KURASHIをたのしむVol.14 “外にいるように暮らしたい” 人と自然が共生する家づくり

浅川あやさんは7年前、センスが良い日用品を扱う店「日用美」を鎌倉の自宅でオープンし、昨年10月には二宮町で再スタートした。2軒の家づくりを経験する浅川さんは、“家づくりは暮らしづくりだ”という。「日用美」や家づくりの魅力について聞いた。


▲日用美(神奈川県二宮町)店主 浅川あやさん

福岡県出身。多摩美術大学卒業後、内装設計施工の丹青社に入社。博物館や展示会などの企画設計に携わる。のちインテリアショップに転職し、オーダー家具の図面を担当するが、出産を機に退職。2013年に鎌倉の自宅で日用品の店「日用美」をオープンする。もっと広い所に住みたいと2018年に二宮に移住し、リノベーションを施した洋館で昨年10月に店舗を再開。両親と息子の5人家族。

▲古い洋館をリノベーションした「日用美」の店内。整然としており、美しさを感じられる



兼用住宅を思い描く

相模湾を望む山に囲まれた二宮で、「日用美」を営む浅川あやさん。〝時を経て生活になじみ、より美しくなる日用品〞が店名の由来。築80年超の小さな洋館をリノベーションし、3年間のクローズ期間を経て昨年10月に再スタートした。作家宅を訪れてセレクトした器を中心に温かみのある日用品が100点以上並ぶ。コロナ禍にあっても、客対応に追われ昼食もままならないこともしばしば。

「器などは自分で使ってみて、その使い心地や印象を伝えています。経年変化するアイテムが多いので、新しいものと時間が経ってからの風合いの変化も見ていただけたら。本当に好きなもの、心地いいものを手にしていただけるようにと接客しています」

大学でインテリアを学び、内装設計施工の会社で博物館や展示会などの企画設計に携わる。だが、もっと生活に近い部分のデザインに魅かれインテリアショップに転職。客に接する楽しさや取り扱う雑貨や洋服など日用品への興味が増し、家を建てるなら、店舗兼用にしようと思い描いていた。

▲食器棚は壁に4段の木を渡し、全てが見えるように。仕舞い込むと使わないので、余分な収納は作っていない



気にしたのは風の通り

「日用美」の隣に約35坪の新築した自宅が建つ。1級建築士の資格を持つご主人が大枠を設計し、キッチンなど細部を浅川さんが担当。購入した広大な380坪の土地に洋館と古家がついていたが、古家は取り壊した。店舗用の洋館のリノベーションと自宅の新築(古家の解体費用も入れて)で3500万円ほど掛かった。

「古家の風合いのよい建具、瓦は葺き替えして我が家に活かしました。手間はかかりましたが、新築では得られない空間ができました」。

伐採した楓や桂の木は、丸太ごと作家に持ち帰ってもらい、木の器やスプーンとして生まれ変わりお店に並んだそう。

家を作る際に一番気にしたのは風の通り。熱気は上にたまるので、2階の大きなブックシェルフの上に窓をつけ、夏は開けて風を流し熱気を除くようにしている。今回の家は、鎌倉の家で実現できなかった薪ストーブをリビングダイニングに設置し、エアコンは置かない。二宮は温暖で緑が多く、夏の暑さもしのぎやすいからだ。

「家づくりの最大の魅力は、自分の〝好き〞を体現していけること。私は自分の好みがはっきりしていて〝外にいるように暮らしたい〞という思いから、LDKは窓が多い。日中はいつもどこからか陽が入り、夜は星が見えるように設計しました。もちろん自然の脅威もありますが、それでも窓を多く作りたかったですね」

▲木々に囲まれた自宅の外装は、鎌倉では叶わなかった焼杉に。経年変化が楽しみだそう

▲LDKは窓が多く、日中はいつもどこからか陽が入る。床は1階の個室とリビング以外はモルタル土間



家づくりは暮らしづくり

浅川さんは〝家づくりは暮らしづくりだ〞という。「家づくりは、『家』というハードだけを先行して考えるのではなく、まず〝どう暮らすか〞を考えるのがとても大切。家は『家』という箱ができただけで完成ではありません。家の周りの自然や環境と密接に関係して、人は暮らしていけるのだと思います」

これからは庭に畑を作る予定だ。店の休みにはカステラを焼く。「母が営んでいた福岡のお店の味を受け継いで、秋ごろにカステラを『日用美』で販売したい」と話す。平日夕方4時過ぎになると、友達4〜5人を連れた小学4年の息子の「ただいま」の声が聞こえてくる。

▲2階の壁一面にブックシェルフを作り付け、本棚としてだけでなく、収納や飾り棚としても活用



リフォマガ2021年3月号掲載



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