その図面、NGです!~何が「売り」なのかがわからない家~Vol.5

暮らしやすい住宅にするためのワンポイント設計LESSON

 一級建築士堀野さんのコラム。今回はコンセプトがなく、家具のレイアウトもない図面に潜む問題点を厳しくチェックしていただきました。


何が「売り」なのかがわからない家

今回チェックする間取りのタイトルは「4LDK+駐車2台」。まずどのような意図で設計したのか、どのような暮らしの提案があるのかをコンセプトで記してほしいものです。また今回は一見しただけで、LDKの配置や形状に違和感を覚えます。そして家具のレイアウトがありませんね。納まりが悪い間取りだから、家具のレイアウトを組み込まず、お客様に委ねてしまっているのかも?



今回チェックする図面はコレ!


NG① 玄関土間とホールのバランスに注意

土間とホールは同じ奥行(幅)にするとバランスがよくて使いのだが、土間が広く、ホールが狭い。修正するなら、玄関扉を右側にずらして、玄関框を真っ直ぐにすれば奥行きが調整できる。下駄箱の設置場所や窓の配置等も考慮したい。



NG② かなり使いにくい縦長の階段下収納

縦長の収納は使いにくい。今回の収納は階段下部分なので、入口の天井が低く、さらに使いにくい。横から使えるようにしよう。



NG③ 対面キッチンの配置は2 間におさめたい

対面キッチンの配置は2間(約3640㎜)程度におさめると効率がよい。今回は2.5間約4550㎜)あるので洗面、浴室側に半間(約910㎜)のゆとりができてしまう。家具を置くと使いにくいので、食品庫にしたり、洗面室を広げる方がよい。



NG④ 使いにくい正方形のリビングダイニング

一般的にリビング、ダイニングは長方形が効率よく使え、正方形は使いにくい。また、ダイニングテーブル、ソファー、テレビ等必要な家具をレイアウトして使いやすさを検証する必要がある。



NG⑤ プライバシーがなく見栄えも悪いトイレ

リビングから見えるトイレは見栄えが悪く、プライバシーも保ちにくい。扉、暖簾などで区画する方がよい。階段昇降路に向けて開く扉も危険だ。



NG⑥ 連続した空間(壁)のサッシは統一しよう

LDと和室は建具もなく連続する空間であるが、LDには縦すべりサッシ、和室には引違いサッシがついている。連続した空間(壁)につくサッシの種類は統一した方が見栄えがよく、一体感も増す。



NG⑦ 寝室の必要収納量は足りているか?

寝室の収納は1間分確保したい。この間取りの場合、左上の部屋の欠き込みをなくし、トイレの配置を工夫することで、収納幅を広げることができる。タンスを置くことが前提であればそのレイアウトの検証も必要だ。



NG⑧ 間取り図では読み取れないが階段の頭上に注意!

階段5段目位まで2階床(物入)がある。このままでは頭が当たるので、2階物入の床を高くする必要があるので、使いにくく収納量も減る。間取り図では読み取れないので注意が必要だ。



NG⑨ 階段手摺は、内周より外周につけた方が安全だ

まず1階と2階で階段も手摺の誤記がある。手摺は階段の内周につけられる場合が多いが、踊り場の狭い部分を通行するので、踏み外しの危険性が高くなる。階段手摺は階段外周につけた方が安全だ。



NG⑩ 柱、下屋、庇の記載を忘れてはいけない

ここで写真は掲載できないが、完成写真を見るとバルコニーの一部がロッジアバルコニーになっているが、柱の表記がされていない。また玄関も片流れの下屋がついているが表記がない。




執筆者紹介

一級建築士事務所 スマイリズム. 堀野和人代表

ゼネコンで現場管理業務に従事し、その後ハウスメーカーの設計部門を経て、2014年に一級建築士事務所スマイリズム.を設立。地域の住宅販売会社と設計提携するなどして、より設計品質の高い住宅の普及を目指して活動する。本業の他、地域のまちづくり活動や、里山保全活動にも積極的に取り組む。

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