【THE SHOKUNIN】面倒な仕事の依頼こそ職人の勲章

【内装仕上職人】矢島俊彦さん(61歳)

今回登場するのは内装工事のスペシャリスト・矢島俊彦さん。お客の希望を叶えるリフォームには、職人同士の信頼関係が大切だと語る矢島さんにインタビューした。



最も大切なのは職人同士の信頼関係

「職人として大事なことは、お客様の望んでいることをできる限り理解して、仕事をすること。それを実現するには自社の社員だけでなく、信頼できる協力業者さんが必要です。お金だけでは職人さんはついてきません。最も大切なのは、対人間としての付き合いができるかどうか、ですよ」

そう語る矢島俊彦さんは、内装リフォーム全般を取り扱うパリー工芸の代表取締役であり、現役の職人。複数の職人を束ねて、現場を回していく立場でもある。

今、付き合いのある職人とは「いくら出せるかまだわからないけど、来てもらえる?」と言うと、「わかりました。任せます」と言ってもらえる信頼関係を築いている。無理をお願いした時は、必ずその埋め合わせを考える。昔は人工(にんく)仕事で、難しい作業を任せると「そんな面倒なことをするのか」と言う職人もいたと言う。

「その面倒な作業をやらせてもらえるのが、職人としての勲章じゃないの?と思うのですが、そういうことが理解できない職人さんもいます。そうした考え方の職人さんとのお付き合いは長続きしませんね」と矢島さん。

「私たちと同じようにお客様の希望を理解して、快く仕事をしてくれる職人さんと一緒に仕事をさせていただきたいと思っています」。

▲この日の現場は、商業施設の天井に入っているひび割れ(クラック)の補修。3代目となる息子の一正さん(右端)に、矢島さんがアドバイスをする



カーテン縫製が米国軍人の間で評判

パリー工芸の創業のエピソードは面白い。1966年、ドレスの縫製ができた母・矢島良子さんを社長に、カーテン縫製をはじめとする室内装飾の会社として創業。当時、代表取締役の名義を女性にするのはとても珍しかった。

父・矢島俊一さんが在日米国将校の運転手をしていたこともあり、米軍基地で営業をしたところ、大評判に。68年には米海軍厚木航空基地PXに出店した。

「その頃、私は小学生。基地にはスナックバーがあって、おいしいハンバーガーが食べられるのでよく店に行っていました」と矢島さん。その後、日本人の家でも内装インテリアの需要が高まったことから、現在の店舗も順調に波に乗ることができた。

中学校を卒業後、専門学校に通いながら家業の仕事をしていた矢島さん。様々な技能を習得し、床カーペット・床仕上げプラスチック・壁装・ガラスフィルム・塩ビフィルムの1級技能士として活動し県知事賞を受賞するなど、技術を磨いてきた。現在は後任指導のため、技能検定委員、物づくりマイスター等としても活躍している。



推薦の言葉

K’s Floor 代表 本間健治さん

矢島さんは内装に関する工事なら、ほぼなんでもできる人。しかも、どんな仕事でも完璧にこなすので、「ミスターパーフェクト」と呼ばれているんです。

仕事に対する姿勢も素晴らしく、真面目に取り組み、手を抜かない。強い志を持って仕事をされている方だと思っています。

そんな矢島さんは、神奈川県内装仕上技能士会(神奈川県内の内装仕上げ技能士の団体:会長/本間健治)の副会長も務めています。

会では会員の意見を引き出し、議題を取りまとめてくれる、まとめ役です。仕事だけでなく、気配り・気遣いをしながら、人をまとめることもできる矢島さん。本当にすごいと思える職人さんです。



矢島さんからリフォーム営業担当者にメッセージ

「こうしてもらうと嬉しいなぁ」

内装職人は、他の業種の職人さんと比べると「大人しく」見えるようで、他の職人さんには言いにくいことも内装職人には言いやすいようです。内装職人が入るのは工事の終盤。工期が迫っていると、無理なスケジュールを組まれることもあります。営業さんには、最初から段取りをきちんと組んでもらえると助かります。


「デザインは良いけど、メンテナンスは?」

デザインを追求するあまり、後でメンテナンスができないのでは?と思う現場に遭遇することもあります。ある現場では、非常に高い場所にロールスクリーンを設置しました。ローリングタワーを持ち込み、足場を突き出して取り付けないと設置できないほどの高さでした。しかし、その後作りつけの家具を置いたために、ローリングタワーが入るスペースがなくなりました。このロールスクリーンはもう脱着することができません。もし、交換するとなると、周囲の家具を解体することになります。

後々のことも考えて設計・デザインを提案してもらえたらと思います。



リフォマガ2021年8月号掲載

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