施主の真のニーズを引き出すヒアリング手法 4

〝無理です〟と断言せずに夢や憧れを尊重する

施主に具体的な要望があるにも関わらず、構造的な問題から、施主に対してすぐに「そのプランは無理です」と断言してしまっているリフォーム営業はいないだろうか。

ヒアリングで大切なのは、まずは施主の暮らしの夢や憧れを全肯定する事。その上で出来る事・出来ない事・予算がどの位かかるのかを踏まえた上で取捨選択すればいいのだ。



「窓の景色を見ながら料理したい」施主の憧れを尊重

予算をかけず、暮らしを彩るデザイン提案を得意とする光テック(高知県高知市)の夕部美子さんは、以前こんな経験をした。

その施主は、現状はキッチンに窓がないので、壁に新しく出窓を作り、窓の景色を見ながら料理したいという夢を抱いていた。話によると、その前に相談した工務店の大工から、「壁を抜いたらいけない」「絶対できない」と却下されたそう。

「そのお宅は木造住宅だったので、耐震強度を考えて補強すれば窓を作る事も可能だったのですが…。リフォームで性能をアップさせるのは当たり前で、その上で暮らしの中に自分の色を出したり、憧れを実現したりしたいもの。頭を柔らかくした方がいいなととても感じました」(夕部さん)

商談の際は事例を見せたり、会話のキャッチボールをしたりしながらプランを固めていく。

また、施主のファッションや乗っている車、バッグ、時には携帯ケースもしっかりチェック。趣味や傾向を探る。

「携帯ケースを好きな色にしている方も多いですし、明るい色や花柄だったりすると意外と大胆なデザインもいけるのかな?など考えたりしますね」



《事例紹介》
若手・女性社員がイキイキと働けるオフィスへデザインリノベ

夕部さんが昨年半年かけて完成させたのが、高知市内にある学校や空港など様々な建築物の設備工事を手掛ける昭栄設備工業(高知市)の社屋のオフィスリノベーションだ。

働き方改革を受けて、受付や事務所内のレイアウト・デザインを一新、オフィスの2階部分を全面的に改装した。会社全体が落ち着いた雰囲気になるように、照明方式や、音響システムなど、随所に社員の元気が出る工夫がなされている。

「2年前からプランを作っていましたが、8月に着工してからは、毎日のように現場に通っていました。私にとっても代表的なリフォーム事例になりました」(夕部さん)

社員がハッピーに、若い人や女性社員がイキイキと働ける会社へ大変身を遂げた。

▲設計・積算担当社員のための半個室空間。経年変化を楽しめるデニムの壁紙でカジュアルに仕上げた。上部の壁は敢えて抜き、解放感を重視した。デスクや棚も全て造作。上着掛けになるポールも全スペースに。

▲特に女性社員がモチベーションを高めて働けるよう、ホテルのフロントを思わせるようなデザインに。

▲ポップな色味で元気が出るカフェ風休憩室。窓際にもカウンターとハイチェアを置き、休憩に来た社員が一息つける空間に。

▲会議スペース。来客スペースでもあるため、鉄をイメージしたタイルで、おもてなし感を演出。またアートパネルやチェアの色味がアクセントに。反対側にはベンチスペースもある。



オフィスもひとさじデザイン

お金をかけずに素敵な空間を提案する「ひとさじリッチ」を提唱する夕部さん。オフィスのデザインでも、至る所にひとさじのデザインを加えている。

▲昭栄設備工業の松井晶久代表によるメッセージ「Don’t worry.  Be happy」を刻む。

▲残ったメラミン材をアートパネルに。オフィスの内装をイメージした。他の案件でもよく作っているという。



お話をうかがったのは…

▲光テック(高知県高知市)夕部美子さん

お金をかけずに、ちょっとした工夫と提案で空間を劇的に変化させる「ひとさじリッチリフォーム」をコンセプトに、デザインリフォームを多数手掛ける。(一社)日本住宅リフォーム産業協会(通称:ジェルコ)で女性初の副会長を務める。プライベートでは、2児の母親。父親の弘内喜代志社長が経営するリフォーム店・光テックの看板プランナーとして活躍中だ。座右の銘は〝ひと現場、ひと挑戦〟。

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