建物の部位には細かいところまで名称がついている。中でも戸建て住宅で代表的な「木造在来工法(略して「ざいらい」)にはどこの部位を指すのかわかりにくい名称が多い。
困るのはお客様に見積書の内容を説明する時だ。「これはどこの部分の金額ですか?」と尋ねられてスラスラと答えられれば、「建物に詳しい人だ」とお客様に安心感を与えること間違いなしだ。
1.破風【はふ】
切妻造や入母屋造の屋根の妻側にある山形の部分。名前の通り、雨や風を破るという頼もしい存在だ。
破風に取り付ける板は「破風板」という。
ここに雨樋をとりつけることはない。
2.ケラバ
外壁から出っ張っている屋根部分で、破風の側を「ケラバ」と言う。ケラバは部位ではなく、屋根の一部分を指す名称。名前の由来は、昆虫の「ケラ(オケラ)」の羽根で、漢字では「螻蛄羽」。オケラの短い羽のように、外壁から破風までの距離が短いところからきているという。
雨水の吹込みや紫外線の侵入を防ぐ役目がある。
3.軒
外壁から出っ張っている屋根部分の内、雨樋が付いている側。(妻側に対して平側という)
また、軒の裏側を「軒裏」という。
4.鼻隠し
鼻隠しは、「鼻先」と呼ばれる垂木の先端を隠す部材のため、「鼻隠し」という。鼻隠しは、雨樋をとりつける下地としての役割も持っている。
ここに注意
塗装の見積もりの際、破風板と鼻隠しをひっくるめて「破風○○m」とすることがあるが、ひっくるめるにしても「破風・鼻隠し○○m」の表現の方が説明に困らない。
5.軒樋
鼻隠しに取り付ける水平方向の雨樋。
これに対し、縦方向の樋を「竪樋」という。
下屋【げや】
母屋(おもや)から差し出して作られた屋根ということで、「さしかね屋根」と呼ぶこともある。下屋と外壁と取り合いに取り付ける「押さえ」の板金は「押え板金」と呼ばれ雨の侵入を防ぐ大事な役目を持つ。
ここに注意
下屋は外壁との接点から雨漏れが発生するリスクが高い部分だ。屋根調査を行う時は雨漏れの不具合の有無についても確認しよう。
棟換気【むねかんき】
小屋裏の湿気や熱気を排出するために、屋根の棟部に換気部材を取り付けた換気システム。外気の取り入れは軒下に設けた換気口(吸気口)から取り入れる。換気がしにくい寄棟などで多く採り入れられている。
野地板【のじいた】
屋根材の下地として貼る板。屋根材を葺くと見えなくなるという意味を込めた名称だ。「野」の字は、建築用語で、内部に隠れて外から見えない部分。「化粧」の対語。
棟【むね】
屋根の水平材。頂部で水平になった棟は「大棟」、屋根の流れに沿って軒先に向う棟を「下り棟」という。
寄棟の名称の由来
寄棟は、4方向に傾斜する屋根面をもつものをいう。大棟と傾斜する下り棟が寄り集まることから「寄棟」とよばれるようになった。
ここに注意
「大棟」が無く、4本の下がり棟で構成されている正方形の屋根は「方形(ほうぎょう)屋根」と呼ばれる。
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