。そのため1週間から10日間ほど時間をいただいています」



素人でもわかる調査マニュアルを作りたい

雨漏りに悩む人はネットなどを検索し、知識はいっぱい持っている。けれども、情報が多すぎて疑心暗鬼になっている人も多いと田中さんは言う。田中さんの今後の目標は、素人にもわかる雨漏りの調査マニュアルを作ることだ。

「プロでもなかなか難しい雨漏り診断ですが、一般の方でも理解できるマニュアルがあれば、自分である程度原因を見つけ出せます。それに、万が一、間違った診断をされてもわかります。雨漏りしなくなると、皆さんすごくいい表情になるんですよ。もう、その快感が忘れられませんね」と田中さんは話す。

▲雨漏りクリニック独自の調査方法「ハイドロパス探査」の探査器。「ハイドロパス」はハイドロ=水、パス=道、いわゆる水道(みずみち)を探し当てるという意味。田中さんの電気抵抗を使った探査のアイデアを元に、ある業者の協力を得て、製品化に成功。赤外線サーモグラフィカメラでおおよその場所を特定した後、この探査器を使って、雨水の侵入口を特定する

▲田中さん愛用の赤外線サーモグラフィカメラと、その画像



住む人やオーナーの身近な相談相手に

田中さんは雨漏りの調査だけでなく、非営利NPO法人「日本建物再生支援機構」の理事兼事務局長という肩書きを持って、活動している。この団体では、オーナーから、所有する建物のメンテナンスや管理についての相談を受け、修繕計画や資金問題についてサポートを行なっている。

「雨漏り調査に伺った折、4階建に住んでいた高齢のご夫婦から、この建物を売却してマンションに住み替えたいという相談を受けました。そこで、古い建物でも仲介してくれる不動産屋さんを探し、売却にむすびつけました。こうした悩みを解決するお手伝いをしたいですね」

雨漏り改善を通して、中立な立場で住む人やオーナーの、身近な相談相手になりたいと、田中さんは考えている。



推薦の言葉

エイトノット 代表取締役 大橋寿昭さん

外壁・屋根の塗り替え業者のマッチングサイト「外壁塗装ナビ」を運営しています。現在はホームセンター各社と提携して、リフォームを受注。全国の業者さんに工事を依頼しています。

田中さんに初めて雨漏り調査を依頼したのは、すでに別会社で調査をしてもらった後でした。その会社は調査と工事をする予定でしたが倒産。急遽知り合いに紹介してもらい、田中さんに調査をお願いしました。

驚いたことに、最初の会社と田中さんの調査結果は全く違っていました。最初の会社は屋根の補修が必要という見立てでしたが、田中さんは張り替えを提案。しかも、グレードアップした内容にもかかわらず、補修よりも安い工事費用で済みました。どうやら、前に調査をした会社は工事で利益を出そうと考えていたようです。それを田中さんの調査で止めることができて良かったです。

田中さんが行うハイドロパス探査は他社にはない独特な方法です。それ以外にも赤外線カメラなどの他の方法も組み合わせて、ピンポイントで原因を特定してくれます。正しい処方箋を書いてくれることが、我々工事会社としてはすごくありがたい。弊社の雨漏り調査は毎回、田中さんにお願いしています。



田中さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

雨漏りをしているお客様には、余計な工事の提案はしないでもらえたらと思います。「せっかく足場を建てるのだから、ついでに外壁塗装も」と追加工事も提案するケースもあるかと思います。ちょうど塗装をするべき時期だったら良いのですが、そうでない場合は、お客様のお財布の中のことも考えていただけたらと思います。先ずは雨漏りを止める工事を最優先にしてほしいです。



リフォマガ2022年5月号掲載

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『リフォマガ』は、株式会社リフォーム産業新聞社が発行する現場担当者向けの情報誌です。 リフォーム営業マンに役立つ営業テク、現場調査の方法、商品情報を発信します。 雑誌『リフォマガ』は毎月15日に発行。年間購読料8,800円。(税込・送料込)

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