【THE SHOKUNIN】30年やってこれたのは丁寧な仕事の積み重ね

【床職人】金城充彦さん(57歳)

リフォームの営業担当者にとって、熟練の職人さんは大切なパートナー。今回登場するのは熟練の床職人・金城充彦さん。見えないところこそ、手を抜かない金城さんの仕事術を紹介する。



見えないところも手を抜かない姿勢

職人歴30年の金城充彦さん。新人時代は朝一番に現場に入り、帰るのは一番最後と決めていた。朝は昨日作業したところを確認したり、準備に時間をかけ、夕方は他の職人が帰るまで帰らない。「信用を得るために、現場のことはなんでも把握しておきたいと思っていました」と金城さん。

金城さんは見えないところも手を抜かない。洗面台の下の床は、給水排水のパイプを通すために穴を開ける。最終的には見えなくなるため、まとめて大きな穴を開けて通すこともある。それを金城さんは1本ずつ丁寧に床に穴をあけ、パイプがぴったりはめ込まれるように仕上げている。

ある時、飲食店の床工事を頼まれたことがあった。金城さんはいつものように1本ずつパイプ部分を丸く切り抜いて施工。実は店のオーナーはリフォーム会社勤務の経歴があった。金城さんの仕事振りを見てその丁寧な仕事に感心し、他の3店舗の工事も発注してくれた。

「きちんとした仕事をしていれば、オーナーさんも、私に仕事を回してくれた会社も、私も、みんなが嬉しい結果となります。そうしたつながりがあったから、30年間やってこれたと思っています」と金城さんは話す。

▲糊を塗るハケでもこれだけの種類を使い分ける

▲手が届かないところはハケに柄を付けて、塗り残しを作らない



金城さんでダメなら裁判!?やり直し工事を完璧に

「もう、金城さんでダメだったら、裁判にしようと思っています」。

そんなプレッシャーのかかる工事を依頼されたこともあった。洗面台のクッションフロアの張り替えだが、クレーマーに近い施主ですでに4回張り直していた。ちょっとの隙間があってもダメで、隙間をコーキングで埋めてもダメ。施主は仕上がりをLEDライトを持って、虫眼鏡でチェックする念の入れ方だった。「施主の方が『ちょっとここが』というので見たら、髪の毛一本ほどの隙間があった。千枚通しでさっと押さえて修正したら、それでOKが出ました」

階段のカーペットの張り替えをした外国人の女性からは「エクセレント!」「ファンタスティック!」と、身振り手振りつきで褒められたこともあった。「全然普通の工事だったのですが、こんなに褒められたのは初めて。嬉しかったですね」

▲この日の現場はアパートのリフォーム。トイレのクッションフロアを張り替えを行う

▲角の部分もピタリと仕上がっている



打ち合わせ内容を職人にも伝えてほしい

金城さんが大切にしているのは、施主が本当に満足する工事をすることだ。

老夫婦宅での床暖房工事でのこと。大きな食器棚があり、夫婦では動かせなかった。その下の床はそのまま残して他の部分の床だけ張り替えることに。その場には営業をはじめ、何人かが立ち会っていたが、「職人さんが大変だからこのままで」という雰囲気になっていた。

「私のことを気遣って営業の方は言ってくださったと思うのですが、事前にうまく打ち合わせができていたら、代わりに食器棚を移動させることもできたはずでした」

施主にとって、本当に満足のゆく工事ができなかったのでは、と感じた金城さん。営業と施主の間でどのような打ち合わせをしているか、職人にも伝えてもらうことで、施主が喜ぶ工事ができると考えている。



推薦の言葉

パリー工芸 代表取締役 矢島俊彦さん

金城さんを一言で表現すると、「どんな仕事でも嫌がらずに、自分のできる全力を尽くしてくれる、安心してお願いできる職人さん」です。

面倒な仕事をお願いしても「気にしないでください。これは自分の仕事ですから」と、快く引き受けてくれます。

工事に対して不安な気持ちを持っているお客様にも、金城さんなら「ちゃんとした職人さんが来ますから、安心してください」と言い切ることができます。

高い技術を持っているのに、いつも謙虚な金城さん。本当に頼りになる職人さんです。



金城さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

よく「うまいことやってください」と言われることがあるのですが、「うまいことって何?」と思うことがあります。お客様によってどうしてほしいかは様々なので、お客様からどんな要望があったのか、具体的に教えてもらえると助かりますね。


「こんな営業さんはスゴイ!」

「使ってもいいですよ」と言われてもリフォーム先のトイレは使いません。「本当は使ってほしくなかった」と思う方もいるからです。あらかじめ、コンビニや近くの公園など、トイレの場所を調べて教えてくれる営業さんの気配りはスゴイと思います。

▲バックルがカッコイイ金城さん自作の腰袋。デニムにも自分でポケットを付けた

▲金城さんが愛用しているカッター。握り手の部分は、自分で木材を彫るなどして製作。石に見えるものも木材で、スプレーで石に見せている。握り手がそのままのカッターもメッキ加工を施し、汚れをつきにくくしている



リフォマガ2021年11月号掲載

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『リフォマガ』は、株式会社リフォーム産業新聞社が発行する現場担当者向けの情報誌です。 リフォーム営業マンに役立つ営業テク、現場調査の方法、商品情報を発信します。 雑誌『リフォマガ』は毎月15日に発行。年間購読料8,800円。(税込・送料込)

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