ビジュアルプレゼン手法~賃貸物件のブランディングのためイメージを共有する写真を多用

魅せる 伝わる ビジュアルプレゼン手法

打ち合わせの際に、施主にリフォーム後の完成イメージを提示することで、夢を大きく膨らませ、行き違いをなくすこともできる。デジタルツールの発達によって、一昔前よりも一定レベルのビジュアル作成は容易だ。そこで最新ツールなども取り入れつつ、オリジナルの手法を駆使して、他社との差別化に成功している4社のビジュアルプレゼン手法について詳しく聞いた。



賃貸物件のブランディングのためイメージを共有する写真を多用

エスアンドティ(埼玉県蕨市)

賃貸物件のリノベーションの場合、住人の嗜好に合わせる個人住宅とアプローチの仕方は全く異なる。地域の入居ニーズを把握したうえでコンセプトを打ち出し、物件をブランド化する必要があるのだ。オーナーと考え方を共有するためのビジュアルプレゼン法を、エスアンドティの大原亨専務に聞いた。



マーケティングを行ってブランドイメージを構築

不動産賃貸管理を本業としながら、「ステキ賃貸」というブランドで賃貸物件のリフォーム・リノベーションを積極的に手掛けるのがエスアンドティだ。

「築30〜40年の管理物件の出口戦略まで考えて、今後20〜30年賃貸経営を続けたいというオーナー様には、原状回復に留まらない思い切ったリノベーションを勧めます」と話す大原専務。

依頼があったらまずは、周辺の環境や物件を調べて戦略を立てる。そして、地域ニーズに合うように物件のコンセプトを決め、類似の成功事例を見せ、想定家賃まで提示するのだという。

プレゼンではコンセプトを掴んでもらうため、イメージ写真を多用。また、グループ会社のエスアンドティモアは、デザイン性が高い賃貸物件住宅を、一からブランディングする建築プロデュースを行う。デザインにはその知見を生かし、賃貸物件として細部まで考え抜かれた事例集も見せながら説明すると、納得してもらえるのだという。



1. コンセプトを打ち出す

賃貸物件は入居者ニーズに合わせることが最も重要だ。まずはエリアの特徴をリサーチし、全体のコンセプトを決める。事例では「北欧風の温かみ×洗練されたデザイン」とし、イメージ写真を多数見せてコンセプトを共有した。


2. 類似事例で説明

賃貸物件の場合、類似の施工例で説明すると非常に理解されやすく、言葉以上の説得力を与えることができる。事例では、同時代の似たようなテイストだった部屋が、北欧風にリノベーションすることによって、いかに見違えたかを見せた。


3. 比較データで説得

内部にデザイン性の高いリノベーションが施されていれば、築年数が経っていても入居が決まりやすく、数万円の賃料アップも可能となる。根拠となる周辺の類似物件データを出し、「施工費をどれぐらいの期間で回収できるか」を示すことで、数百万円のリノベーションも通りやすくなる。「目安は2年程度で回収できる金額です」。



賃貸ならではの工夫が詰まる事例集

一見シンプルながら、入居付けのための工夫が詰まった部屋が完成。ダークな床材をナチュラルな色味に替えると、明るい印象に一変する。リビングや玄関には可動吊り棚を造り付けて、広さと収納力を両立。トイレや浴室の一部を木目調にして温かみや奥行き感を与えた。決定権を握る女性を意識し、一般的なステンレスと数万円の差の人造大理石のキッチン天板にするなど、賃貸管理のノウハウが生かされている。

▲備え付けの可動吊り棚を制作

▲リビングの壁一面はブルーグレー、下がり壁はベージュに

▲女性受けする人造大理石の天板を採用

▲下駄箱を可動吊り棚に替え、玄関の広さを演出

▲狭いトイレは奥の壁と天井を木目調にして奥行き感を出す

▲1. 浴室壁も一面を木目調して温かみを出した、2. 年代を感じさせるダークな床材を替えると、一気に現代風になる

▲和室は洋室にチェンジ



お話をうかがったのは…

エスアンドティ(埼玉県蕨市)専務取締役 大原亨さん

2013年に三井不動産リアルティに入社し、不動産売買仲介・マーケティング等に従事。2016年、父親が社長を務めるエスアンドティに入社。賃貸管理や不動産コンサルティング等を行う。2、3年前より「コンセプトが明確な部屋づくり」をモットーに、管理物件のリノベーションにも力を入れる。



リフォマガ2021年11月号掲載



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